人気ブログランキング | 話題のタグを見る

原発は風評被害じゃない

菅首相が原発事故の賠償範囲について、
農漁業や製造業、観光業など風評被害についても、
早期に補償すべきとの考えを述べたらしいが、
二重の意味でおかしな判断だ。

<1>「風評被害」って範囲は無限にあって、
公平に賠償範囲の指定なんて絶対にできない。

<2>そもそも風評被害というが風評被害ではない。


<1>賠償範囲に風評被害含めるっていうが、
きっちり明確に公平に範囲指定できるのか?

農業や漁業など原発事故の影響で、
売れなくなっているわけだが、
じゃあ補償するのは福島県産や茨城県産だけでいいのか?
原発事故が起きたせいで、
海外の多くの国で日本の食品などの輸入を禁止しているが、
(輸入禁止および放射能検査を課す国・地域は37に及ぶ)
禁止対象となっているのは原発近隣県だけではない。
例えば中国では、福島、栃木、群馬、茨城、千葉の5県に、
東京、長野、山形、宮城、新潟、山梨、埼玉を加え、
12都県としている。

じゃあ12都県の食品輸入している業者をすべて補償するのか?
それとも日本で出荷停止になっているものだけにするのか?
でも「風評被害」という意味ではむしろ、
原発近隣県だけや出荷停止品目だけでなく、
あまり関係のない県の食品こそ補償すべきではないか?
という話が出てきてもおかしくはない。

また輸入禁止や放射能検査義務のない県の食品であっても、
海外で買い控えになり売上が激減して、
倒産しそうな企業や農家は補償しなくてもいいのか?

観光業だってそう。
別に福島=原発だから風評被害で、
福島の旅館やホテルだけが打撃を受けているわけではない。
原発近隣県だけでなく日本中の観光業が大打撃を受けている。
それを福島だけ補償するのか?
それとも他県まで補償するのか?
そもそも「原発の風評被害」でキャンセルしたのではなく、
余震が怖い場合は「風評被害」というのか。

「風評被害」まで補償って、
範囲を公平に明確に定めることは不可能ではないか。
特定の地域や業者だけ補償するのは不公平だ。
補償するなら日本全国すべての人に、
公平な基準を提示すべきだろう。

<2>そもそも風評被害ではない。
ただ根本的な問題に立ち返って言えば、
今、菅首相をはじめ、マスコミなどで、
しきりに「風評被害」と騒いでいるが、
そのほとんどは風評被害ではない。

風評被害とは、存在しない原因・結果による噂による被害のこと。
原因の誤報だったり、まったく存在しない汚染にもかかわらず、
実害を被ることが風評被害だ。

じゃあ今の日本の食品、観光などが、
原発事故で売上激減になっているのは、
まったく存在しない原因による被害なのか?
とんでもない。
風評でもなんでもなく、原因があるから売上激減しているのだ。
その原因はもちろん原発事故である。

人体に影響がないと連呼されたところで、
通常時より放射線量が上がっているなら、
それは風評ではない。
れっきとした原因があり、
その結果、売れなくなるのは当然だ。

例えば、福島から2000km以上も離れている、
沖縄県の食品が放射能汚染の影響が皆無なのに、
同じ日本という国というだけで、
海外から輸入が禁止されたり、
旅行客が来なくなったりしたら、
これが本当の風評被害である。

しかい、今、日本中で使われている「風評被害」は、
ほとんど間違っている。
上記のような意味では使われてはいないからだ。

風評、風評というが、
原発事故が発生し、日本政府は1ヵ月後になってやっと発表したが、
3月15日には大量の放射性物質が放出されていたわけだ。
しかも放射線量は昨日の時点でも、
埼玉で再び平常値超え 各地で上昇目立つという。

また海洋にも大量の汚染水を放出。
日本が空気も土壌も海も汚染したことは間違いなく、
まったく根も葉もない噂ではなく、
こうしたしっかりとした原因があって、
買い控えが起きているのだから風評被害なんかではない。

いや、それは実際に人体に影響がないのだから、
風評被害だという人がいるかもしれないが、
別に消費者や外国人は、
人体に影響があるなしで判断しているわけではないし、
それは風評被害だといえる根拠にはなり得ない。
そもそも本当に人体に影響がないかは、
10年、20年たたないとわからないわけだし。

原発事故が起き、大量に放射性物質がばら撒かれ、
しかも今もなお事故が完全に終息したわけでもなく、
時折、放射線量が基準値を超えるような状態で、
しかも余震が度々起きているなか、
「日本を危険」「福島原発周辺は危険」
と考えるとは当然のことだ。
それを「風評被害で観光業が潰れそうだから日本に遊びに来てください」
といって外国人が来るか?
来るわけがない。
わざわざ日本産の食品食べるか?
食べるわけがない。

なぜなら噂だけの風評被害ではなく、
今もなお厳然と存在している原発リスクがあるからだ。
風評被害だから日本に来てください、
日本の食品を買ってくださいなんて、
海外からすればいい加減にしろ、
とっとと原発事故が起きないようどうにかしたら、
行ってやるし買ってやるという話だ。
それは日本が逆の立場になればわかることだ。
(例えば中国で原発事故が起きたら、
中国に観光に行かないだろうし、
中国の食品を買わなくなるだろう)

政治家やマスコミが、
「風評被害」と言っていること事態が間違っている。
風評なんかじゃない。
間違いなくそこに存在しているリスクだ。
そのリスクを取り除かない限り、
国内外からの「風評被害」はなくならない。

原発事故による派生的被害をなくしたいのなら、
少なくとも日本中にある原発を今すぐ止めて、
すべて安全に廃炉にしますと宣言した上で、
福島原発事故をいち早く解決する手立てを説明しなくてはならない。

なぜなら、日本はこれまで政治家と官僚と電力会社と、
原発誘致の自治体が手を組み、
自分たちがぼろ儲けするために、
活断層がないと嘘をついて原発建てたり、
過去にあった大地震や大津波を無視して、
耐震や津波対策を怠ってきたために、
今後も日本中どこでも放射能汚染が広がる危険性があるからだ。
日本に住むしかない日本人ならともかく、
このような状況で真っ当な外国人だったら、
日本に行くのは危険だし、
日本の食品はできるだけ食べないようにするのは、
極めて合理的な判断だろう。
(ただ海外にも原発利権でぼろ儲けする原発推進者がいるから、
彼らは日本の原発リスクを過小評価して、
日本に観光したり食品を買ったりするかもしれないが)

「風評被害」なんていう無責任な言葉で、
日本が犯した犯罪を無視してはいけない。
日本は地震や津波という自然災害の被害者であり、
そのような意味でかわいそうだから、
世界から支援をしてくださいとはいえるが、
原発事故による放射性物質大量放出は、
世界から見たら日本は地球環境を汚した加害者である。
それは決して忘れてはならない。

例えば中国で原発事故が起きて、
西日本に大量の放射能物質がきたらどう思うか?
中国ふざけるなと思うだろう。
管理もできないくせに原発なんか動かすな。
とっとと他の原発も止めろと思うだろう。
それと同じ。
日本は地球環境を悪化させる加害者になったことを肝に銘じ、
安易に「風評被害」なんて言葉で言い訳せず、
二度と原発事故を起こさないようにすることでしか、
「風評被害」=原発事故による派生的被害を、
なくすことはできないだろう。

原発事故にどう対処し、今ある原発にどう対処し、
今後、脱原発でもやっていける体制を描けない限り、
日本は原発リスクのある恐ろしい国であるという認識は、
決して消えてなくなることはないだろう。

まずは「風評被害」という間違った言葉の使い方を、
正すことからはじめたい。
風評といっている限り、本当のリスクはわからない。

by kasakoblog | 2011-05-02 07:56 | 政治

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


by kasakoblog