2012年 05月 12日
新曲無料化でアーティストとしての喜び増える~メリディアンローグ涼さんインタビュー
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ミュージシャンは曲を作ってお金を得るのが当たり前だった。
しかしバンド「メリディアンローグ」は、
新曲を無料化するという重大な選択をした。
バンドのプロモーション戦略としてはともかく、
作詞作曲をしている当人はどう思っているのだろうか?
メリディアンローグの作詞作曲を担当している、
ボーカル涼さんに話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
(取材日:2012年4月)

1:新曲を多くの人に聴いてもらえる喜び
CDが売れない時代。
以前に比べてレンタルすらあまりしなくなった。
曲はネットで探せば無料で聴けるのが当たり前になり、
ミュージシャンが曲を作って売るのが困難になっている。

そんななか逆転の発想ともいうべきアイデアで、
新曲を無料配信することで多くのリスナーを獲得し、
ライブ動員やグッズ販売で食べていければいい、
という選択をしたのがメジャーデビューの経験もあるバンド、
メリディアンローグだ。

その戦略は今の時代環境を考えたら「正しい」と個人的に思う。
でも今まで曲を作ることでお金を得ていた、
作詞作曲している当人はどうなんだろう、
というのが私の最大の関心事だった。

バンドとしてはやむを得ないが、
作品を作っている当人としては、
例えば100円でもいいからiTunesで販売するとか、
何らかの対価を得たいと思うのではないか。
曲を無料にしてしまうことは、
ある意味では「プロ」ではなく、
「アマ」になってしまうのではないか。
そんな心配をしていた。

しかしそれはまったくの杞憂であった。
メリディアンローグの作詞作曲を担当している、
ボーカル涼さん宅を個別インタビューのため訪れると、
音楽の話ではなく今、
涼さんの最大の関心事となっているダイエットの話を、
部屋にそなえつけたルームランナーに乗って、
嬉々として語ってくれた。

そんな様子を見る限り、メジャーをやめて、
新曲を無料にしたこの1年の活動は、
涼さんにとってもいい選択だったようだ。

「無料になったことで多くの人に、
自分が作った曲を聴いてくれるチャンスが増えた。
今までなら新曲を出しても、
お金を払ってくれる人にしか聴かせられなかった。
でも今はメルマガ登録している人に、
すぐに聴かせることができる。
聴いてくれる人が多くなる方が、
作品の作り手としては何よりうれしい」

言われてみれば確かにそうだ。
私もブログの文章を有料メルマガにしないのは、
何よりも多くの人に読んでもらいたいから。
自分が食える食えないという問題は別の手段なりでどうにかし、
何よりも自分の作品を多くの人に見てほしいというのは、
クリエイターに共通する想いなのだなと。

しかも今まで事務所に所属していた時とは違い、
自分の思いのままの曲をそのまま配信することができ、
それを好きなタイミングで出せることも、
ボーカル涼さんの心の状態がいいことの要因なのかもしれない。

「例えば『ブラインドマスク』のような、
ラップを多用した実験的な曲をすぐに出すことができた。
今までだったら、これまでのメリディアンローグのイメージと、
やや離れているため、すぐに新曲として出すことはできなかったかもしれない。
自分が今いいと思った曲をタイムリーに出せる。
リスナーの反応はどうかなと思ったら、
実験的なこういう曲でもむしろすごく人気があって、
喜んだりもしてくれる。
そういうことがダイレクトにわかるようになってうれしい。
自分の感性を信じて作った曲を、
気に入ってくれる人がこんなにいるのだと知れるから」

曲に限らず何か作品を作るというのは、
とてもあやういバランスの上に成り立っている。
聴き手を意識しすぎてそこに迎合してしまえば、
ありきたりのありふれた作品になってしまうし、
だからといって我を押し通しすぎて、
聴いてくれる人がいなくなったら、
それはクリエイターとして存在しなくなってしまう。

でも自分の信じる曲を無料で毎月出し続けるという、
これまでとは違った経験を通して、
「自分がいいと思った世界観=音楽作品がリスナーの満足にもなる」ことを知った。
自己満足でもいいのだ。
それをいいと思ってくれる人がいるのだから。
尖ったものでも「自分がいいと思うことがまず第一」という、
創作活動の原点を再認識した1年だったのではないか。

だから曲が無料であることに不満などなく、
むしろ今までより多くの人に知ってもらうチャンスが広がり、
「今はまったくストレスフリーといっていい状態」で、
涼さんは音楽を作れている。

「この1年でどれだけの代表曲が作れたことか」
という言葉に活動の充実ぶりは集約しているように思う。
1リスナーという立場でメリディアンローグを考えてみても、
毎月新曲を出し続けたこの1年は、
今までの数年間の活動の何倍もの密度と量と質を伴った、
素晴らしい曲群が誕生したと思っている。

2:ピアノ、ストリングス(弦楽器)からギター、デジタルへ
独立2年目となる今年はさらなる飛躍をめざすべく、
「もっともっと曲は変わっていくかも」と涼さんは話す。

「今までメリディアンローグの曲といえば、
ピアノ、ストリングスみたいなイメージが強かったと思うが、
今後の曲は全曲ギターボーカルになるぐらい、
自分がギターを持って弾く曲が多くなるはず。
ギター音中心でかつデジタルな感じのする曲が、
増えていくと思います」

曲はメンバーに聴かせて反応を見たり、
アレンジの部分でメンバーの意見を採用することもあるが、
曲に関しての最終決定権は涼さんにある。
「時代の志向を意識しすぎて作るのはあやういが、
でもきっと今の自分の音楽の志向は、
今の時代に合っているのではないかという気がしています」

最近は「メロディーに凝りすぎるのは逆にかっこわるいのでは?」
と思っていたりもして、凝りすぎず、
スタイリッシュでクールな感じの曲を作りたいと考えているという。

「でも何より大切にしたいのはワクワク感。
おもしろいことをしたい。
予想がつかないようなこともしていきたい。
作る側にとっても聴く側にとっても、
そういう楽しさが重要だと思う」

このため今年度からは毎月新曲配信から、
2ヵ月に1度のペースを変える。
「毎月新曲配信だと活動がそれだけになってしまい、
おもしろい企画とかする時間がとりづらくなってしまう。
今後はむしろそういうことにも力を入れていきたい」

「音楽的にもマニアックなものがあってもいいと思う。
例えば30分の曲とか1時間の曲とか(笑)。
ABメロ、サビがない曲とか。
いい意味で予想を裏切る楽しいことをしていきたい。
もしかしたらバンド名を変えるとかあるかもしれないし(笑)」

バンド活動的にはネットを活用しつつ、
今後は「顔が見える」リアルな感じを出していきたいという。
その一環でバンドの公式サイトも、
今までメンバーの写真がなかったものから、
メンバーの写真が写ったものに変えた。

「ネットで無料配信しているからこそ、
どんな人が音楽をしているのか、
顔を見せていくことが重要」と説明する。
確かにその方が親近感がわきやすいし、
知らない人もとっつきやすいだろう。

3:ダイエットと食べること
それにしても今、ボーカル涼さんの頭を占めている大半は、
ダイエットのことだ。
涼さんの凝り性は半端なく、
様々なダイエット本やダイエット理論を研究し、
毎日こまめなカロリー計算を行い、
カロリーを落とすために、
「こんにゃくうどん」「こんにゃくベーグル」「こんにゃくケーキ」など、
ダイエットメニューの研究にも余念がない。

家ではルームランナーに乗って歩きながら、
メールのチェックをして返信したりもする。
時にはルームランナーに乗りながら歌詞を考えることも。

しかしなにゆえにそこまでダイエットにこだわっているのか。
それはメンバーである海保さんから言われた一言だった。
「涼さんが限界までダイエットした姿もみてみたい」

ならばやってみよう。
そこまでやって「やせた」と言われないのなら、
もうダイエットはやめて食べること重視の生活にシフトしようと、
今はダイエットにまい進中だ。

しかしダイエットしているのに、
そのためにこんにゃくばかり食べているのに、
食べること、飲むことは大好きな涼さん。
漫画やドラマやテレビ番組はグルメ関連をこよなく愛し、
食べログで行ってみたい店は、
500~600件近くブックマークしているという。
「いつかグルメリポーターをやってみたい」
というほどの食道楽でもある。

「空気みたいな当たり前の存在の音楽はもちろん、
僕の人生にとって重要なことだけれど、
音楽と同じくらい、いやそれ以上に重要なのは食べること!
食べることは生きることそのもの。
食べる楽しみなしでは生きていけない」
というほどのグルメだ。

今はダイエットに凝っているが、
数ヵ月後にはダイエットはやめていて、
グルメに凝っているかもしれない。

何をするのでもとにかく凝り性の涼さん。
その徹底したこだわりぶりが、
音楽の完成度にも表れている。
今後どんな曲を作ってくれるのか楽しみだ。

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http://frekul.com/artists/profile/mr

・メリディアンローグ公式サイト
http://meridianrogue.com/

・2007年涼さんインタビュー
http://www.kasako.com/sakuhin.files/merirog.html


by kasakoblog | 2012-05-12 23:26 | 音楽


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