2011年 01月 30日
アキバ・ホコ天復活もパフォーマー許さず特色なし
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死者7名を出した秋葉原無差別殺傷事件から2年7ヵ月。
先週(2011年1月23日)より6月26日までの毎週日曜日、
秋葉原の歩行者天国が試験的に再開された。
そんなわけで今日(1月30日)に、
歩行者天国となった秋葉原を実際に訪れてみた。

しかし復活したことの喜びはあまり感じられない。
なぜなら、再開した秋葉原の歩行者天国からは、
なんともいえぬ物々しい雰囲気が漂っていたからだ。
大勢の地域パトロール隊や警官が歩き回り、歩行者に目を光らせる。
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それは無差別殺人が起きないよう、
警戒しているわけではない。
歩行者天国での路上パフォーマンスを何が何でも取り締まりたいからだ。
コスプレしている人が少しでも歩行者天国に立ち止まろうものなら、
「歩行者のジャマだ」「路上パフォーマンスは禁止」
とすぐさま声をかける姿は、
無差別殺傷事件を格好の材料に、別の取り締まりを強化する、
“別件逮捕”のような嫌らしさを感じた。
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こうした問題のすりかえに敏感な若者たちが、
路上で酒を飲んで「酒を飲むことは禁止されていないだろ?」
という警官に文句を言う姿はなんともいたたまれない。
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取り締まる側も取り締まられる側も、
本質的な問題をすりかえたところで議論しているように見える。
歩行者天国の再開と厳重警備がセットになっているので、
ちぐはぐさがあまりに際立つ。
ただ先週の再開初日とは違うせいか、
警備に逆らって何かをする人はほとんどいなかった。

ちょっと“変”だなと思ったのは、
・タイガーマスクをして歩行者天国を何度も往復している人
・ガンダムの地球連邦軍の制服を着てゴミ拾いをしている人
・酒を飲んで警官にからんでいる人
ぐらい。
それも大きなトラブルはなく、そのような人は数人しかいない。
路上パフォーマンスもまったくなくなっていた。

とにかく以前と変わったのは警備やパトロールの人数は圧倒的に多いこと。
「路上パフォーマンス、物品販売、
自転車の乗り入れを禁止」のプラカードを掲げた、
地域パトロールの人たちが20人ぐらい、
それこそ歩行者のジャマになるぐらい、
歩行者天国をぐるぐるぐる歩き回っている。
警官も多い。
歩行者天国の中間地点のビル前には、
歩行者天国のマナーを見張る本部が路上に設置され、
そこで警官やパトロール隊が常駐して目を光らせていた。

歩行者天国になっているのは、
外神田5丁目交差点から万世橋交差点まで中央通りで、
わずか500mほど。
6車線もある相当広い道路なので、
歩行者があふれかえっているというほどではない。

中央通りには外国人観光客が記念撮影する姿も多く、
アキバ・ホコ天復活の写真を撮ろうとしている人も多く見受けられた。

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歩行者天国となっている中央通りの一歩裏の路地を入ると、
そこがまさしくアキバ的な感じ。
狭い路上に店先からあふれんばかりのパソコン部品を並べて、
売っている店やフィギュアショップ、
メイドカフェなどが密集している。
メイド姿の客引きもここに多くいる。
昔は中央通りや秋葉原の駅前にも多かったが、
今はこの裏手だけになってしまったようだ。

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ここを歩いているのは9割が男性。
ものすごい賑わいで人通りも多いが、
ここは時々、車も通行でき、
むしろこっちの方が危ないといった感じは受ける。

久しぶりにアキバの歩行者天国を訪れたが、
「日本のどこにでもある普通の味気ない、
歩行者天国になってしまったな」というのが感想。
取り締まり強化で“世界のアキバ”を魅力ない街にしてしまった、
その経済損出や宣伝効果減は測り知れないと私は思う。

2006年8月のアキバの歩行者天国の写真をご覧いただきたい。
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中央通には多くの路上パフォーマーがいて、
それを撮影しようと人だかりになっていた。
だからといって道路は6車線もあるので、
それが歩行者のジャマになったりしている様子はなかった。
たまたま訪れた秋葉原がこんな風になっているとは知らず、
すごくおもしろいなと思った。
路上パフォーマーたちを撮影するために、
毎週来てもおもしろいかなとも思ったほどだ。

ただその時もちょくちょく警官が来て、
立ち止まるな、撮影会はするな、歌は歌うな、
と注意して回っていた。
何のジャマにもなっていないのである。
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アキバというのは経済が停滞する日本にあって、
世界中から観光客を呼び寄せることができる、
ブランド力のある町だ。
そのブランドの一つの源泉になっているのが、
メイドであったりフィギュアであったりコスプレであったりするわけだ。

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世界中で日本発のコスプレが大ブームになっているように、
その象徴となるアキバもそれらしい街でなければならない。
にもかかわらず、過度な取り締まりにより、
どこにでもある単なる歩行者天国になってしまったなら、
なんともったいないことだろう。
せっかくのビジネスチャンスを自ら放棄しているようなものだ。
景気が慢性的に厳しい時代にもかかわらず、
なんともったいないことをしているのだろう。

無差別殺人事件が起きたのをきっかけに、
路上パフォーマンスが気に食わないと思っていた老害連中が、
これはいい理由ができたとばかりに、
治安を理由に歩行者天国をやめてしまった。
再開されたものの、無差別殺人が起きないよう、
歩行者天国の入口で手荷物検査をするわけでもなく、
金属探知機を置くわけでもなく、
ただひたすら路上パフォーマンス禁止のために、
目を光らせているだけ。
本末転倒、問題のすりかえもいいところだ。

そもそも秋葉原無差別殺傷事件は、
歩行者天国のせいで起きたわけではない。

2008年6月8日12時35分頃。
加藤智大被告は秋葉原電気街の交差点で赤信号を無視して、
横断歩道を渡る歩行者をトラックではねた後、
車を降りて持っていた刃物で歩行者を次々に刺した。

歩行者天国だったらから事件が起きたのだろうか?
じゃあこの時、歩行者天国じゃなかったら、
無差別殺傷事件は起きなかったのか?
そうではあるまい。
むしろ歩行者天国になっているおかげで、
そこにいた人たちは逃げる場所はたくさんあったのではないか。
でももし歩行者天国でなく、中央通りに車が通っていたらどうなるか?
他の車との衝突事故、人でごったがえす歩道で逃げ惑う人々。
余計、混乱がひどく、被害が広がった可能性だってある。

ようは、
路上パフォーマンスが気に食わない

秋葉原無差別殺傷事件が歩行者天国そばで起きた

それを理由に歩行者天国を禁止にすれば、
路上パフォーマンスを締め出すことができる、
という論理だけなのだ。

本当にアキバに来る買い物客や観光客の心配をするなら、
歩行者天国区域をもっと広くして、
車が入ってこれないようにするとか、
歩行者天国入口で手荷物検査をするとか、
そういうことが実効性のある対策ではないか。
今、厳しく取り締まりをしているのは、
無差別殺傷事件を警戒しているわけではないのだ。

なぜこうまでして路上パフォーマンスを敵視するのか。
それは2007年以降、路上パフォーマンスが過激になり、
一部度を過ぎるようなものが増えてきたからだという。

大音量で演奏するバンド、路上でエアガンの撃ち合いするなど、
明らかに迷惑、ジャマなパフォーマーも増えたらしい。
そして決定的な出来事となったのが、
下着を見せて写真撮影に応じる女性パフォーマンス。
治安や風紀の面で問題で、
歩行者天国をこのまま維持できないと考えていたところ、
その1カ月半後に秋葉原無差別殺傷事件が起きた。
取り締まりたい側にとっては、
絶好のタイミングで起きた事件であった。
これで堂々と歩行者天国を禁止することができると。

私が不思議に思うのは、
なぜ行き過ぎたパフォーマンスだけを取り締まることができないのか?
そんなに交通のジャマになっておらず、
コスプレ姿で撮影しているぐらい別にいいじゃないか。
それがおもしろくて日本人も外国人も人が集まってきたら、
経済効果だってあるだろうに。

勝手に路上パフォーマンスすることが気に食わないなら、
歩行者天国のところに、
パフォーマンスする簡易ステージを作ればいいじゃないか。
事前申込制などにして、
そこのみでパフォーマンスを許可する、
といったようにすれば、
観光の目玉にもなり多くの人を集めることができる。
なぜせっかく集客できる貴重なコンテンツを、
何でもかんでも自分たちの価値観では理解できないから、
取り締まろうという情けない発想にしかならないのか。

そもそもなぜ路上パフォーマンスがいけないのかも意味不明だ。
パンツを見せるパフォーマンスをする女性はいけなくて、
パンツが見えそうなミニスカートで歩く女性はいいのだろうか?
外国人観光客が日本人から見たら奇抜な衣装で、
アキバの歩行者天国で記念撮影することがよくて、
日本人がコスプレ姿を披露して、
そこにカメラマンが集まるのはいけないのだろうか?

歩行者天国では、路上パフォーマンスの禁止だけでなく、
ティッシュ、チラシの配布を禁止しており、
パトロール隊が目を光らせている一方、
秋葉原駅電気街口駅前の歩行者天国ではない場所では、
絵の展示販売の客引きが3~4人もいて、
路上でしつこく1人で歩いている男性を狙って、
しつこく勧誘活動を行っているが、
そういうのはまったくスルーだ。
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いかに建て前だけで取り締まりをやっているか。
いかに自分たちが気に食わないものだけを狙い撃ちしているか。
取り締まりのいい加減さ、恣意性が明らかだ。

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他人に迷惑をかけているという明快な基準で取り締まるならともかく、
自分たちの価値観では理解できないものは排除し、
そのために日本の経済の活性化が失われ、
就職できない若者が増え、
だからこそ秋葉原で無差別殺傷を行った加藤智大被告のような、
未来に絶望して自暴自棄になってとんでもないことをしてしまう、
犯罪者が生まれてしまうのではないか?

路上パフォーマンスぐらい許して、
適度に若者のガス抜きさせた方が、
むしろ治安にとってはいいんじゃないか。
そこまで考えているのだろうか。
何でもかんでも取り締まればいいと思う大人たちは。

秋葉原は一回死んだ街だと私は思っている。
かつて秋葉原は機械部品などが手に入る、
マニアックな街として栄えていたが、
新宿や池袋などターミナル駅の大型家電量販店に次々客を奪われ、
かつての賑わいがなくなっていた。

こうした中、大型家電量販店にはない、
“萌え系”文化が集積することで、
新たなコンテンツを発信できる街に生まれ変わった。
そのコンテンツを潰してアキバに一体何が残るのだろう。

グローバルな競争にさらされ、
日本の地盤沈下が激しい今、
日本でしかできないこと、日本企業でしかできないこと、
日本の街でしかできないこと、
こうした独自性こそが生き残っていく道のはずだ。
その独自性を薄めてしまうような、
厳重取り締まりをすることで、
つまらない街になってしまって、
世界から人を呼び込むことはできるのだろうか?

目の前の若者のパフォーマンスが気に食わない。
そんなくだらない理由で物事を判断するのではなく、
若者が将来に希望を持てるような街づくり、
海外から多くの人が訪れるような魅力的な街づくりにするために、
今、何をしたらいいのか、
考え直してもらいたいなと思う。

・アキバレポート英語版記事
"Lost animation AKiba can relive ?"
http://kasakoworld.wordpress.com/2011/01/30/akiba/


by kasakoblog | 2011-01-30 20:59 | 一般


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