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なぜ被災者は働かないのか

失業手当は90日から最大300日に延長されているので、
300日分全部もらってから働いた方が「トク」だから。

先日テレビ東京で非常に興味深い被災地番組をやっていた。
被災地には求人があふれているのに求職する人が少ない。
一方、11月にオープンしたばかりのパチンコ屋は大盛況。
その客の多くは失業者で、パチンコ屋は人手不足だという。

でもなぜ今、働かないのかといえば、失業手当がもらえるから。
こんな実態もある。

失業手当をもらったことのない人には、
この話はピンとこないかもしれないが、
もらったことがある人ならわかるだろう。

私はかつて新卒で入社したサラ金を辞めた後、
失業手当をもらったことがある。
7月末で会社を辞め、翌日から4ヵ月間のアジア旅行に出かけた。
旅行から帰ってきて失業申請をした。
なぜなら旅行中、申請してしまうと、
1ヵ月に1度ハローワークにはいけず、
ちゃんと求職活動していないので、
失業手当がもらえなくなってしまうからだ。

ただ自己都合で会社を辞めた場合、
申請から3ヵ月間はもらえない。
だから多くの人は、転職先を決めてから会社を辞める。
すると失業手当は1円ももらえなくなる。
だったら3ヵ月間は遊んで、
その後、3ヵ月間(90日)失業手当をもらって、
それから就職した方がいいとこういうことになる。

私もそう思った。
でも旅行から帰ってきて半年間、さらに無職でいるのは、
精神的にも金銭面にもつらい。
しかも失業手当をもらうには仕事をしていないことが条件。
短時間のアルバイトならいいらしいのだが、
長期のアルバイトなどをしていると就労とみなされ、
失業手当がもらえなくなったりするらしい。

ただ早期に就職すると、3ヵ月分の満額はもらえないが、
いくらか支援金がもらえると聞き、
失業手当だけ申請し、早期に就職し、その支援金をもらった。
(今は廃止されて「再就職手当」というのものになっているとのこと)

早く就職すれば、失業手当は満額もらえなくても、
いくらかもらえるという金銭的インセンティブがあったからこそ、
早く就職してもいいかなと思った。
でもそうしたインセンティブがなく、
3ヵ月ガマンすれば働かなくても3ヵ月間、
お金がもらえると思えれば、求職活動なんかせず、
働いてしまうとお金がもらえなくなるので働きもせず、
遊んで暮らして失業手当もらった方がトクと思うのは当然だろう。
これがまさに今、一部の被災者で起きている現状だ。

私は2011年8月に、ある被災者から、
「無償の善意(ボランティア)に支配されて、
私たち(被災者)の出る幕がありません。
復興作業ならボランティアではなく、
時給600円でもいいから地元の失業者を使ってほしい」
というメールをいただいた。

このように失業で苦しみ、
何でもいいから仕事が欲しいと思っている被災者は、
・失業手当がない個人事業主など
・家が全壊しているわけではないので、
多額の義援金をもらっていない人
といった人が多いだろう。
お金がないから何でもいいから働きたいのだ。
このような被災者は数多くいると思う。

ところが失業手当はばっちりもらえる人、
今、就職しなくても再就職はなんとかなると思っている人、
義援金や物資援助などでお金に困らない生活をしている人にとっては、
急いで就職なんかするより、遊んで暮らして満額失業手当をもらった方がいい、
と考えるのは当然だろう。
だから被災地のパチンコに大行列ができる。

「復興作業をボランティアではなく、地元の失業者を使うべきだ」
と私が書いた記事に、福島のある地域で、
復興に力を入れている地元の方は、冷ややかにこう言った。
「ゴミ拾いや泥かきを有償にしても、うちの地元の人はまずやらないだろう。
なぜなら東電から一時金ももらっているし、義援金もあるから」

決して金銭的に裕福ではない都市部の若者が、
「これだけの被害があったのだから、何か手助けになれば」と思い、
交通費をかけて、休日をつぶして、
わざわざ縁もゆかりもない地域までやってきて、
放射能汚染やヘドロの有害物質に危険をさらしながら、
懸命にボランティア作業に明け暮れていても、
失業手当もあって義援金もあるし、
ボランティアに言えば何でも物がもらえるし、
ボランティアが勝手に地域の片づけなり清掃やってくれるから、
自分たちはやる必要はないと、
義援金でもらった金でパチンコに興じている。
皮肉なことだがこれも被災地で起きた1つの現実だ。

もちろん当たり前の話だが、すべての被災者がそうではない。
しかし現実には、イヤな作業は好き好んでやってくるボランティアに任せて、
自分たちは「被災者」なんだから、失業手当と義援金もらって遊んで、
失業手当300日分全部もらってから、
就職すればいいべと思っている人も間違いなくいる。

以前、被災者のインタビューをしていた時のこと。
仕事を失い、避難所から借上住宅に移った、
30~40歳ぐらいの男性が、
他の被災者とこんな話をしていた。

「やることないし、義援金も入ったから、
この前、東京いってキャバクラいってきた」

「おめえ、何、考えてんだ。
この先、何があるかもわかんねえいのに、
そんな遊び金に使って」

「どうしようもないっぺ。
どうせやることないし退屈なんだし。
そう、今日これからパチンコに行く約束、
友達としてっから、オレ、車ないから、
パチンコに送ってけろ」

結局、彼はパチンコ屋にいった。
どうも今回だけじゃなく毎日いりびたっている様子だった。

こういうことって別に遊んでしまう被災者が悪いわけじゃないと思う。
制度が悪い。
被災者がかわいそうだからと失業手当をむやみやたらに延長すれば、
こうした実態が起こってしまうのは容易に想像できる話だ。

私の失業体験例でもわかるように、
「早期に就職した方がトク」といったようなインセンティブがなければ、
人間はどういう風に振舞うのがトクかを考え、
すぐに働くより、もらえるだけ失業手当をもらった方がいいと考えるだろう。
そうやって金はムダに使われ、復興は遅れ、
被災者の自立心を損ない、ボランティアに負荷をかけるという、
復興から逆行した支援制度ができてしまう。

人間は善人ではない。
ラクな方に流れるのは当たり前のこと。
楽して金がもらえるのなら、
そっちの方がいいと思うのが人間として一般的だと思う。

被災地支援で間違うのは、
被災者を一人の普通の人間として見ず、
「かわいそうな弱者・善人」と捉えるからだろう。
もちろん本当に心底困っている人もいるが、そうでもない人もいる。
そうでもない人が一番トクをし、
本当に困っている、メールをくれたような人に支援がなく、
厚遇されている被災者がパチンコで遊び呆けている、
といったような歪みも起きてしまう。

必要もないのにボランティアがアホみたいに何でもくれるから、
もらえるだけもらって物を転売している被災者もいるとの話も聞く。
一方で、全壊でもなく、間接的被害で仕事が減った、
被災地にいる人ほど、支援なく困っているという、
非常におかしな状況が生み出された。

自立という言葉は本当に重い。
被災地や被災者の自立がなければ、
被災地や被災者の復興なんてあり得ない。
それは単なる支援漬け、ボランティア漬けだ。
被災者を過保護にする自己満足ボランティアは、
むしろ支援ではなく自立を妨げている場合もある。

自立支援をしている、リハビリ職のボランティアをしている人が、
こんなことを言っていたのが印象的だった。
「被災者に限らず、ふだん接している患者さんについてもそうですが、
基本的に自分でできることは自分でやっていただきます。
できない部分をサポートし、
自分でできるようにアドバイスするのが私たちの役目で、
何でもかんでもやってあげることは真のサポートではありません」

この震災で、過保護なボランティアや、
被災地の同情心を買うことで必死な政治家や行政のせいで、
本当に被災者が自らの足で立てなくなってしまい、
復興どころか過疎化・衰退がより悪化することも考えられる。

誰かに何かをするということは、
「かわいそう」なんて同情心からではできない。
誰かに何かを恵んであげれば、そこに甘えや依存心が生まれる。
3月になると震災1周年で、
それを機に自己満足のおかしな支援が増えそうだが、
あらためて自立支援とは何かを考え、行動したい。

※このような記事を書くと、単細胞で条件反射する方が、
「被災者のすべてが働かず遊んでいるとでも言うのか!」
なんていう人も時にいますが、
読んでいただければわかるように、
一部の被災者にはそういう人もいるという内容ですので、
勘違いしないようお願いいたします。

※また8月に、
「無償の善意(ボランティア)に支配されて、
私たち(被災者)の出る幕がありません。
復興作業ならボランティアではなく、
時給600円でもいいから地元の失業者を使ってほしい」
とメールをいただいた方は、
昨年末にお会いしてきました。
期間限定ですが、なんとか就職ができたそうです。
働いてお金をもらえることにとてもうれしそうにしていましたが、
でも期間限定であるため、
この先の不安はまだまだ続くようです。
一日も早く働きたいと思っている被災者の方も大勢います。
当たり前の話ですが、念のため。

※また「被災者はパチンコに行くべきではない」
という話をしているわけではない。
たまに気晴らしに遊んだっていいだろう。
しかし無職の人間がパチンコにハマればどうなるか。
かつてサラ金に勤めていた私から見れば、
その末路は悲惨以外の何物でもないことはよくわかる。

・書籍「検証・新ボランティア元年~被災地のリアルとボランティアの功罪」


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by kasakoblog | 2012-01-16 22:55 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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