2002年 03月 18日
チベットでの出会い
<1>
つい先日、2年前にチベットで出会った人と再会した。
元不動産会社の社長秘書で、その後はAV男優、今はカメラマンという40歳になる男性だ。
彼と日本で会うのは2回目にもかかわらず、昔からの知り合いのように、いろいろなことを話せた。
多分どこかで気が合うのだろう。新宿で朝まで飲んでいた。

大人になればなるほど、しょっちゅうあう友達というのは少なくなり、昔からの友達は疎遠になったりする。
にもかかわらず大人になると、出会ってからの長さや付き合いの長さではなく、
瞬間的に「この人とはなんとなく合うな」と思うと、
会う頻度が少なく、出会ってからそれほど深い話をしているわけでもないのに、すごく仲良くなったりすることがある。
彼もそんな一人だ。

<2>
思えば不思議な出会いだった。
チベットの首都ラサから200kmのところに、サムイエという巨大寺院の残る小さな田舎村がある。
そこには外国人が行くためには中華人民共和国の悪名高き公安局に許可を申請しなければならない。
チベット土着文化の残る地域に外国人が入って、
中国からの独立運動に変な知恵つけられるのが恐いからなのだろうか。

僕は標高3500mを流れる川を渡った秘境の地サムイエにどうしても行きたいと思っていたので、
ラサの公安局に許可申請にいったものの、
「個人旅行に許可は出ない。5人以上のツアーでなければだめだ」と突き返されてしまった。
サムイエにはどうしても行きたいと思っていたので、
僕は万が一のためにとチベットに入る前に中国のデパートで買った、
いかにも中国人民服みたいな服を着て、トルファンで買ったウイグル帽子を深々と被り、
黒縁ださい眼鏡をかけて、いかにも私は中国人ですといった風を装って、
サムイエ行きのローカルバスに乗り込んだのだ。

ところがサムイエに行くための渡し舟乗り場に着くと、結構外国人がいたのである。
しかも許可証を特別に取っていないようなのだ。
渡し舟でサムイエに向う途中、川ですれ違った舟にも日本人が乗っていて、
「許可証持ってますか?」とこちらの舟の日本人に声を掛けてきた。
「いや、取ってないです」と答えると、
「公安に見つかると罰金取られますよ。気を付けて下さい」といった会話がなされていたのだ。

やはりみなこの秘境の地に行きたいらしく、許可無しで行っているのが現状のようなのだ。
ただ僕は見つかりたくないという一心から、日本語を一切しゃべらず、
舟の日本人とも言葉を交わさないようにしていた。

<3>
サムイエに着いて一つしかないホテルの食堂でめしを食っていた時のことだった。
髪を短く刈り込み、ボロボロのシャツとスボンでいかにも長期で旅行をしているなという人が、
「ひょっとして日本人ですか?」
と僕に話しかけてきた。それがカメラマンとの出会いだった。

彼はエネルギーに満ち溢れ、カメラマンというから20代後半か30代の前半かと思いきや、
39歳と聞いてびっくりした。そのぐらい若々しさに満ち溢れていた。
年下の僕にも謙虚で敬語を使うその丁寧な姿勢が、
長期旅行者にありがちな「俺はおまえよりいろんなところを旅してるんだぞ」という嫌味がなく、好感を持った。
またただの学生旅行ではなく、カメラマンであるということが僕の興味を引いたのである。

そこで彼と話したことは、今後チベットからネパールへと行く方法であった。
残念ながらチベットからネパール国境までの公共バスは走っておらず、
旅人同士が集まって車をチャーターしていく方法しかなかった。
ちょうど二人がネパールに行きたい時期が一致したので、
一緒にネパールまで行きましょうという話になったのだ。

その後、ネパールまで行く4、5日間を行動を共にした。
ネパールに到着してからは、昼間は互いに勝手に行動し、夜になると食事を一緒にとった。
旅行者天国・長期旅行者の沈没都市ネパールの首都カトマンズでは、旅行者向けのレストランが充実していて、
超豪華ステーキやら超うまピザ&パスタを300円の大金はたいて食べにいったり、
40円ぐらいでやきそばやギョーザを食べたりして過ごしていた。

<4>
それから日本に帰って彼に会ったのは先日で2回目だった。
旅行をともにしたということも大きな要因かもしれないが、
旅で出会っても、旅だけの出会いで、日本に帰ってきても必ずしも連絡を取りあうというわけでもない。
そういう意味では、本当に彼とは不思議な出会いだった。

彼はインドやチベットを中心に写真を撮っているので、しょっちゅう海外に行っているので、日本にはほとんどいない。
だから会う頻度は少ないかもしれないが、
それでも会えばお互いを分かりあえる不思議な関係は続くだろう。


by kasakoblog | 2002-03-18 21:46 | 旅行記


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