2002年 02月 06日
ドナウの旅人
上下巻、約800ページにわたる長編を、僕は先がどうなるか知りたいあまりに、
あっという間に読んでしまったという事実は、かなり高い評価をしなくてはならないと思う。
本で一番大切なのは、「先を読み進めたい」と読者に思わせることだと思うからだ。

ドナウに沿って旅をするという一つの仕掛けにそって、
2組の異色のカップルが、様々な登場人物に出会ったり、
様々な出来事に巻きこまれながら旅をしていく。
残念ながらこの本を読んで「ドナウに沿って旅をしたい」と思えなかったのは、
正直、物語の中心的話題とは何の関連性のなかったことと、
東欧・共産圏のマイナスイメージばかりが目立っていたからのように思える。

あちこちの話の設定の無理があるが、まあそれをいちいち問うていたら、
小説が成立しなくなってしまうので、それは気にせずに読み進めればおもしろいだろう。
またこの小説の主たるテーマである「男と女」ということ以外に、
「共産主義とは何か」というテーマが度々出てくるが、それは余計だと思う。
とはいえこれが書かれた時代がソ連崩壊の前、1985年であることを考えれば、
それもいたし方ないのかもしれない。

ぜひ読んで欲しい本ではあるが、結末はあまり納得のいくものではない。
これから読む人のために結末はいわないが、
なぜあんな結末にする必要があったのかは非常に疑問だが、
まあそれまでがおもしろかったのでよしとしなくてはならないかな。
宮本輝は結末を無理やりつけようとする傾向があり、
他の小説のように汚い手とはいえ、結末は濁した方がいいのではないかと思える。

すごく考えさせられるというほど深くはないが、
暇なときに本を読むというエンターテインメントとしては素晴らしい作品のように思う。
久しぶりにおもしろい本に出会ったというのが率直な感想だ。
ぜひ読んで見て欲しい。


by kasakoblog | 2002-02-06 12:48 | 書評・映画評


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