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企業年金が消えるのは当然~投資の教科書はウソだった

年金制度の不安・不満は頂点に達しているが、
報道されるのは公的年金ばかり。
しかし先日、企業から資金を預かったAIJ投資顧問会社が、
2000億円もの年金資金を消失させてしまったと大問題になった。

実は公的年金だけでなく企業年金も自分年金も欠陥的・致命的問題がある。
公的年金だけでは不安だからと、
企業や個人が投資に手を出したところ、
本来なら長期間、投資すれば、
預金金利よりも高い利回りで運用できるはずが、
今まで「投資の教科書」に書かれていたことが、
まるで通用しなくなってしまったからだ。

預金金利が超低金利でお金を預けていても増えません。
だから投資をすれば金利が高くついて、老後の生活も安心です。
これが投資のレトリックだ。

では何で稼ぐのか。
株式と債券だ。
株式は企業が紙切れを発行し、返さなくてもいいお金。
その代わり業績が上がったり、人気が出たりすると、
紙切れの値段が上がるから、上がった時に売れば儲かるのと、
業績がいいと配当が出るので、配当収入が見込めるというもの。

一方、債券は紙切れだか借用証書のため、
必ず利子をつけてお金は返さなくてはならない。
このため株式ほど儲かる可能性は低いが、
そこそこの利子を期待できる。
もちろんギリシャとか倒産企業の債券を買ってしまうと、
元本が確保できるかわからないので、
預金とは違ってリスクはある。

年金資金を確保するために、
企業年金はだいたい株式に50%、
債券に50%の割合で投資している。
債券が仮に安全だとしても、
株式が半分も占めていると、
株式の変動で大事な資金が増えるどころか、
大きく減ってしまう可能性がある。

例えば1000万円運用していて
債券500万円が10年間で650万円に増えたとしても、
株式500万円が10年間で300万円になってしまえば、
トータルで950万円。
50万円のマイナスである。
超低金利だろうが預金に預けておけば、
1000万円は確保されるわけで、
手間隙かけて手数料もとられて、
50万円マイナスなんて、なんてバカらしいことだと思うだろう。

でもなぜこんな愚かなことが行われてきたのか。
それは株価は一時的に上がったり下がったりしても、
最終的には右肩上がりになると信じられていたからだ。
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図をご覧いただきたい。
これが投資・運用の前提となっている大原則。
株式は上がったり下がったりする。
時には買った時の半値以下になってしまうことも
あるかもしれない。
でも長期的に見れば世界の経済は絶対に成長するから、
一時的に株価が下がったとしても、
20年、30年持っていれば必ず上がるという神話に基づき、
株式投資が行われてきたわけだ。
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じゃあそれは本当なのだろうか。
日本株(TOPIX)の推移をご覧いただきたい。
1985年~2012年の約27年間の変遷だが、
見ての通り、27年前の株価指数の値より、今の値の方が低い。
20~30年持ってもマイナスの可能性が多いにあるということだ。

ちなみに2012年1月末時点で、
TOPIXに推移していたらどうなるか、
というわかりやすいサイトがあるが、
それによると、
5年:100万円→48万円
10年:100万円→90万円
15年:100万円→66万円
20年:100万円→58万円
30年:100万円→181万円
となる。
http://myindex.jp/data_i.php?q=TS1047JPY

なんだ、かさこさん、30年預ければ、
81万円もプラスになるじゃないかと思うかもしれないが、
株式という非常にリスクが高い資産に預けて、
30年も預けたのに2倍にすらならないのでは、
はっきりいってお話にならない。

しかも今から30年前なら、
まだ日本が成長した時期も含まれる。
しかしこれから30年後に、
日本が成長すると思うだろうか?
そう考えた時、今までと同じように、
株式は右肩上がりだから持っていれば大丈夫なんて、
果たして思えるだろうかという話だ。
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今後、株式はどう動いていくのか。
簡単に言ったら右肩下がりのトレンドになっていくだろう。
もちろん市場なので下がるだけでなく上がる時もある。
しかし基本的には前よりもどんどん下がっていく。
つまり長期に持てば持つほど、
今までの常識とは違い、大損する可能性が高いわけだ。

こういう時代の変化が起きたにもかかわらず、
長期投資していれば株価は上がるなんて、
とんでもない幻想にしがみついて、
企業年金の多くが運用されている。
するとどうなるか。
思ったほど収益を上げられず、年金不足になるとこういうわけだ。

もし株式で収益を上げるとするなら方法は3つ。
1つは長期投資ではなく短期投資。
右肩下がりのトレンドとはいえ、
株価には波があり、下がったり上がったりする。
だからちょっと上がったら長期で持たずに売る、
ということを繰り返す。

しかし当たり前の話だが、
どこが波の天井でどこが波の底かなんて誰にもわからない。
基本的には右肩下がりの傾向にあるわけだから、
間違って高値でつかんでしまうと大損する可能性もある。
そんな危険な資産に年金資金を預けますかという話。

もう1つは売りから入る。
売りからとは単純にいうと、
「株価が下がる方にかける」ということだ。
しかしこれもそう単純にはいかない。
下がると思ったら上がってしまうこともあるからだ。

3つ目は集中投資。
株式市場全体で見れば右肩下がりだが、
数少ない企業は右肩上がりで株価が上がっているところもある。
そういう企業を探してそこに集中投資する。

しかしそんなことが果たしてできるだろうか?
例えば安定しているといわれていた電力株は、
原発事故で瞬く間にボロ株へと早代わりした。
どこか成長するか企業を見極めるのは、
言ってみれば宝くじを買うようなもの。
そこに集中投資してもしどこか1社でも、
何か不祥事かがあって業績悪化、もしくは破綻してしまえば、
大事な資金はおじゃんである。

今まではアホのごとく、
ただ株式に投資して長年持っていれば上がると思われていたが、
もはやそういう時代ではなくなった。
そう気づいている人も多いが、
運用方法を変えたところで、
確実に儲ける方法などない。
だからこそAIJのように、
高利回りをうたいながら、実際には大損してしまい、
それを虚偽の報告をして誤魔化したというような、
とんでもない事件が起きるのだ。

株式投資は楽しいがもはやギャンブル。
ギャンブルで老後の生活費を稼ぎますか?という話。
もはやこれまでの投資の常識で、
大事な年金の運用なんかできない。

お金を増やすことが無理なら、
お金支給という年金制度ではない、
老後の生活を保証する仕組みを作るしかない。

例えば住宅無償、食品無償などだ。
人口が減って空き家が増えているのだから、
住宅無料で住んでもらえば、
お金がなくてもとりあえず雨風はしのげる。
食べ物も買うお金がないなら、
大量に出ている食品廃棄物とかを、
無償で回す仕組みを作ればいい。
もしくは放射能汚染された食品を、
無料で老人限定で支給すればいい。

これまでの常識が180度変わった今、
これまでの制度の延長線上のような、
小手先の改革では無理やり延命したところで、
抜本的治療には絶対にならない。

投資の常識が180度変わった。
なのにまだ過去の常識にしがみついて、
年金が運用されている。
もしくは小手先のテクニックで、誤魔化そうとしている。
だからAIJのような事件が起きる。

もはや株式で年金を運用する時代は終わったのかもしれない。
宝くじやパチンコで年金を運用しないのと同じように。

by kasakoblog | 2012-02-28 00:56 | 金融・経済・投資

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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