2002年 07月 31日
おすすめ本1
約1ヶ月に及ぶ入院生活で、数少ない成果といえば、本を大いに読めたこと。
下記15冊にもおよぶ読んだ本の中から、おもしろかったおすすめ本を紹介します。
今回はその中でも一番おもしろく、あっという間に読んでしまった、
つい最近話題にもなった山崎豊子の「沈まぬ太陽」を紹介します。

宮本輝:花の降る午後(A)・優駿(A)・人間の幸福(B)・わかれの船(C)・月光の東(E)
辻仁成:ワイルドフラワー(A)・ニュートンの林檎(B)・カイのおもちゃ箱(D)・オープンハウス(D)
山崎豊子:沈まぬ太陽 会長室編(A)・沈まぬ太陽 アフリカ編(A)・沈まぬ太陽 御巣鷹山編(B)
桜井亜美:デジャ・ビュ(C)・Everything(D)
西村京太郎:美女高原殺人事件(C)

沈まぬ太陽(会長室編):偏差値68
520人を死亡させた大事故を引き起こしたにもかかわらず、
以前として安全運行のことより、利権を貪る腐敗体質がうずまく日航。
その体質を改めるべく、総理大臣の意向を受けた民間企業の社長が、
会長として就任することになり、大改革をふるう。

しかしあまりの杜撰な体質は、底無しの泥沼のようで、
調べれば調べるほどどうしようもなくなっていく。
政治家・官僚との癒着はすさまじいものがあり、官僚のごますりを得るために、
官僚の愛人宅を用意するため、客用の優待券を金に変え、ペーパーカンパニーをつくり、
出世を臨む各社員がよってたかって汚職の限りを尽くす。

そのみるも無残な腐敗構造が、実際にあったことで、しかも半官半民の特殊法人で行われていたことを考えると、
いわば税金を食いものにしているのと同じであり、520人を死亡させた反省も何もない。
政・官・財さらには広報部とマスコミが癒着し、自分らの有利になるような記事を書かせたりする。

ここまで日本社会が腐っているのかとまざまざみせつけられたことはない。
この話ははるか昔のことだが、いまだに同じようなことが行われていて、
特殊法人を民営化するのに断固として反対する族議員や、
公共事業の利権をむさぼる政治家・官僚・企業の実態をみるにつけ、
ほんと日本はどうしようもない腐敗に満ちた社会なのだということを、絶望的に思い知らされる。

ただ最後に社員の告発によって、その腐敗の一端が暴かれるものの、
それを突き詰めていくと、前総理大臣の金稼ぎにまで及んでしまうことを考えると、
捜査が進んだところで、いかようにも圧力をかけ、腐敗を闇に葬ってしまうことができることを考えると、
日本社会に正義はないのかとまたも絶望感を覚える。

最後に主人公が再びナイロビに突然左遷されるが、それを何の抵抗もせず、
会社を辞めることも、再び組合を組織することも、腐敗を告発することもなく、
それに従ってしまう主人公とその結末に如何ともしがたいものを覚える。
それが事実だったのかは知らないが、ここまでひどい腐敗構造ならば、
内部告発を大同団結してできるはずだと思ってしかたがない。

また総理の意を受けた会長も、利権をむさぼる社員を解雇させることなく、
自ら辞任してしまうのも、当初の心意気を考えれば、いくらなんでもその結末に納得がいかない。
せめて小説的にアレンジして、
この2人が腐敗しきった企業を変える端緒で終わって欲しかったという願いもあるが、
日本にはそんなことはできないほど、あらゆるところが病におかされ、
どうしようもない社会であることを、うちのめすようにその現実を知らせることが、
作者の意図ならば仕方あるまい。

この本を政治家・官僚・企業は読んで悔い改めるべきだと思う。

沈まぬ太陽(アフリカ編);偏差値67
これが事実をもとに書かれた作品であることに愕然とする。
時は1960年~70年、日本の航空会社の利益優先主義による安全軽視。
それを訴えた組合委員長を不当配転で僻地に飛ばし、
会社の言うことを聞く人間をあからさまに優遇するという、信じられない実態が描かれている。
そういった腐敗しきった構造は、単に企業内の問題ではなく、半官半民という性格上、
政治家や天下り官僚から圧力がかかるという、いわば国家ぐるみの「犯罪」である。

現場の労働環境を軽視し、管理職や本社組は優遇され、無能な政治家コネ社員が幅を聞かせ、
天下り官僚がろくに働かず、自分の利益ばかりを考えている。
その結果が「魔の1972年」と言われた、日本航空の立て続けの墜落事故。
それは一パイロットのミスなのではなく、利益至上主義で苛烈な労働環境が生んだ、
いわば企業体質そのものから生まれたサビであった。

安全を再優先にすべき航空会社が、
自分の利益や保身ばかりの官僚・政治家・企業トップにより、骨抜きになっていた。
それを訴え続けた元組合委員長は、有無を言わさぬ流刑人事で、
カラチーテヘランーナイロビと10年にわたる海外僻地勤務(内規では2年が限度であった)を強いられ、
社員から不満の声を上げられるよう、強圧的経営を行っていた。
それも政府自らの圧力によって。

まったく日本という国がいかにどうしようもないかを決定的にうちのめされる本だ。
今からもう30年も前の話といえども、未だに利益優先・政治家や官僚の利権のために、
税金が無駄に使われ、かけるべきところにお金が回されていないがために、
とんでもない事件が起こる。
そういった構造はまったく変わっていない。

10年にわたる不当人事の経緯と、様々な場所で巻き起こる問題を描いているので、
物語としては非常におもしろく読みやすいが、
これが日本で起こった事実であることを思うと、情けなくて暗澹たる気持ちになる。

外から見ればわからないことだが、企業内、官庁内、政府内では信じられないことが行われている。
しかしそこにはおかしいと感じるまともな社員もいる。
そういった社員による内部告発をさせる環境を作り、告発した社員を生かし、
不正なことをやった人間を完全追放して、
健全な企業・健全な社会・健全な国家を作っていかなければならない。

日本というのはほんとどうしようもない国だな。

沈まぬ太陽(御巣鷹山編):偏差値62
起こるべくして起こった大惨事、日航ジャンボ機墜落事故520人の死亡。
事故のあまりの悲惨さ。
にもかかわらずそれに対してあまりに対応の悪い、企業・政府・官僚・・・。
遺族に徹底して取材をしているので、その悲惨さがもろに伝わってきて、
にもかかわらずどうしようもない対応しかできない日本国に対して、
そのあまりのギャップとそのリアリティによって、徹底的に打ちのめされてしまうので、
読むに読めないほど、憤りを通り越して、絶望感をつきつけられる書だ。


by kasakoblog | 2002-07-31 18:12 | 書評・映画評


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