2011年 10月 04日
「フラガール」が連日テレビで取り上げられる妙~復興の鍵はビジネスモデルの大転換
「フラガール」で有名なスパリゾートハワイアンズが、
震災以来、営業を再開したということで、
「メディアは話題がないのか?」と思えるほど、
連日のように大々的に取り上げているが、
この「フラガール戦略」こそ、
過疎化し、被災し、大打撃を受けた、
被災地復興のヒントがあると思う。

・メディアに取り上げられることこそ復興の一歩
このスパリゾートハワイアンズだがどこにあるかご存知だろうか?
福島県いわき市である。
かさこワールドの読者ならもういやというほど、
今年何回も聞いた地名だと思うが、
私が5月から毎月取材している被災地である。

しかし被災地報道で「いわき市」を見たことがあるだろうか?
原発関連ならあるかもしれないが、
「いわき市」の津波被災地報道を見たことがあるだろうか?

津波被災地でみなさんが思いつく地名とはどこだろう?
石巻、南三陸、気仙沼、陸前高田、大船渡といった名前ではないか。
上記の地名に比べて、
いわきという地名を聞くことはほとんどないのではないか。
まして勿来、薄磯、豊間、四ツ倉、久之浜といった地名を、
報道で聞くことは皆無ではないか。

先日ネット経由で知り合い、いわき市でお会いした、
いわき市の被災地支援をしている、
山口の自治体職員の方は、
私のホームページを見て、
「ろくに報道されることのないいわき市について、
書かれているだけでなく薄磯、豊間といった、
地区名まで出てくる被災地レポートはまずない」
と驚いていた。

今回の被災地報道では、
宮城・岩手=津波
福島=原発
というカテゴライズがしっかり行われた。
だから、かわいそうな津波被災地は、
宮城や岩手ばかりでそこにボランティアやメディアが集り、
放射能=原発=福島は、
ボランティアもメディアも近づきたがらない、
といった構図ができあがった。
それでも福島をメディアが取り上げるとするなら、
津波被災地の福島ではなく、原発事故の福島でしかない。

この半年間、これだけ偏った報道がされてきたにもかかわらず、
いわき市の津波被災地をテレビで報道しているのって、
ほとんど見たことないのにもかかわらず、
フラガール復活となれば、
連日、テレビが飛びついて報道するのである。

あれだけ報道されると、
「フクシマ」=「危険」というイメージがあっても、
フラガールは見に行ってみたいと思う人は大勢いるのではないか。

それだけ「被災地」にとって、
メディアに注目されるということは重要だ。
注目されれば人が来て、現地の実態を知り、
金が落ち、復興へとつながっていく。

いわき市の中で原発に最も近い、
北端にある津波被災地の久之浜なんかは、
ほとんどメディアで取り上げれることはない。
だからこそ「久之浜を知ってほしい」「見捨てないでほしい」
という強烈な思いから、
津波被災地で花火大会を開催したり、
取り壊し予定の家に花の絵を描くといった、
“思いきった”“パフォーマンス”を行い、
いろんな人に注目してもらおうと、
地元若者たちが必死に努力して、活動をしているところもある。

今回の東日本大震災はあまりに広範囲で、
被災地が多かったために、
大手メディアからこぼれてしまう被災地が多く、
支援格差が生まれていたのも大きな問題の1つだ。

でも大手メディアに文句を言っていても仕方がない。
むしろ彼らをうまく利用すれば、
知られていない被災地に支援が集る可能性もある。

そのような意味で、メディア受けする、
ビジュアルとストーリーがあるスパリゾートハワイアンズは、
いわき市では内陸にあり、
津波被災地でないにもかかわらず、
メディアに連日取り上げられ、注目されるのである。

被災地が復興するには、
メディアが取り上げやすい、
ビジュアル的にユニークなものがあるとよい。
フラガールという美しいビジュアルもあり、
踊りがあるので動きもあり、
かつ音楽もあるので、
テレビで取り上げやすく、国民受けしやすいのだ。

・炭鉱不況から生み出された新事業
こんなにもメディアに取り上げられ、
しかも年間150万人もの人が訪れるという、
一大レジャー地となったスパリゾートハワイアンズだが、
誕生した歴史は苦肉の策に過ぎなかった。

いわき市は炭鉱で潤っていた町だったが、
石炭から石油へ急速にエネルギーがシフトしていったため、
炭鉱で繁栄した町は急速に不況になり、
炭鉱産業がなくなり、多くの失業者を生み出し、
町として大きな問題を抱えることになった。

長崎の軍艦島を挙げるまでもなく、
かつて炭鉱で日本一、二を争う栄華を極めても、
時代の変化で産業が廃れてしまえば、
無人の廃墟と化すほど、町の姿は一変してしまうのだ。

ところが日本という国は、
時代の変化に逆らい、既得権益が生きながらえるよう、
非効率で国民負担を強いて、
時代錯誤な旧態業界を守ろうとする風潮がある。

でもそれは一時しのぎにしか過ぎず、
時代の変化には勝てない。
時代の変化に合わせてビジネスモデルを転換できない、
企業や町が衰退するのはやむを得ないのだ。

だから過疎化を解決するために、
安易に原発に群がる地方自治体が多いわけで、
山口の上関町なんかでは、福島原発事故が起きても、
町民は金のために原発を作ってほしいと、
町民自らが原発を望んでいるのだ。

しかしそうした安易な甘い汁で町を活性化しても、
福島のように事故が起きれば「死の町」と化し、
わが故郷に二度と帰れない、
流浪の民になる危険性をもはらんでいることが明らかになった。

炭鉱衰退でこのまま行けば倒産してしまう状況の中、
炭鉱業から温泉を利用した、
一大スパリゾート業へと大きくビジネスモデルを転換し、
見事に成功を収めたのがこのスパリゾートハワイアンズだ。

ここで大きなポイントは、
単に温泉施設のハコモノだけで終わらせなかったことだ。
全国にあるテーマパークや、
景気対策と称したハコモノが、
ことごとく失敗するのは、
建物を作ればそれでうまくいくという、
とんでもない勘違いをしていることだ。

もしスパリゾートハワイアンズが、
単なる大きな温泉施設だけだとしたら、
とっくの昔に潰れていただろうし、
潰れなかったとしても、
こうしてメディアに取り上げられることはなかっただろう。
なぜなら温泉施設など、
わざわざ福島に行かなくても日本全国どこでもあるし、
ここより素晴らしい施設はいくらでも後から作れるからだ。

しかしここが注目されるのは、
施設というハードより、
フラガールのショーというソフト部分だ。
このソフトがあるからこそ観光客が多いのだろうし、
メディアからも取り上げられる。
他の場所とは違う特徴があるから人を惹きつけられ、
だからこそ事業としても成功する。


今回、被災地した地域のなかには、
過疎化や人口減少が深刻だった場所も多いだろう。
そこを単に元に戻しましょう、では“未来”がない。
産業がなければ町は活性化できない。
また福島では放射能問題があるため、
これまでの産業を行えない地域も多いと思う。

だからこそフラガールモデルが参考になる。
炭鉱で立ち行かなくなったのに、
温泉施設とフラガールショーを生み出したことで、
本来ならとっくの昔に廃れる町が再び蘇り、
新たなビジネスを生んで、町を支えてきた。

難しいとは思うが、
現代のフラガールのようなものを、
被災地域が生み出せれば、
今後も長期的に町が発展できる。
震災はその「チャンス」でもある。

今まで通りではやがて廃れてしまう。
今まで通りにできない地域もある。
今まで通りのやり方にしがみつくのではなく、
炭鉱業から観光業に変わったフラガールを見習い、
被災地それぞれの新たな復興と再生が必要なんじゃないかと思う。

今、それをうまくやろうとしているのは、南相馬市かな。
放射能問題を逆利用し、脱原発を掲げ、
除染研究施設などつくり、
それで町としての存在意義を見い出そうとしている。

あとは私が取材したことがある、徳島の漁村・伊座利。
ここはほんと何もない。
どうしようもない場所にもかかわらず、
小学校廃校の危機を食い止め、
逆に小さな子供の人口を増やすという、
素晴らしい町づくりを行っている。

安易に原発に頼るなんて最悪の選択肢だ。
過去の産業にしがみついても仕方がない。
今回の震災で新たな「フラガール物語」が生まれれば、
これからも発展し、人が集る町になると思う。

そこで必要になるのは金じゃない。
自分たちの頭で考えることだと私は思う。

・小さな漁村の奇跡の復活劇~徳島県・伊座利地区
http://kasakoblog.exblog.jp/9913849/

映画フラガール見たけどおもしろかったです

・書籍「検証・新ボランティア元年~被災地のリアルとボランティアの功罪」


ちなみにスパリゾートハワイアンズがあるいわき市の湯本温泉には、
7月、8月、9月と3ヵ月連続、
私は被災地取材の際に温泉宿に泊っています。
毎回ガイガーカウンター持って測っていますが、
0.08~0.18マイクロシーベルトぐらいで、
今は線量は低い状態であるとは思います。

スパリゾートハワイアンズでは放射線量測定結果を随時出しているようです。
http://www.hawaiians.co.jp/information/srh_report.html


by kasakoblog | 2011-10-04 00:19 | 東日本大震災・原発


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