都市異相~ベトナム(4)
2001年 06月 21日
僕は都会が嫌いだ。特に発展途上国の都会は嫌いだ。
なぜならそこにはコンビニがありマックがあり、高級ホテルがありブランド品があり、
その国の良さを抹殺した、全世界的に均一化された資本主義社会の衛星都市でしかないからだ。
都会には貧富の差が急激に拡大したせいが、立ちの悪い物乞いは多いし、
田舎から出てきた金の亡者がうろついているから、ぼったくられるしトラブルも多いし、
何より犯罪が多い。都市は治安が悪いから、日本人は絶好の標的にされる。
だから僕は大都市は極力立ち寄らず、すぐに田舎に足を伸ばす。
ベトナム旅行もしかり。ホーチミンなど興味はないので、
空港に着くと真っ先に駅に行って、田舎町行きの夜行列車をチケットを確保した。
ところがこのホーチミンを歩いてみると、不思議と嫌なイメージがしない。
町を歩いていても発展途上国特有の無秩序な乱開発による都市のバタツキ感を感じない。
なぜだろうかと僕はずっと考えて、ある一つの答えに辿り着いた。
そう、ここにはほとんど車が走っていないからなのだ。
だからばたついた印象がないのだ。
途上国の都市の印象を悪くしている最大の原因は車である。
みんな車線など関係なく縦横無尽に走り回り、何でもないことでもクラクションをわめきちらし、
さらには有毒な粉塵がばらまかれ、挙句の果ては大渋滞でにっちもさっちもいかない。
ところがこのホーチミンの道路にはほとんど車が走っていない。
その代わりにバイクがうじゃうじゃどうしようもないくらいに走り回っているが、それは不思議と都会的な悪印象を与えないのである。
このホーチミンでは人口600万人に対してバイクの台数が400万台もあるのだという。
車が走っていないだけでこんなにも都市の印象が変わるとは思ってもみなかった。
乗り物が人間に近くなれば近くなるほど、都会的バタツキ感や都市的希薄感は消え、親しみのある町に早変わりする。
バイクが無数にうようよ走っているこのホーチミンという都市は、他の都会とは違ってなんだか好きになれそうな気がする。