2011年 07月 13日

サラリーマンは自営の気持ちがわからない

何もしなくても会社に行けば給料がもらえるサラリーマンのなかには、
自営業やフリーランスのコスト感覚がまったくわからない人も多い。

学生なんかからすると、
サラリーマン=組織に縛られて自由がきかず大変
独立・フリーランス=自由でやりたいことができる
みたいな思い込みが強いが、
実はサラリーマンほど気楽な商売はない。

サラリーマンは経費意識がない。
例えば、サラリーマンは会社に行く電車賃はもらえる。
会社の仕事で移動した交通費も基本的にはもらえる。

しかし自営やフリーはそうはいかない。
「打ち合わせにきてください!」
と気楽に言われるのはいいが、
仕事にもならない、アドバイスを求めるだけの打ち合わせに、
何度も何度も足を運べば、その分、交通費はかかる。
それで仕事になり、その交通費分もペイできる、
十分なギャラが支払われるならいいが、
そういうサラリーマン感覚丸出しの、
経費意識のない人間の仕事は必ずといっていいほど、
ギャラもしょぼい。

「えっ、このギャラでは打ち合わせで何度も足運んだ、
交通費ぐらいにしかならないんですけど」
みたいな話になりかねない。

サラリーマンは時間のコスト意識がない。
サラリーマンは決められた時間にいさえすれば、
仕事をしていなくても決められた給料がもらえる。
だから時間に対するコスト意識がない。

しかし自営やフリーはいわば自分の時間を売って仕事をしている。
ところが発注元は時間のコスト意識のない、
サラリーマンだから、
自営やフリーの人たちに対し、
仕事の前段階の打診みたいな形で、
金も払わないのに何時間も作業をさせたりする。

こういう作業を社内でやるならいい。
なぜならこの作業をして仕事=金にならなくても、
働いた分の対価は定額の給料という形でもらえるからだ。

しかし自営やフリーはそうはいかない。
さんざん作業させられた挙句、
仕事にならなければお金は払いませんと言われれば、
そこに費やした時間分の自分の人件費はゼロになる。
それどころかその時間のせいで、
他の仕事をする機会を奪われているわけだ。

日本というのはいい意味でも悪い意味でも契約社会ではない。
仕事の頼み方もあいまい。
いくら支払うかもあいまい。
お互いの信頼関係に基づいて、
あいまいなままあいまいに作業し、
あいまいにギャラが決められるといった、
商習慣が横行している。

もちろんそれはいい面もある。
お互い何度も仕事をしている相手だったら、
きちんとした契約をしなくても、
きちんとお金を払ってくれるだろう、
きちんと依頼した仕事をしてくれるだろう、
という信頼があるから、契約がなくてもスムーズにいく。

また仕事なんて事前に決められることばかりでなく、
後からあれも必要、これの必要になったりするケースはあるわけで、
その度ごとにこまかな契約書結んでいたら、
ビジネスのスピードが落ちてしまう。

だから私は何でもかんでも欧米みたいに、
事前の契約で、仕事の範囲をきっちり決め、
その対価を決めるというやり方がいいとは思えないが、
お金と時間のコスト意識のないサラリーマンが、
まるで部下を使うかのように、
自営やフリーに金になるかもわからない作業を、
信頼関係を悪用してさみだれ式に頼むという弊害もある。

サラリーマンは一度自営なりフリーなりで、
仕事をしてみればいい。
そうすれば、例え、金にならなくても、
何か作業を依頼すれば、自分の時間を費やし、
自分のお金(交通費や電話代など)を使うことがわかるだろう。
そしたらむやみやたらにフリーの人間に、金を払うあてもないのに、
何でもかんでもやらせるということはなくなるだろう。

海外取材をする際、
海外在住の日本人コーディネーターや日本人ライターを使うが、
彼らは欧米流がしみこまれているので、
何か頼めばその分きっちりお金を請求してくるし、
事前に頼んだ仕事以外の作業が発生すれば、
その分、追加料金を請求してくる人が多い。

しかし日本にずっといるサラリーマンは、
そういう感覚がないから、
「なぜそんな金、請求してくるんだ」
「金にうるさいやつだな」みたいな捉え方をしがちだが、
それは日本流のサラリーマン感覚に過ぎない。

もちろん海外在住の日本人のなかには、
欧米人とビジネスをする時とは違い、
日本人と仕事をする時には、日本流に合わせてくれて、
あいまいな仕事範囲やあいまいな料金体系に、
理解を示してくれることもあるが、
そうした相手の善意につけこんで、
何でもかんでも作業をやらせて、
少しのギャラしか支払わないというのはおかしいなと思う。

私は今、会社員でもあり個人でも仕事をしているので、
両方の論理がわかる立場にいる。
会社員の立場でフリーのデザイナーやカメラマン、
ライターに仕事をする際には、
事前にきっちりギャラと仕事の範囲を明示するようにしているのは、
私が個人でも仕事をしていてその気持ちがわかるからだ。

一方、個人でいろいろ仕事を頼まれる時には、
予算があまりないけど仕事の前段階で、
いろいろ作業をしてほしいという、
サラリーマンならではの論理もわからなくもないので、
何でもかんでも事前にはっきりギャラと仕事範囲を明示せよ、
とはいわないが、
人の好意につけこんで、あれもこれもやれ、
でも金は払わんみたいな話になりかねないので、
どこかで線引きはするようにしている。

サラリーマンと自営ではまったくコスト意識が違う。
その違いを認識した上で仕事をしないと、
思わぬトラブルになるので注意したい。

・・・・・・・・
これまで11冊の写真撮影を担当した、
グラフィック社の背景ビジュアル写真資料集は、
4月に発売された「ヨーロッパの邸宅・宮殿・教会」をもって終了となったが、
次回から、ヨーロッパに絞った写真資料集の発刊予定していた。

私から、
1巻:ヴィラ、パラッツォ、邸宅(イタリア、南仏)
2巻:カントリーハウス、湖水地方の古家(イギリス)
3巻:古城、貴族・領主の館(フランス・ロワール、スペイン)
4巻:パリ、ロンドンのアパルトマン
の企画案を出し、企画が通って、
1巻発刊のため、8月の撮影やアポ取りのため、
イタリアとドイツのコーディネーターを使って、
撮影旅行の段取りに動いていたが、降りることにした。

出版社の担当編集者が、
撮りたい物件が事前に言っていたのとは、
その度ごとにころころ変わり、
段取りしてはまた組みなおし、
段取りしてはまた組みなおしが、延々繰り返され、
これ以上、際限のない曖昧模糊とした注文を聞いていると、
とてもじゃないが仕事として成り立たないと判断したからだ。

しかも私だけが動いているなら、
私がその分の作業時間は泣き寝入りすればいいが、
すでに海外のコーディネーターたちも動いており、
このままどうしようもない船頭(編集者)に振り回されると、
撮影後もいろんな数限りない無理難題を言われかねない。

担当の編集者はサラリーマン感覚しかなく、
海外のコーディネーターや私が、
時間と経費を自腹で払って動いているという感覚が、
多分わからないからだと思う。

そんなわけで本企画は降りましたが、
代わりに個人的に海外旅行をし、
これに代わるいい写真集を出したいと考えています。

※念のため、すべてのサラリーマンがコスト意識がなく、
すべての自営がコスト意識があるとは思っておりませんので。

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by kasakoblog | 2011-07-13 13:05 | 働き方


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