「やかん」から就職活動を考える
2001年 09月 01日
一人暮らししてもう7年も使っていたやかんの取っ手がぽろっと取れてしまい、買い換えることにした。
やかんを買いに行った時にふと思った。
やかんなんて7年に1度しか買わないものだとしても、僕はコーヒーを飲むために毎日最低でも2回は使っている。
やかんって生活には欠かせないものなんだ。
そう思うと、やかんを作っているメーカーって偉いよな。
偉いっていうかすごいよなって。
たとえば就職活動とかで「自己分析」だとか「志望動機」だとかって騒ぐわけだけれども、
一体「僕はやかんを作りたいんです」だとか「やかんを作ることに自分の適性があると思いまして」、
なんて言葉はまあ普通に考えたらありえないわけです。
言ってみれば志望動機なんて考えられる企業のほとんどは虚業なんです。
僕なんかがやっていることもほんと虚業の典型ですよ。
別に必要とはされていない。なくったって困らない。毎日2回使うやかんに比べたら、ほんと必要ない。
社会が緊急事態になったとき、最も必要のないモノとして真っ先に消滅させられるもの、
そんなものを僕は作ってるんだなと思うわけです。
でもそういったギョ-カイの仕事は夢もあればやりがいもあって、
「自己実現」なんてちょっとかっこよさげないまどきの言葉があてはまる仕事なのかもしれない。
でもやかんにはない。
やかんに「自己実現」を見出すというのは並大抵のことではない。
でもやっぱり人間に必要なものはそういうものなんです。
別に自己実現だとか志望動機だとか夢だとか、そんなうわっつらなことを答える前に、
「だって生きていくためには必要でしょ」ってただそれだけなんですね。
やかんみたいなものこそが社会の根本を形作っているんです。
そういった根本を作っている人がいるから、僕みたいな虚業が成り立つわけです。
だからみんな虚業を辞めてやかんを作ろうっていっているわけじゃなくって、
世の中にはいろんな仕事があるってことを当たり前ですけど知って欲しかった、というか僕自身が気づかされたというお話なんですね。
「やかんを作ること」を考えたら、今の就職活動なんておままごとですよ。