2013年 02月 23日
日本企業の病理がよくわかる良書「個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年」
非常におもしろい本「個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年」池田信太朗著。
ややローソンの宣伝色が臭く、
賛美しすぎなところが鼻につく部分もあるかもしれないが、
その点を差し引いても、日本企業のあり方、組織のあり方を考える上で、
非常に参考になる良書。

非効率な部分があまりに多く、組織が腐りきっていて、
社員の士気も低く、ダメダメだったローソンに、
2002年、三菱商事からローソンの社長として就任した、
新浪剛史氏がいかに組織を改革していったかが、
詳細に書いてある。

この本を読んで思うのは、どうしようもない会社病理は、
ローソンだけでなく、今の多くの企業にあてはまるのではないかということ。
お客様のために役立つことで利益が上がるのが、
会社の原点にもかかわらず、客のためになることより、
社内の権力闘争や部門のメンツ、上司の顔色ばかりうかがい、
現場をろくに知らずに、会社の論理で作られた、
どうしようもない商品ばかりが開発されたりする。

ローソンでは新浪氏の社長就任のおかげで、
トップダウンで変えていき、うまくいったのだが、
それでも社内の抵抗はすさまじく、
いかに腐った組織を変えていくのが難しいかを思い知らされる。

またローソンの改革で大きな特徴は、
フランチャイズの位置づけだ。
改革の肝はフランチャイズのオーナーにどんどん権限を移譲し、
店自らを考える組織に生まれ変わらせること。
これがうまくいった理由の1つだということがわかる。

ただ普通はフランチャイズに権限移譲なんかしない。
なぜなら本体の存在意義がなくなってしまうからだ。
だから多くの組織では本体が一元的に権限を掌握し、
中央集権的なピラミッド組織を作り上げ、
現場は頭脳のない手足でいいという軍隊的な組織体系になる。

現場の末端が自分で考え、勝手に動かれては困る。
上の言うことに疑問を持たず、ハイハイ聞くイエスマンがいればそれでいい。
もちろんそれは1つの組織戦略として、うまく機能する場合もあるだろうが、
今の時代はむしろそのデメリットの方が大きいのではないか。
現場を知らない上の人たちが机上の空論で戦略を練り、
現場を知らない間接部門が自分たちの予算や権限維持のために、
社内政争に明け暮れた結果、出されたどうしようもない商品や戦略を、
現場に押しつけ、結果売れず、
でもその売れない原因を現場の気合や根性のなさと糾弾し、
少ない利益を役に立たないろくでなしの上の人間や、
間接部門の連中だけが吸い上げ、余計、現場は疲弊し、
客がどんどん離れていくという悪循環を招いているのだ。

この点、ローソン新浪氏の改革は、
社員にしてもフランチャイズにしても、
末端の現場こそが一番の最前線であり、
だからこそそこに権限を与え、
現場の人間が上からの命令を聞くのではなく、
自分の頭で考え、自分でいいと思ったことを、
実行できる環境を整えることに注力している様子がよくわかる。

またこれも日本企業の病理の大きな1つだが、
組織が縦関係のヒエラルキーになっていて、
横同士の連携がないため、
重複する非効率な業務があったりして、
生産性や効率性を著しく下げているわけだが、
そういう非効率的な組織体系にもメスを入れている。
アホみたいに価格競争や賃金カット、
新商品の乱発をする前に、
無駄なコスト削減は民間企業でもいくらでもあるということが、
この本を読むとよくわかる。

業界の常識は世間の非常識であることを、
的確な顧客カードのデータ管理で浮き彫りにしていることも、
非常におもしろい。

現場を知らないお偉い人たちや、
アバウトな感覚でしか客を把握していない現場がそろって、
新商品神話にしがみつく。
コンビニの売上を上げるには、
話題となるような新商品を、
ひっきりなしに発売することが重要だと勘違いしていたのだ。

しかし顧客調査をしっかりしたら、
実はその業界の常識は間違っていた。
客は話題の新商品を求めてコンビニに行くわけではなく、
欲しい商品を求めて買いにくることがわかった。
新商品競争ばかりに目を奪われた結果、
狭い棚には古い商品がどんどんなくなってしまう。

するとその古い商品を買いたいと思っていた客は、
商品がないから、だんだんとそのコンビニに寄りつかなくなる。
目新しいものばかりを求めてコンビニに来るわけではなく、
普段の生活の中で自分がお気に入りのいつもの商品を求めて、
買いに来る客が多いことがわかった時に、
過剰な新商品競争は無駄金使って客を離れさせる、
逆効果な戦略であることがわかる。

これなんかもコンビニ以外でもあてはまると思う。
家電にせよ外食にせよ、
企業の存在意義は新商品の発売にあると思い込み、
次から次へと新商品を出す。
いいと思っても、その新商品はすぐに消えてしまうし、
そもそも商品サイクルがあまりに早いので、
逆に買う気をなくしてしまう。
「どうせまたすぐ新商品出すんでしょ」
「また似たような新商品か」

完全に現場や客の状況をわかっていない、
机上の空論戦略だ。
でも未だにそんなことしている日本企業って、
たくさんあるじゃないですか。
ケータイとか家電とか季節ごとにモデルを出す意味が、
私にはまったくわからない。
iPhoneが春モデル、夏モデルみたいに、
数ヶ月で新しいものを出すか?
そんなくだらない短期間のバージョンアップを繰り返しているから、
iPhoneにシェアを奪われてしまうのだろう。

ローソンの改革を通して見えてくるのは、
今の日本企業にはびこる組織の病理。
なぜ日本企業が衰退しているのか、
その原因がこの本を通してよくわかる。

でも思う。
改革なんて日本で社内ではできないのだ。
ローソンの新浪氏にしても、
日産自動車のゴーン氏にしても、
最近でいえばJALの稲盛氏にしても、
腐った日本の組織を改革できるのは、
圧倒的なリーダーシップ力を持った外様にしかできない。

思えばまだ日本の政治も官僚組織も、
事故を起こした電力会社も、
外様を入れず、病理のツケを増税や電気代値上げでごまかせるがゆえに、
腐った組織のまま延命でき、
結果、サービスを享受する国民に大迷惑をかけ続けている。
純粋な民間企業なら客からそっぽを向かれてしまえば、
自業自得で潰れるだけだからそれでいいが、
政治や行政や電気はそういうわけにはいかない。

外様による改革がないと、
企業も政治も再生できないのかなという皮肉さを、
この本を読んで改めて認識させられた。

おすすめの本です。
ローソンがどうのというより、
自分の働いている企業はどうだろうか?という観点で、
この本を読んでみるとおもしろいと思います。

「個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年」池田信太朗著


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by kasakoblog | 2013-02-23 11:43 | 書評・映画評


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