好きを仕事にする大人塾「かさこ塾」塾長・カメライター・セルフマガジン編集者かさこのブログ

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2001年 03月 08日

岳物語

正月に祖母の家に行った時に、昔のアルバムなどをひっくりかえしていた。
その時、たまたま出てきたのがこの「岳物語」椎名誠著の本。
それほど興味があったわけではないが、ここにおいてあるよりうちに持ってかえったほうがよかろうと、
アルバムと一緒にダンボ-ルに詰めた。

椎名誠は、モンゴルを舞台にした映画「白い馬」で興味を持ったのがきっかけ。
去年、いろんな人の本を読んでみようとの一貫で、椎名誠の本を何冊か読んだが、どちらかといえば期待外れの感が強かった。
特によく知られている「インドでわしも考えた」で、失望は頂点に達した。
海外旅行など全く行っていない人がこの本を読んだら、もしかしたらおもしろいのかもしれないが、
インドに実際行ったことのある僕にとっては、たいした本ではないなという印象だった。

「岳物語」は、持ってきたものの日の目を見ることなく終わりそうだったが、意外にもチャンスがめぐってきた。
ここ最近ほとんど本を買わず、図書館で借りてくる本ばかりだから、単行本はなくハ-ドカバ-ばかり。
重いハ-ドカバ-の本1冊をカバンに詰め込んでいた僕は、どうしても電車で読むための単行本が欲しかった。
とにかく軽い本ならなんでもよく、そこでこの本の出番がまわってきた。

「岳物語」というから、ひょっとすると山の話かなにかと思ったら、
「岳」とは彼の息子の名前。この本は息子を題材にしたお話なのだ。

これが結構おもしろかった。
主人公である息子がいて、その脇役として椎名誠がいるぐらいのバランスの方が、
筆者と主人公の距離があって、かえってその方がおもしろいのだ。
椎名誠がどこそこへいってどうしたという話は、どことなく自慢話チックというか、押しつけがましさがあるのだが、
子供が主人公になることによって、話に嫌味がない。
それどころか、椎名誠自身が息子に振り回される構図の滑稽さが、読む者をひきつける。

特に後半の釣りの話が良い。
小学生の息子の方が、やたら釣りに詳しくて、お父さんである椎名誠があまり知らないという、
そのアンバランスさが、椎名誠らしい軽妙な文章と合い、ほほえましいというかおかしみを感じられる。
椎名誠の子供の頃を描いた本もおもしろいが、さらにそれよりおもしろかった。
筆者が自分を主人公にして描くよりも、誰か第三者を主人公にした方が、おもしろくなるのかな。
椎名誠作品の中では、一番おもしろかった本だった。

しかしそれにしても、小さいころから国語が大嫌いで、読書感想文や作文が特に嫌いだったこの僕が、
こうして本を読んで感想を書くのだから、人は変わるものだなと思った。


by kasakoblog | 2001-03-08 01:59 | 書評・映画評


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