危機感を持つだけならバカでもできる
2010年 12月 15日
危機を逃れるために、
具体的に行動をしなければ何の意味もない。
危機感を募らせている人は多い。
将来不安。会社不安。業界不安。年金不安。健康不安・・・。
あらゆることが不安だらけの不安社会といってもいいかもしれない。
先行きの見通しを考えると、将来は悲観的。
ところが、将来悲観しているわりに、
今は「どうにかなるや」「まだ大丈夫」と、
楽観している人が多いことに驚く。
そして現実には将来の悲観を口にしながら、
現在は何もしていない。
へっ、そんなんで大丈夫なの?
でも人間とは愚かな動物。
実際に痛い目にあわなければわからない。
実際に会社が潰れてからあわてふためく。
実際に売上が下がってからあわてふためく。
実際に病気になってからあわてふためく。
しかし、そうなってしまってから尻に火がついて、
あわてて行動しても、
こんな悲観的な状況ではできる手立ては限られてくる。
だからろくな選択肢を選べず、
さらに悪くなるようなろくでもない選択をして、
結果、カネも時間もかかり状態もよくならず、
問題を悪化させるだけというどうしようもない状態に陥る。
まるで借金で借金を返す多重債務者のよう。
前に日記で「事前の一策。事後の百策に勝る」というのを書いた。
http://kasakoblog.exblog.jp/13709406/
何か問題が起きてからやり始めたのでは遅い。
問題がいつか起きると危機感を募らせて、
わかっているのなら、
今すぐ事前の一策を打つべきなのだ。
拙著「サラ金全滅」で取材したあるカード会社の社員は、
もはやこの業界が潰れることを察知し、
勤めながら30社以上、転職活動を始めていた。
実際に転職はできなかったのだが、
その活動は無駄ではない。
自分の今の年齢やキャリアを考えると、
このぐらいの条件のところではムリなのかとか、
どういうことを要望されるのかを察知できる。
いざ会社が潰れたり、もしくはリストラされても、
この失敗した転職活動の経験が事前にあるから、
どのあたりの会社に行けば転職しやすいかがわかる。
しかしそういう活動を一切せず、
「この会社、この業界あぶないよな~」なんて、
酒の席で愚痴を言うだけで、
転職活動をせず「まあ今は忙しいしどうにかなるや」
なんて思っている人は、
いざそんな事態が起きたらさあ大変。
はじめは自分の理想の条件で回るが、
そんな条件では採用されないことを知るという時間が、
職がなくなってから経ち、
そのせいで次第にお金がなくなってきて、
あわてて食うために仕事しなきゃいけないから、
カネのためにろくでもない会社に入る。
すぐに採用してくれる会社なんて、
よほど労働条件が悪くて離職率が高いとか、
歩合比率が高い会社とか、
あまり社会的にはよろしくない事業内容だったり、
そんなところに働くハメになり、
結果、すぐに辞めることになりまた路頭に迷う。
危機感を持っているなら、
今すぐ行動しなさい。
でもそういうと人は必ずこういう。
「時間がない」と。
本当だろうか?
工夫すればいくらでも時間はある。
働きながら本を出した女の子は、
平日は終電まで働きづくめだったのに、
土日を利用して出版営業活動をした。
電車を待つほんの少しの時間に、
たとえば調べておいて、
時間のある時に電話をするとか、
いくらでもやりようがある。
しかしなぜそこまで多くの人はできないのか。
それは危機感があるといいつつ、
本当に本心で危機感があるとは思っていないのだ。
危機感があったら誰だって行動する。
でもまだ本当の危機じゃないと思っている。
だから逃げ遅れて死ぬ。
もうまもなくこの船は沈むと誰もがわかっていて、
危機感を持っている。
でも船が沈むのが明日なのか1年後なのかはわからない。
沈む船から飛び降りて違う船を探すには、
体力も気力もいるし大変。
でも今、船に乗っていれば大変だけど、
そこそこ不自由なく生活できるから、
それに安心し、違う船に乗り移ることをためらう。
そして多くの人は本当に船が沈み始めて、
あわてて新しい船を探そうとする。
だから逃げ遅れて一緒に沈んで死んでしまう人もいるし、
逃げれたものの、海にはいっぱい人であふれかえっているから、
新しい船を見つけても乗れずに溺れ死ぬこともある。
危機感を持っている人はもうとっくに行動している。
日本市場は縮小して未来がないと思っている経営者は、
もう数年前から海外展開を積極的に行っている。
別に今、円高だからあわててやりますというのとは、
まったくわけが違う。
しかし国内市場が縮小するとわかっているのに、
「いや~大変ですな~厳しいですな~」なんて言いながら、
実際にやることはひたすら値下げ競争するだけ。
こうして社員は給料は下がるは売上は下がるは、
でも仕事は大変で体を壊し、
そして今や会社が倒産するか、
自分が過労死するかの二者択一を迫られている。
なぜそれがわかっているのに、
なぜ危機感があるのに行動しないのだろう?
行動しないことにいっぱい言い訳つけても、
自分が死ぬだけだということになぜ気づかないのか。
こんな経済の状況だから、
すぐにうまくいく手立てがあるとは思えない。
しかし危機感があるなら、
早いうちからいろんな手をやってみて、
これはダメ、あれはダメと選択肢を消す作業をしておけば、
いざ危機が来た時も選択肢が少ないから迷う範囲が少なくなる。
ちなみに私の編集・出版業界も完全な内需型なので、
この先、右肩上がりの成長があるとは考えにくいけど、
むしろこの変わり目は私にとって大チャンス到来と捉えている。
紙からデジタルへという流れのなかで、
いらぬ中抜き業者が淘汰され、
作家自らがネットで直販できる可能性が出てきた。
ピンチとはチャンスが転がっている時でもある。
だから試行錯誤で今のうちからネットでいろいろ発信している。
ぜんぜんうまくいってないけど、
写真販売ができるネットサイトに登録したり、
電子書籍が販売できるネットサイトに登録したりしてる。
それが結果として無駄だったとしてもいい。
そういう試行錯誤を今のうちにしておけば、
来たる電子書籍時代に対応ができるのだから。
みなさんは今の仕事や会社や業界や国家に、
危機感を持っていますか?
持っているのなら、別にすぐに成功する必要はない。
今からでもすぐにでも、
違う手立てがとれるよう動いておくべきだ。
それができないのなら危機感を持っていても何の意味もない。
危機感は持つだけではダメ。
危機に対処する行動をしてはじめてナンボのものといえる。