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会社を辞めて被災地で事業を始める理学療法士

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「来年、陸前高田市で介護保険事業をスタートします」
そう語るのは埼玉県在住の理学療法士、木村佳晶さん(35歳)。
今年いっぱいで今、勤めている介護施設を退職し、
震災で町が全滅に近い岩手県陸前高田市で、
介護保険事業をスタートするという。
(写真:木村さんは左から2番目。
5月に泥かきを手伝った、気仙沼大島の民宿「こばま」さんの一家と撮影)

震災から8ヵ月が過ぎ、被災地支援のあり方は大きく変わってきた。
しかし未だに震災当初と同じく、
ただひたすら“貢ぐ”ことで自己満足を得ている、
自立支援にはならないボランティア活動をする人がいる一方、
被災地が自立し復興するには何が必要で、
何が必要でないかを真剣に考え、
行動しているボランティアの人もいる。

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先日NHKのEテレ(教育テレビ)でも紹介された、
リハビリ専門職のボランティア団体「face to face(FTF)」は、
被災地の自立を焦点に当てて、余分な介入は行わず、
手が足りない被災地に重点を絞って支援活動を行っている。
(写真:石巻市雄勝町でリハビリ支援を行うFTF※10月9日撮影)

FTFのメンバーの木村さんは、
10月1日に行われたFTFの第6回報告会で、
「陸前高田市の介護保険事業計画」について発表を行った。

単純にすごいと思った。
一過性のボランティアではなく、
単なる無償支援ではなく、
支援活動の継続性を担保するために、
事業として活動を行う。
ただ一方的に与えるだけのボランティアではなく、
事業を通じた支援活動が成功すれば、
復興自立支援のモデルとなるはずだ。

報告会で木村さんとお会いする前から、
「ぜひ取材に来てください」と誘っていただき、
こちらもぜひ取材をしたいと思い、
11月5日6日の2日間、木村さんと同行した。

介護保険事業を行う予定地は陸前高田市竹駒町。
海から約3kmも離れているが、
近くを流れる気仙川に津波が駆け上がり、
この一帯も津波被害にあった。

予定地には仮設の薬局が7月からオープンしている。
陸前高田市の薬局すべてが津波被害に合い、
薬をもらえる状況になかったため、
災害支援を行っているLOTSという団体が、
土地を持っている地元の方から土地を借りて、
仮設店舗をつくって営業している。

LOTSも、ただひたすら与えるだけの支援ではなく、
「短期的な支援のみならず、
事業展開、雇用創成を行い、東北復興、
ひいては日本再建を目指す」という活動理念に掲げている団体だ。

木村さんが被災地支援をしようと思ったきっかけは、
4月頃に放送されたテレビ番組だった。
この頃、木村さんは「何か被災地支援ができないか」と考えていたが、
当時のメディアの個人ボランティア迷惑論的雰囲気もあり、
行けずじまいでいた。
しかしこのテレビ番組は、個人1人のボランティアでも、
いくらでもできることがあるという内容で、
それに勇気づけられたという。
そこで5月に1週間の休みをとり、
気仙沼大島で泥かきや小屋の片付けなどをしていたのが、
被災地にかかわった最初の活動だった。

その後も被災地を訪れ、
主に物資の運搬などの支援をしているなかで、
LOTSとも連携しながら活動を行っていた木村さんは、
LOTSが運営する薬局に引き続き、
この場所で介護事業を行おうと考えた。

震災で失われた薬局機能や病院機能。
これらが復旧しないと復興は難しい。
理学療法士のリハビリ支援とは、
日常生活を自立して送ることができるよう、
機能回復の訓練などを行うのが目的だ。
まさに自立支援だ。

仮設住宅などに入ってしまい、
ひきこもる機会が増えれば、
自分で動くこともできなくなってしまうし、
阪神大震災でも問題になった孤独死が、
今回の震災でも深刻化する恐れがある。
被災した高齢の方がかわいそうだからといって、
何でもボランティアが代わりにやってあげれば、
被災者が余計に動く機会がなくなってしまい、
そのうち自分では何もできなくなってしまう。
自立支援でなければ被災地の復興はあり得ない。

またボランティアの方もいつまでも無償支援していたら、
金の切れ目が縁の切れ目ではないが、息切れしてしまう。
というか自分が倒れてしまう。
今回の震災はあまりに被害が大きいため、
ボランティアの依存度が極めて高く、
活動の負担が重くて疲れてしまっているボランティアも多い。
どこかで有償なり事業なりにしないことには、
支援活動を継続的に行うのは不可能に近い。

そのような意味でボランティアから事業に転換し、
現地で雇用も生み出そうと考えている、
木村さんの被災地での介護保険事業というのは、
極めて興味深い活動だ。
今はまだ準備段階のため、
具体的に目に見える形で事業が始まっているわけではないが、
着々と準備を始めている様子だった。
現地に週4日は木村さん自ら滞在し、
スタッフの雇用もする予定でいるという。
事業がスタートした来年にまた改めて取材をしたい。
被災地復興の成功モデルとなればいい。

・FTFのリハビリ支援活動についてNHK・Eテレの再放送があります
11月15日(火)12:00~12:29
※10/1の報告会の様子が映っており、私もちらっと映っています。

・10/1のFTF報告会での木村さんの発表
http://www.youtube.com/watch?v=3QpySzcJDmc&feature=youtu.be

・FTFのホームページ
http://ftfreha.net/

・LOTSのホームページ
http://www.japan-jin.com/lotssaigaishien/index.html

by kasakoblog | 2011-11-13 21:45 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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