好きを仕事にする大人塾「かさこ塾」塾長・カメライター・セルフマガジン編集者かさこのブログ

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2012年 03月 28日

空気が日本を破滅させる~震災後と戦時中の国民心理の近似性

有事の際に国民を危険な目にあわせるのは、
政府でも官僚でも東電でもメディアでもなく国民自らだ――。
今の日本はまるで戦時中と同じ。
一億総玉砕よろしく負けいくさとわかっていながら、
「お国のため」だと信じ込み、
危険を警告する人間を「非国民」だとバッシングし、
一定方向の世論だけに塗り替えて、
全員が不幸になる最悪の選択肢に向かって突き進んでいる。

今、私はそんな危機感を覚えている。
先日、行った講演でも紹介したが、
震災後に起きたニュースで象徴的なのが、
週刊誌「AERA」VS「週刊ポスト」騒動だ。

震災直後、原発が爆発し、
海外メディアが「チェルノブイリ以上の最悪の事故」
「メルトダウン」と報道していたが、
私も含めて多くの国民は、
「いくらなんでもそこまでにはなっていないだろう」
「海外メディアは騒ぎすぎだ」と思っていたに違いない。

そんな空気の中で、
2011年3月19日に発売された「AERA」は、
東京にも「放射能がくる」と題し、
防護服に身をまとった顔写真アップを表紙に載せ、
広範囲の放射能汚染の危険性を警告した。
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この時、国民の反応はどうだったか。
「風評被害を助長する」
「売れるために恐怖心を煽りすぎ」
「東京に放射能がくるわけがない」
大ブーイングだったのだ。

この騒動は別に書店で雑誌を買った読者が、
文句を言ったわけではなく、
中身を読みもしないのに表紙だけ見て、
「ひどい」という雰囲気が蔓延した。

さらに「AERA」バッシングを加速させたのは、
同時期に発売された「週刊ポスト」である。
こちらは被災地で自衛隊員に助けられる赤ちゃんを表紙写真に載せ、
「日本を信じよう」と題した。
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これが「AERA」と比較して「週刊ポストは素晴らしい」という話になり、
こちらも雑誌の中身を読んでいるわけではないにもかかわらず、
絶賛する雰囲気が広まった。

こうしてネットを中心に、
週刊誌「AERA」VS「週刊ポスト」騒動が持ち上がり、
「週刊ポスト」が大絶賛され、
「AERA」は表紙写真や表紙のコピーややり過ぎだと批判され、
後に謝罪するところまで追い込まれた。

しかし今、思うとどちらの雑誌がよかったのだろうか。
その時はわからなかったが、原発事故後は東京を含め、
日本の広い範囲で放射能汚染されていた。
政府や東電がメルトダウンを認めたのは2カ月後。
「AERA」の警告は「風評被害を助長」、
「恐怖心を煽りすぎ」なんて今振り返ってみると微塵にも思わない。

むしろ危険を楽観視するムードを作り上げていた、
虚偽や隠ぺいだらけだった政府・官僚・東電・メディアの発表から、
国民に危機を訴える素晴らしい表紙だったのではないか。
外国人や外資系金融機関が、
国外や西日本に逃げるなか、それを鼻で笑い、
電車本数が少ないのに、
放射能汚染された大気の中を平然と仕事に向かっていた、
危機意識のない国民に強烈に訴えかけるメッセージだったのではないか。

しかしこうした「良質」な記事は、
国民世論によって「抹殺」された。
なぜならその時のムードや空気にそぐわなかったからだ。
国民の多くは「ただちに影響がない」という、
政府や官僚や東電やメディアを信じないといいながら、
信じられない情報を海外メディアや「AERA」が報道しても、
聞く耳を持たなかった。
それどころか「風評被害を助長する」とまで批判した。
国民自らが国民の加害者になっていたのだ。

震災というとんでもない悲惨な災害が起きて、
多くの国民心理は普通の状態ではなかった。
集団ヒステリーに近い状態だった。

こうした際に冷静に事態を見つめ、
局面の打開を図ろうとしている人を、
「非国民扱い」する空気が蔓延すると、
次第に反対意見が誰も言いにくくなる。
言えばバッシングされる。炎上する。
「ほんとはおかしい」と思っている人も、
容易にネットで意見を言えなくなる。
こうしてどんどん一方向の意見・情報だけが目につき、
「みんなそう思っているのだからそうなんだろう」と、
情報の真偽も確かめず、みな信じ込んでしまう。

震災直後の自粛にしてもそう。
がれきの広域処理についてもそう。
自己満足ボランティアもそう。

おかしいと思っていても、それを言おうものなら、
「被災者が苦しんでいるのに不謹慎な!」
「ボランティアが一生懸命やっているのに批判するなんて!」
という空気が蔓延しているために、
おかしなことでも誰も止めることができず、
おかしな方向に国や社会が進んでしまう。

そして数年たってから、
そんなことがあったのも国民はケロっと忘れて、
「政府がすべて悪い」「東電がすべて悪い」と責任転嫁を行う。
自らもその責任の一端を担っていたはずなのに。

戦時中、どう考えてもアメリカに勝てるわけがない、
早めに負けを認めて被害を最小限に食い止めるべきだと思っても、
そんなこと言おうものなら大バッシングだ。
国のために命をかけて戦っている兵士がいるのに、
自分たちだけのうのうと暮らしていいわけがない。
率先して特攻隊に志願すべきだみたいな空気が蔓延する。

いや、本当はみなどこかで、
「こんなのおかしい」と思っている。
でもそれを口で言うと、感情論に支配された、
短期的な視野しか持てない「国民世論」に抹殺される。
だから誰も批判を口にすることができない。
結果、被害を拡大させ、原爆を落とされ、
多くの人が死んでしまう結果になる。

もちろんそういうものを煽動した、
政府・官僚・財閥・メディアも悪いわけだけど、
そういう雰囲気に加担しているのは他ならぬ国民。
空気を読んで、空気に逆らわないようにし、
反対意見が言えない空気を作り上げ。
結果、全員が不幸になる道をまっしぐらに歩んでしまう。

戦争中や災害直後という日常では経験しない異常事態に、
国民自身が冷静な判断を失い、
理性的な思考ができなくなって感情に流されれば国家は破滅する。

首都直下地震や東北沖地震再来による福島原発事故再びの有事に、
昨年のような国民集団ヒステリー状態になると、
最も愚かな選択をしかねない。

普段から空気に流されず、
情報をしっかり吟味した上で、
一人一人が判断・行動していきたい。

・防災講演スライド
http://www.kasako.com/20120320kasako.pdf

※防災講演では3つのポイントの1つに、
有事の際の情報リテラシーを取り上げ、
他の事例をあげながら、私の取材経験なども踏まえて話します。

防災について「うちでも話をしてほしい!」
という方はメールいただければと思います。
kasakotaka@hotmail.com


by kasakoblog | 2012-03-28 22:28 | ネット


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