2011年 07月 08日
復興イベントの大量の残飯~ボランティア漬けの功罪
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「ねえ、記者さん、この肉、食べ残すほど、
そんなにまずいかね?」

ゴミとして捨てられた食べ残しの肉や魚、おにぎりを、
残飯から拾い上げてひたすら食べている人がいた。
避難所となっていた福島県いわき市の湯本二中の校長、
澤井史郎先生だった。
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7月2日。福島県いわき市塩屋崎灯台下の駐車場にて、
ボランティアが企画した復興イベントが開催されていた。
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この灯台から北を眺めれば、
家の約9割が津波被害にあい、
壊滅的な参上になった薄磯地区が。
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灯台から南を眺めれば、
家の7~8割が津波被害にあった豊間地区がある。
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津波被害にあった両地区の人が集まるには象徴的な場所だった。

震災から約4ヵ月が過ぎ、いわき市の被災者の多くは、
避難所から仮設住宅や市の雇用促進住宅などに移った。
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このため、集落に住んでいた人が、
バラバラになってしまい、孤立感を深めている可能性がある。
そこで、いわき市の平キリスト福音教会
(グローバル・ミッション・チャペル)が中心となり、
津波被害2地区の接点ともいえる場所で、
バーベキューイベントを企画したのだ。

このイベントに協力していたのが、湯本二中の校長先生。
土曜日にもかかわらず、自らイベントのゴミの分別作業を手伝っていた。

イベントに来た人にふるまわれる、
おいしそうなバーベキューの品々の数々。
ところが食べ終えたイベント参加者の多くが、
食べ残しをしていた。
それを校長先生は食べていた。

「記者さん、しっかり事実を伝えてください。
これが“被災地”の現状ですよ。
この肉のどこがまずいんでしょう?」

校長先生は残飯の中からステーキを取り出した。
「記者さんも食べてみてください。
私の舌がおかしいのかどうか」

残飯のステーキを手づかみで食べることに、
抵抗がなかったわけではないが、
校長先生がおいしそうに食べているのを見て、
私も手を伸ばした。
見た目は硬そうに見えるが、
実に柔らかくてジューシー。
想像以上においしかった。
これが焼きたてならもっとおいしいに違いない。

「柔らかくてすごくいい肉使ってると思いますよ。
とってもおいしい。
にもかかわらずこんなに食べ残している。
これが“被災地”の現状なんですよ。
ボランティアから与えられることに慣れきってしまった、
いわば“ボランティア漬け”の状態になっている。
この肉だって誰かがお金を出して仕入れて、
わざわざここで炊き出ししてくれて、
そしてみなさんに無料でふるまっている。
そう考えたら、食べ残しなんてできないんじゃないですか?
でもこうして平然と残してしまう。
これじゃ、復興なんかできるわけがないですよ。
被災者自身の気持ちが復興しないと・・・」

普通に生活していれば、
物を手に入れるためにお金を払う。
しかし震災による被災という状況のなか、
世界各地から無償で大量の援助物資が送られてきた。
無償でいろんなことをしてくれるボランティアも多い。
こうした状況が4ヵ月も続けば、
確かに感覚がマヒしてしまうだろう。
もらえて当たり前。
もらえるものを選り好み、感謝の気持ちは薄れていく・・・。

イベント自体が悪いわけではない。
むしろタイミングを得た素晴らしい企画だと思う。
私も午前中に被災者を取材して話を聞くと、
やはり集落の人たちがバラバラになってしまい、
寂しさを訴える人が多かっただけに、
こうしたみんなが集まれる企画というのが、
今後は重要になってくるはずだ。

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このイベントを企画したグ平キリスト福音教会の牧師さん、
森章さんはこう話してくれた。
「今までは避難所を中心に支援活動をしていればよかった。
しかし避難所から出ていった被災者の方々が多い今、
みんなが顔を会わせられる機会をつくることで、
被災者をフォローしていくことが必要だと思い、
こうしたイベントを何度か開催しています」

今回のイベントには、
日本人だけでなく韓国人や西洋人の方々も手伝っていた。

「もちろん、現時点では先が見えない状況で、
イベントを楽しめる余裕がないと思う被災者の方々もいるかもしれない。
本当の苦しみはこれからだと思う。
でもだからこそ、こうしたイベントがあり、
被災者同士が集まれる場が必要なのではないでしょうか」

このような素晴らしい考えに賛同し、
湯本二中の校長先生はイベントの手伝いをしているわけだが、
現状を冷静に分析していた。

「記者さん、カメラマンも兼ねてるんだって?
なら、このイベントに参加している人たち目を見ていってください。
目を見ればわかると思います。
今、ここに来ている人たちは、
多分そんなに被害状況がひどくない、
物見遊山の地元の人たちが多いはずです」

残念ながら私にはここの参加者が、
どれほどの被害を受けた人なのか、
目を見ただけではわからなかった。
先にそう話されてしまえば、
先入観を持って見てしまう部分もあるので、
なんとも言い難かった。

ただ校長先生が「本当に苦しんでいる津波被害者の人は、
ここにはあまり来ていないはずだ」
という言葉を裏付ける出来事にはすでに出くわしていた。

薄磯地区で津波被害により、
船も流され、家も床上浸水して住めなくなってしまった、
60歳の漁師さんを、このイベントに誘ったのだが、
強烈な拒否反応を示したのだ。

「おらの姉さんのだんなさんの遺体も見つかっていない状況でよう、
復興イベントなんて参加できっか?
おらはそんな心境にはなれねえべ。
ボランティアの人にも誘われたけどよう、きっぱり断ったからな」

彼は被災者のなかでやや屈折した感情の持ち主ではあるので、
割り引いて考えなくてはならないが、
「まだ復興イベントなんて心境になれない」
という被災者は確かに違いない。
現に午前中に取材した何世帯かの人たちは、
このイベントを知っていながら参加は見合わせていた。
だからこそ校長先生が言うように、
高価な肉や魚を平気で捨ててしまえる人が多いのかもしれない。

「遠くから来たボランティアに頼るんじゃなく、
これからは地元の人たちで復興を盛り上げていかなくてはいけない。
復興を果たすために一番大事なのは、人間の気持ち。
自分で何かをしていく自立心がない限り、
ボランティアに頼りきっている限り、復興はできない」
と校長先生は力説した。

それにしても「復興」「復興」と簡単に言うけれど、
さまざまな心の問題がある今、
そう簡単に「復興」とはいかない現実があることを思い知らされた。

震災から4カ月。
明らかに震災直後の支援のフェーズとは変わってきた。
一方的に与えるだけのボランティアではなく、
被災者自身の自立を促すような支援が、
必要な段階に変わりつつある。

復興の道のりは未だ遠い。

被災地レポ&写真
http://www.kasako.com/110311top.html


by kasakoblog | 2011-07-08 22:57 | 東日本大震災・原発


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