2011年 10月 17日
今、必要とされるボランティアとは?~専門職の個人ネットワーク
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避難所の多くが閉鎖された今、
本当に必要とされるボランティアとは何なのか?
震災直後の緊急支援が終わった今、
誰もかれもが押しかけて、
自己満足的に活動をしても意味がない。
被災者、被災地のためになる、
支援活動のモデルケースを紹介したい。

高さ20mもの津波が押し寄せ、
3階建ての病院にいた患者や病院関係者は、
屋上に避難したもののほぼ全滅。
64人が死亡した……。
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石巻市雄勝病院。
311の震災で悲惨な出来事は数多くあれど、
その1つもこの雄勝病院での出来事だろう。
いくら海沿いとはいえ高さ15mの病院の屋上にまで、
津波が襲ってくるなんて、一体誰が想像できただろうか?
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石巻中心部から車で1時間ほど。
雄勝町の中心部は壊滅的な打撃を受け、
病院はもちろん雄勝支所も被災し、
完全に町としての機能を失った状態だ。

雄勝町は町の中心部から突き出た半島に、
海に面した集落が点々としており、
そこも壊滅的な被害を受けている。
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家が流され、仮設住宅に住む人も、
運よく高台にあり家は流されなかった人も、
高齢者が多く、病院機能の喪失は大きな問題となっていた。

こうした中、雄勝支所の保健福祉課と連携をとり、
被災地のリハビリ支援をしているのが、
リハビリ専門職が集まった、
個人ネットワーク団体「face to face(FTF)」だ。

津波被害により行政機能の多くを、
緊急避難的に山間の雄心苑に移転した雄勝支所。
東京ほか全国から来たFTFのメンバーは、
保健福祉課に立ち寄り、まずカルテを見る。
カルテは震災後に診察を行ったFTFの医師がすべてチェックし、
必要な指示や申し送りを書き込んでいるので、
その指示に従い、リハビリ処方という同等の形で、
電話をかけて訪問してリハビリテーションを行う。

10月9日、日曜日。
岩手の実家から車で来た下田理学療法士、
東京から岩田理学療法士と私の3人で、
津波被害のひどかった雄勝町の名振の仮設住宅を訪問する。
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事前に現地に入っていたFTFのメンバーが、
「プロカメラマンによる撮影会」のビラを配っており、今日はその当日。
撮影会が主たる目的というわけではなく、
それによって仮設の人とのコミュニケーションをとりながら、
「どこか体の痛いところはないですか?」と理学療法士がヒアリングする。
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長い避難所生活や狭い仮設住宅生活で、
運動不足による身体機能の低下が大きな問題となっている。
仮設住宅を1軒1軒回り、
リハビリが必要な人がいないかどうか聞き、
そうした人がいれば次回に医師を派遣し、リハビリを行う。

午後は、香川県から来た谷本理学療法士と、
雄勝町のある集落へ。
海沿いの家は津波でやられてしまったが、
高台にあった数軒の家が残っており、
以前にFTFの医師が訪れたことがあり、
この4軒の家を訪問し、ヒヤリングと、
カルテに沿ってリハビリを行う。

被災地支援というと避難所や仮設住宅に集中しがちだが、
津波被害にあわなくても残された住宅の住む人もいわば“被災者”だ。
周囲の家はなくなり集落や町の機能が失われいるなか、
でも住めるから住んでいるけど、
以前のように町の機能が回復していないために、不便をきたしている。
こうしたところにも支援が必要だ。
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そこで印象的だったのは“老老介護”の家庭。
90歳を過ぎたおばあちゃんを70歳の娘が面倒を見ている。
おばあちゃんの方は運動不足で歩行機能が低下しており、
ボールを使ったリハビリを行っているが、
娘さんの方にも話を聞いてみると、
「毎日、食事を作らなきゃいけないので大変。
もう疲れちゃって8月には腰痛がひどくなり歩けなくなったことも。
今は石巻まで車で1時間かけて病院に通っている」という。
どうもリハビリが必要なのはおばあちゃんだけでなく、
娘さんにも必要そうだ。

訪問リハビリボランティアという形で、
こうして話を聞くからこそ拾えるニーズだろう。

おばあちゃん、娘さんにリハビリをしているところに、
数軒残ったご近所の人が遊びにきたので、
この方にも体の状態をヒアリングする。
こうして津波被害のために、
取り残されてしまった地域のリハビリ支援を、
1軒1軒、丁寧に行っている。

リハビリを終えて帰る際に、
70歳の娘さんがこう言った。
「震災があって近所の家の多くが流されちゃったから、
最近は家に遊びに来る人が少なくってさみしかった。
だからこうやって人が来てくれるのはうれしい」
リハビリは単に体のコンディションを整えるだけでなく、
心のケアにもつながっているのだ。

FTFのリハビリ支援活動に同行取材して感じたこと。

・医療が失われた地域の機能を補うための支援。
例えば冬物が地域の店で売っているのに、冬物支援をするとか、
下手をするとその地域の自立や経済活動を妨げるような支援ではなく、
震災により失われて困っている機能の支援をしていること。

・家を流された被災者だけでなく、
集落に取り残された人たちも支援していること。
安直なボランティアは、避難所や仮設住宅ばかりを支援してしまいがちだが、
震災で困った状況に置かれているのは、
そうした人たちだけではない。
そこをきちんとあわせてフォローしている。

・リハビリ専門職という資格集団の集まりゆえ、
突然、個人がボランティアに参加しても、
カルテを見れば状況がわかり、すぐに支援ができる。

例えば今回、ネットでFTFを知り、
初参加した理学療法士がいても、
「リハビリ専門職によるリハビリ支援」という、
目的の明確さがあるので、すぐに一人でも支援活動ができる。

カルテと引継ぎノートがあるので、
毎回何度も来れる理学療法士がいなくても、
飛び入りの参加でもすぐ即戦力となって、すべき支援ができる。

何でもやります的な烏合の衆のボランティアは、
震災直後は必要かもしれないが、
今の段階では、同じ職業が集まり、
職能を活かした支援の方が確実に機能する。

今、必要なボランティア活動とはこのような支援ではないか。
もう震災から7ヵ月以上が過ぎた。
かつて被災地にボランティアに行き、
首都圏で働いているのでは味わえないような「やりがい」を感じ、
また被災地の人と顔なじみになったことから、
今さら“見捨てるわけにはいかない”といった「同情心」が肥大化し、
もしくは、自分たちだけがいい生活していいのかといった「罪悪感」から、
自分の気持ちを満足させるために、
前の状況とはぜんぜん違うのに、
いるんだかいらないんだかわからない支援を続けることは、
下手をすると現地の「職」や「自立」を奪うことになりかねない。

それだったら自分の職業や職能を活かした支援に切り替えるべきではないか。
それは必ずしもFTFのように現地で顔を合わせてやることとは限らない。
被災地以外で今の自分の仕事を真剣に打ち込むことだって、
その仕事が社会に必要とされているのなら、被災地支援になるはずだ。

逆にFTFのように、今だからこそ、
現地に行って顔を合わせて、
被災地支援をすべきという活動もあるだろう。

「支援をしたい」と思っている人はいっぱいいるだろうが、
その気持ちを無駄にしないためにも、
今、被災地に欠けているもので、
被災地の経済活動を邪魔することなく、
被災地で必要とされていることで、
かつ自分の得意分野や職業が活かせることを考えて、
被災地のボランティア依存ではなく、
自立支援になることを行いたい。

FTFでは現地の医療体制が確立されるまで、
今後も継続的に支援活動を行っている。
理学療法士、作業療法士など、ボランティアの方を募集しているので、
興味のある方はホームページから問い合わせするといいと思います。
http://ftfreha.net/

・書籍「検証・新ボランティア元年~被災地のリアルとボランティアの功罪」


by kasakoblog | 2011-10-17 23:11 | 東日本大震災・原発


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