2012年 06月 08日
バンドと客を食い物にする音楽業界からの脱却~元ビジュアル系バンドマンインタビュー
「音楽活動をすればするほど、
自分もバンドマンもお客さんも不幸になっていく。
音楽って人を幸せにするものではなかったのか?
このままではみんなおかしくなってしまう。
そう気づいて、既存のビジュアル系音楽業界での活動をやめました」
e0171573_22593291.jpg
そう語るのは約6年間、ビジュアル系バンドとして活動していた、金子友也さん(25歳)だ。

既存の音楽業界のビジネスモデルはすでに崩壊しているが、
一度できあがったシステムにがんじがらめになった業界は、
今もなお、バンドと客を食い物に生きながらえている。
その実態を実体験をもとに話を聞いた。
(取材日:2012年5月)

高校生の時に組んでいたバンドでは、
あるミュージックフェスティバルで奨励賞を受賞。
Zepp東京でライブをするなど、
音楽の力を評価された金子さんは、
「音楽で成功するぞ!」と目を輝かせ、
バンドメンバーとともに栃木から上京した。

はじめは無我夢中だった。
既存の音楽業界の成功手法を信じて、
自分たちも業界にのめりこんで突っ走ってきた。

しかし何かがおかしい。
ライブハウスの多くはライブをしたいバンドマンに、
ノルマを押し付け、バンドから金をとって儲けるので、
バンドをお客さんと思い、ライブを見に来る客を客と思わない。

一方、バンドや音楽事務所などはファンを食い物にし、
バンドを宗教の教祖のようにあがめさせ、
洗脳し、神格化することで、
一部の熱狂的かつ少し頭の弱いファンから、
お金を貢がせることばかりに熱心になっていた。

ファンの中にはバンドが貧乏であることを知って、
札束の入った封筒を手渡すような、
そんな行為も日常となっていた。

バンドはライブをするにも金がかかる。
CDを出すにも金がかかる。
音楽雑誌に取り上げてもらうにも金がかかる。
ツアーをするにも金がかかる。
いや、それでも昔はライブやCDに投資することで、
売れるかもしれないというリターンがあった。
でも今はもうそれがない。

「従来の音楽活動を続けたのではハイリスク・ノーリターン。
でも音楽業界は既存のビジネスモデルにしがみつき、
バンドマンもそれにしがみついて、
借金してまでCD出したりしている」と金子さんは言う。

それでもバンドが多少人気になってくれば、
事務所が全国ツアー代を持ってくれることもある。
でもバンドマンにとっては無報酬の営業活動に過ぎず、
実入りは少なく、時間もとられる。
結果、アルバイトをする時間もなく、生活は困窮していく。

それでも夢にすがりつくバンドマン。
そこにしがみつく一部の熱狂的ファン。
そうした音楽の夢をエサに、
崩壊したビジネスモデルの中で、
なんとか稼ごうとする音楽事務所。

こんな状態が続けば、バンドマンの生活は困窮し、
借金まみれになって夜逃げするとか、
生活がたちいかなくなって自殺するとか、
そんなことが起きるようになっていた。

金子さん自身も組んでいたバンドのメンバーが、
音楽活動のために借金まみれになり、
突如、窃盗で逮捕されるという事件を経験した。
メンバーがツアー中に失踪することもあった。

そんな状態でいい音楽を作れるわけがなく、
ひたすらライブでは派手なパフォーマンスに終始し、
熱狂的なファンをつなぎとめようと試みる。
ファンも次第におかしくなり、
ファンも貢ぐために借金抱えて風俗で働いたり、
自殺したりといったことも、
ビジュアル系音楽業界では結構あったという。

「僕自身もボロボロになるまでやっていた。
ライブ中にひたいをわって血を流すだとか、
観客のケータイ電話をぶん投げるとか、
今から考えればおかしな行動だけど、
常識外のパフォーマンスをすることが、
客を熱狂させる、唯一の手段になっていた」

17歳から23歳までビジュアル系バンド活動に明け暮れた。
最後の方は自分自身の心も体もボロボロだった。
このままでは死んでしまう。
自分もメンバーもファンも誰一人幸せになっていない。
やればやるほどみんなが不幸になっていく。

「音楽って人を幸せにするためのものではないのか?」

金子さんは23歳で、
このおかしなビジュアル系バンド業界から離れる決意をした。

音楽の勉強をきちんとしようと、
バンド活動をしながら音大にも通っていたが、
学校で行う授業の意味のなさを感じていた。
あと1年通えば卒業できるのに大学をやめた。
「意味がないといいながら卒業するって自己矛盾じゃないですか。
意味がないならやめるべきだと思った」

戻ってきた1年分の授業料。
それを生活費に、今後の人生どうしたらよいのか、
音楽とどう向き合っていけばよいのか、
しばらく充電期間にしようと考えた。

そんな矢先に東日本大震災が起きた。
知り合いに誘われ、
4月上旬に被災地(宮城県石巻市)を訪れることになった。
バイト先も親も危険だからと被災地に行くことを反対した。

でもそこで3日間、ボランティアをして、
被災地を見て、被災者と出会うことで、
大きな気づきがあった。

「こんなにも大きな被害にあっているのに、
被災地で助け合うのが当たり前という光景を見て、
人と人との関わり方はこうあるべきだと気づきました」

長らく身を置いたビジュアル系バンド業界は、
事務所もライブハウスもバンドマンもファンも、
助け合いでともに成長していくのではなく、
限られたパイを奪い合って共倒れしていく、
すさんだ関係だった。
それが当たり前となっていた業界に見切りをつけ、
でもどうやって音楽と関わっていけばいいのか、
わからなくなった彼にとって、
被災地での助け合いの関係は、
あまりにもシンプルな人と人との関わり方だった。

「その時に“翼”という考えに思いが至ったんです。
お互いがお互いの翼になる。
自分が誰かを助けることで、他の人が飛べるようになる翼になる。
それと同時に、相乗効果で他の人が自分の翼にもなってくれる。
先行きのない業界で共倒れしていくような、
そんなところで懸命にお金と時間と労力を使うのではなく、
この先、広がりが感じられる方向に、
お金と時間と労力を使うべきではないかと思いました」

2011年4月に訪れた石巻の保育所の人とつながりを持つようになり、
2011年6月にも再び訪れ、お手伝いをした。
親しくなった保育所の先生に、
以前、音楽活動をしていたことを話したら、
「今度、子供たちのために音楽やってよ」と言われた。

それを機に思った。
また違った形で音楽をやりたいなと。
みんなが不幸になる音楽ではなく、
ともに助け合い、ともに互いの翼になれるような、
音楽活動をしていこうと。

しかし被災地の深刻な被害状況を見るに、
2011年の段階で被災地で音楽をやるというのは、
優先順位が低い活動であると感じて、行わなかった。
でも先生からの要望もあり、
また1年が過ぎて物質的な支援はひと段落し、
心の支援に移ってきていることや、
被災地は1年、2年でどうにかなるレベルの話ではなく、
最低でも10年は復興に時間はかかるので、
長く細かく継続的な支援が必要と感じた金子さんは、
今年7月に保育所で音楽をすることにした。
今年結成した「Wing Swings」という、
新たなバンドのメンバーを連れて。
e0171573_2301798.jpg

「自分の周囲には被災地に行ったことがない人が多い。
今後も被災地に関わっていくことの重要性や、
大それたことをしなくても、
誰もが被災地で助けになれることを知ってほしくて、
7月にはバンドのメンバーやスタッフを連れて、
被災地に行くことにした」

それは金子さん自身が、
被災地でお互いがお互いの翼になれるという、
人と人との関わり方を見つめ直せたことが、
新たな音楽活動の根幹をなしているからだろう。
そういう気持ちを、被災地に行ったことがない、
バンドのメンバーやスタッフにも感じてほしいと。

でもだからといって大人数連れていくことはしないという。
「今回は保育所の子供たちのために音楽をするだけ。
でもそこにファンとか関係ない人たちまでもが、
いっぱい来てしまうと、
何の活動なのかよくわからなくなってしまう」
その辺の線引きをきちんとしていることに好感を覚えた。

ファンを引き連れて、
被災地でコンサートみたいなことをしたら、
それは被災者を支援するのではなく、
自分たちが単に被災地で楽しむだけの、
イベントに過ぎなくなってしまう。

やみくもにただ被災地で、
誰もが来れるオープンなイベントを開催してライブをやると、
支援みたいに見えるという錯覚のようなことではなく、
保育所の先生からの要請のもと、
保育所の子供たちのためだけにやるという、
対象がはっきししていることもいいと思った。

「音楽をして何になるわけではないかもしれないけれど、
1人でも子供が笑ってくれたらそれでいいんです。
一瞬でも楽しい気持ち、明るい気持ち、
ポジティブな気持ちを持ってくれればそれでいい」

互いが互いの翼になるという意味では、
今後の音楽活動の理想的な形は、
「バンドの法人化」だと金子さんは言う。

「バンドを神格化させるようなおかしな関係ではなく、
バンドとファンが同じ視線で、
互いに助け合い、互いに成長しあうのなら、
バンドの法人化が一番。
ファンに株主になってもらえればいい。
それが理想的な姿だと思う」

しかも今はインターネットがある。
「Youtubeに動画をアップし、収益を得ることもできる。
誰でもデータを直販できるGumroadもある。
CD作らなくてもiTuneを使えば、
全世界に配信・販売することもできる」

金子さんの話を聞いていると、
メジャーを辞めて会社を立ち上げ、
無料新曲配信サイト「フリクル」をオープンした、
メリディアンローグの話を思い出す。
今、真剣に音楽活動をやっている人たちにとって、
業界の問題点とたどり着くべき解決策は、
同じような結論になるのかもしれない。

今、いろんな業界が変わるべき時に来ている。
しかし変わりたくない多くの小市民と、
既得権益を手放したくない層が結託し、
新しい動きをつぶし、
なんとか古い体質を維持しようと懸命になっている。
でももう古い体質で日本が立ち行かなくなっているのは明らかだ。
日本社会は根本的にモデルチェンジしなくてはならない。
特にその多くの矛盾を抱えて崩壊スピードが早いのが、
音楽業界なんだと思う。

互いが互いを助け合う翼というコンセプトをテーマに、
新たな音楽活動を始めた金子さんに今後も注目していきたい。
7月の石巻・保育所支援活動にも同行取材する予定です。

※6月2日に行われたライブにも行ってきました。
e0171573_2304074.jpg
e0171573_2304876.jpg
e0171573_2305637.jpg


Wing Swingsホームページ
http://wingswings.web.fc2.com/

Wing Swings楽曲
・ぼくらのたびだちのうた
http://www.youtube.com/watch?v=JRWA1hheNPE&list=FLBkkHeIgoWwhNOZreRfqqZw&

・fleeting dream
http://www.youtube.com/watch?v=L9oZdaxJKyE&list=FLBkkHeIgoWwhNOZreRfqqZw&

・音楽業界の構造改革~メリディアンローグ・インタビュー
http://kasakoblog.exblog.jp/14395230/

かさこワールド
http://www.kasako.com/


もし何かAmazonで買い物する方いらっしゃれば、
下記よりお願いできれば助かります。
Amazon


by kasakoblog | 2012-06-08 23:01 | 音楽


<< インド写真      企画会議だけで売れる商品は作れない >>