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リスクに見合ったリターンがない世界

生きている以上、さまざまなリスクがある。
危険を恐れて何も行動しなければ、何も得られないし、
生きている以上、リスクがない世界はあり得ない。

しかし今、大きな問題となっているのは、
リスクに見合ったリターンがあるのか、という点だ。

本来リスク・リターンの関係は比例でなくてはならない。
すなわち、ハイリスクならハイリターン。
ローリスクならローリターン。
危険を冒せば冒しただけの利益を得られるなら、
危険を覚悟で何かに挑戦する人もいるだろう。
一方、たいした利益はいらないから、
できるだけ危険は小さくしたいと思うなら、
ローリスクローリターンな生き方を選ぶだろう。

ところが、この方程式が、今、崩壊してきた。
すなわちハイリスクなのにハイリターンがない、
危険に見合った利益がない世界が現出しつつある。

投資の世界はこれが顕著だ。
みなさんの多くはお金を貯金に預けているだけだろう。
しかし貯金では低金利でお金は増えない。
そこで元本が保証されない代わりに、
大もうけできる可能性がある、
株式、債券、不動産、FX、コモディティなど、
さまざまなものに投資する投資家もいるわけだ。

しかし元本割れのリスクを背負っているのに、
たいしたリターンがあげられない。
株式が特に顕著だ。
ここ数年、世界同時株安が何度も起きている。
いろんな国に投資しても全滅しちゃうから、
リターンが得られない。
株式と違う値動きのする債券に投資しても、
株安と同時に円高が起きるから、
外貨建て債券は為替差損で大損し、
何に投資してもリターンが得られない状況が現出している。

もっといえば先進国の株式は、
ローリスクローリターンで、
いまや先進国株式はハイリスクローリターンと化している。
リスク・リターンの関係が見合わなくなっているのだ。

わかりやすいので投資の話を出したが、
私たちが普段、生活するさまざまなリスクリターンも同じ。

例えば、持ち家か賃貸かのリスクリターンの関係は、
昨今では地政学的リスクがあまりに大きいため、
持ち家を持つ方がかえってハイリスクになりがちだ。

今までなら大企業に就職する方がいいといわれていたが、
大企業に就職しても技能が身につかず、
リストラされると転職できないため、
むしろ大企業に就職するより、
中小企業に就職して自分が独立できる技能を身につけた方が、
将来の安心につながるんじゃないかといった、
これまでのリスクリターンに変わってきている。

特に日本は3.11以降、さまざまなリスクを抱えることになった。
地震リスク。
津波リスク。
放射能リスク。
これに加えて台風リスクや火山リスクなどもある。
自然災害だけでなく、
人口減少リスクや過疎化地方在住リスクもある。

リスクを背負ってもそれなりのリターンがあるならともかく、
もらうのはリスクだけでリターンがないなら、
リスクを背負うより回避した方がいいという話になる。

原発立地自治体は原発リスクを背負う代わりに、
莫大な交付金・寄付金、
雇用による経済効果というリターンを得ることができた。
ハイリスクハイリターンなので、
こうした自治体が「死の町」になることは、
ある意味では想定内だったし、やむを得ないといえるだろう。
だからこそ莫大な交付金がもらえたわけだし。

ところが放射能リスクだけもらって、
原発リターンをぜんぜん得ていない周辺自治体もある。
そうした住民にとってはとんでもない話だ。
リスクだけ押し付けられてリターンがない。
挙句の果てに賠償金も低いのでは、
あまりにもばからしいと思うのは自然だ。

生きるためには何らかのリスクを背負わなくてはならない。
しかしどのリスクを背負うか、
またはどのぐらいリスクを背負うかは、
リスクに見合ったリターンがあるかでは考えなくてはならない。

今まで通りのリスクリターンになっていない社会になった今、
自分が今、冒しているリスクを追う価値があるのか。
そのリスクを背負うことでそれに見合ったリターンが得られているのか、
考え直すべき時期にきていると思う。

by kasakoblog | 2011-10-07 18:47 | 生き方

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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