2012年 02月 03日
マネーヘッタチャン
飲食店サイト「食べログ」で口コミ評価を上げるために、
月10万円払って高評価レビューを書くやらせが発覚し問題になったが、
このようなステマ=ステルスマーケティング
(消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること)は、
アマゾンレビューなんかでも横行している。

数年前にも問題になったが、
ある作家の本の5つ星の好意的なレビューが、
突如6件も削除されたり、
気に食わない著者の本のレビューに、
低評価をつけまくったり、
いかようにでも左右できるのがアマゾンレビューだ。

私なんかはある本の批判レビューを載せたら、
そのレビューが速攻消されただけでなく、
私の他のレビューまで削除されるという、
とんでもない嫌がらせに遭遇したこともある。

さて最近の話だと、私のブログの影響力を使って、
ある本の好意的レビューを強要されたことがある。
2011年4月に発売されたマネー・ヘッタ・チャン著の、
「マッチポンプ売りの少女~童話が教える本当に怖いお金のこと~」だ。

マネー・ヘッタ・チャンの父親が私が勤める編プロの社長。
その社長から「息子の本が出たからレビューを書いてくれ」と言われた。

2009年11月に発売された1作目、
「ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話」は、
おもしろい内容だったの4ツ星レビューをつけるとともに、
ブログでも紹介した。
世の中にあるうまい話に騙されないよう、
物語調にしておもしろおかしく、
かつわかりやすく書いてある本だったからだ。
なかには「へぇ~」と思うようなものもあり、
あっという間に読み終えてしまうが、
1050円と値段もものすごく高いわけではないので4ツ星にした。
著者本人とも会い、話も聞いて共感もした。

しかし昨年出版した2作目はあまりにひどい内容。
特に第2話のポプラ社大賞に、
水嶋ヒロが選ばれたのはやらせだったか、
「そんなもん、誰が見たってそう思うだろう」
って話のレベルで、
でもそこにやらせを証明する裏とりがあればいいが、
そういうものはまったくない。

終始そんな感じで、そんなこと言われなくても、
多くの人が気づいていることでしょという話ばかり。
例えばそういう「やらせ噂話」的なことが、
本当なのかどうかを確かめた、
多田文明さんの「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」
みたいに、実際に体当たりルポで事実を書いているならともかく、
誰もが想像する妄想レベルの記述にしか過ぎない。
しかも分量が極めて少なく、あっという間に読み終えてしまう内容で、
1365円もするのだ。

これではとても好意的なレビューなど書けない。
というよりむしろこんな本を1365円で買うこと自体が、
この本に出てくるマッチポンプみたいな話で、
対価に見合わないお金を払わされることになる。

さてこの本のレビューをどうしようか迷った。
著者本人とも会ったことがあり、
とても好感の持てる30代の男性だったし、
そもそも勤めている会社の社長から頼まれてもいる。
正直に酷評レビューを書くのは忍びない気持もある。

でも一方で私には多くのブログ読者がいる。
私が支持されているのは、
それが正しいかどうかはともかく、
いいものはいい、悪いものは悪いと、
はっきり書いていることにある。
アマゾンレビューでもつまらないものはつまらないと、
はっきり書いてある。

ただ答えははっきりしている。
ブログ読者を裏切るわけにはいかない。
というかこんなバカみたいなくだらない内容の本を、
私がおすすめなんて勧めたら、
私のブログの文章が信用されなくなる。

とはいえたかが10数人しかいない会社の社長の息子。
そこで私は折衷案として、
ブログ記事で酷評レビューを書くのはやめた。
でもアマゾンレビューには2ツ星で、
下記のようなレビューを書いた。

☆☆ 残念 2011/5/4
前作はおもしろかったが今作は・・・
マーケティングがどれだけうまくても、
絶賛レビューやネット口コミで広めても、
内容の薄い本は今後にはつがならず、
かえって評判を落としてしまうだけ。
ネットでも十分読めるようなこの内容で、
1300円も払ってこの本を読む価値があるのかどうか・・・。

著者と面識がありますが、
著者のためにあえて苦言レビューを書きますが、
前作がよかっただけに、非常に残念でした。
薄い内容でもプロモーションがうまければ売れてしまうって、
この本で批判していたまさに水嶋○○さんと同じ。

今回はとても残念でしたが、ぜひ次回、
巻きなおしてがんばってほしいと思います。

私にしては社長と社長への息子の配慮から、
随分譲歩して書いてあげたつもりだった。

ところがこのレビューを見た著者が、
「パパ~~、社員が批判レビュー書いてるよ~
助けて~~」といい年こいて父親にチクったのか、
私は社長から社内で業務中に仕事について怒られることになった。

「おまえはいつもそうだ。
人の話を聞かない。社長の話を聞かない。
勝手に判断して仕事をしている」

「そんなことないでしょう?
どこにそんなことがあったんですか?
具体的に言ってください」

すると社長はこう言った。
「息子の本を批判しただろ!!!」

おいおい、勘弁してくれよ。
息子の本のレビューを書くことは、
業務上の仕事ではない。
プライベートなことだ。
しかもそのレビューをどう書くかは私の自由だ。
社長が社員に息子の本の好意的なレビューを強要し、
それを書かなかったからといって、
「仕事でもそうだ」と勝手に決めつけられたのでは、
これは完全なパワハラだ。

そして何より私が不思議だったのは、
社長が編集やライター、出版を仕事とする人間なのに、
ということだった。

この本を読んでみればプロなのだから、
いかに内容が軽薄でつまらないか、わかるはずだ。
にもかかわらずすっかり親バカになり、
ひたすら褒めることしか考えていない。

だから私ははっきり社長に言った。
「出版のプロである社長から見たら、
もっと息子さんの本の内容がよくなるように、
アドバイスしてあげたらどうですか?
1作目はよかったですが、2作目のこの内容じゃ、次回はない。
息子さんのためにも、
どこをどう改善すべきか指摘してあげるのが、
本来の親の愛情じゃないんですか?」

私には自分の父親との比較もあった。
私がはじめて本を出した2005年のこと。
自分の本を出したいと思って念願かない、
私は有頂天に喜んでいた。

ところが本を父親に送ったら、
おめでとうとかすごいねという言葉もなく、
「オレだったら書き出しはこう書くぞ。
もっと丁寧に書いた方がいい」と、
いきなりダメだしメールがきて、
がく然とした思いがある。
(ちなみにうちの父親は出版とはまったく無関係の仕事)

でも今にして思えば、
自分の成長のために苦言を呈してくれる人は、
極めて貴重だ。
そういうのって他人じゃなかなかいえないから、
身近な人が言ってあげるべきじゃないかと思った。

しかし私が当然のことを言ってしまったがために、
社長は余計に感情的に激怒した。
私がいないところで他の社員に向かって、
「あいつはオレに逆らった」と言いふらすようになり、
ことあるごとに仕事に文句をつけるようになった。

それでも私は他の社員に比べて、
圧倒的にミスが少なく、かつ物量もやっている。
そこで仕事に突込みが入れにくくなったため、
今度は私の個人活動を締め付けするようになったのである。
個人の活動はするな。
そのせいで会社に貢献していないと。
とんでもない言い掛かりだったが、
息子のレビュー批判が事の発端だから、何を言ってもムダ。
だから私は会社を辞めることにした。
こんな社長ではこの会社に未来はない。
いい見切り時だと。

私の場合、会社を辞めて独立しても、
なんとか食っていけると思っているから、
社長から好意的なレビューを書けと強要されても、
ライターとして最悪な筆を曲げるようなことはしなかった。

でもどうだろう。
これが他の社員や会社だったらどうか。
社長からレビューを強要されて、
それに批判的なレビューを書く勇気があるだろうか。
これも一種の「ステマ」であり「やらせ」である。

マネーヘッタチャンの2作目はひどい内容にもかかわず、
あまりにも不自然に絶賛レビューで埋め尽くされており、
それをおかしいと思う批判的なレビューもいくつかあった。

マネーヘッタチャンは文章よりもプロモーションに力を入れすぎている。
ホリエモンにいくら大金つぎ込んだのかしらないが、
帯を書いてもらったり、
レビューなどのプロモーション戦略も、
実に完璧にこなしている。
だから売れる。

でも私は思う。
どれだけプロモーションにたけていても、
中身がなくてがっかりさせたら、それは逆効果になる。
「えっ、この内容で1365円もするの?」
と思ったら次から絶対に人はこの著者の本は買わないだろう。

今の時代、中身がいくらよくても、
営業はプロモーションが下手なゆえに売れないのは、
言い訳にはならないと思う。
きちんと世に自分の作品なり商品が売れることを、
的確にコストや手間をかけて宣伝することは必要だ。

しかし食べログのやらせしかり、
親の威光を借りてレビューを強要させることしかり、
作品の質が伴っていないものを、
無理やりいい風に宣伝することは、
短期的には売上が伸びても、
長期的には売上は伸びない。

世の中にはやらせレビューのようなことが横行しているが、
それが通用するのは1回限り。
もちろんこのマネーヘッタチャンなどは、
1回限りでもいいからとにかく売れたら勝ち、
と思っているのかもしれないが、
それでは彼がせっかくこの本で訴えている、
世の中の詐欺みたいな話に騙されてはならない、
というメッセージが希薄化してしまうではないか。
なぜなら彼自身の作品がマッチポンプなのだから。

本とは何か世の中に訴えたいものがあるから書くものであって、
ラクして儲ける手段ではない。
本で儲けることばかり考え、
作品の内容が低レベルになり、
でもプロモーションはうまいと、
余計に作品のレベルの低さが際立ってしまう。

契約社員の証券ディーラーのために、
自分のリスクヘッジで本の副収入を期待しているのかもしれないが、
1作目に見られたような、
世の中のうまい話に簡単に騙されるな、
という素晴らしいメッセージと、
自分がやっていることが対応していないと、
どれだけ販促がうまくても、
読者から見放されてしまうだろう。

これはアマゾンレビューに限った話ではなく、
どの企業の商品やサービスでも同じ。
「ステマ」や「やらせ」で評価を上げるのは、
やめた方がいいだろう。

・マネーヘッタチャン「マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~」

※ちなみにこの記事を書いた後に、
私の著書に批判レビューばかりが集まったら、
マネーヘッタチャンの見事なアマゾンレビュー操作が、
証明されることになるだろう。

※もしかしたら私の個人的な愚痴話と思うかもしれませんが、
私のブログの影響力が大きくなるにつれ、
それを利用して、黒いものを白といわせるような、
圧力がかかることもあるという一事例です。

これからも既存のマスコミのように、
金で抱きかかえられて、黒いものを白ということで、
国民の利益を損なってしまうようなことをしないよう、
気をつけて文章を書いていきたいと思います。


by kasakoblog | 2012-02-03 23:36 | ネット


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