2013年 02月 24日
教師だけが悪いのか?教師バッシングで凶暴化する生徒・親
教師の体罰問題が大きく取り上げられ、
何もかもが教師が悪いという風潮があるが、
ぜひ広く学校、教育現場の問題を考える上で、読んでほしいのが、
現役教師が昨年夏に出版した「高校事件ファイル」和田慎市著だ。

非行生徒の厳しい教育指導ではなく、
勝利至上主義のための、大人の自己満足のための体罰が横行し、
かつそれを隠蔽しようとする学校が多いことから、
今、教師体罰問題が大きな問題になっている。

また体罰問題だけでなく、
生徒によるいじめ自殺が問題になり、
これまた責任逃れ、隠蔽体質の学校のあり方が問題になっている。

それはそれとして大いに問題だが、
すべて教師が悪いという風潮から、教師が指導に萎縮し、
結果として、凶悪犯罪を行う生徒が増えても、
「犯罪捜査」や「教育的指導」ができず、
被害者生徒を泣き寝入りさせる他ない状況に追い込んだり、
また教師が悪いわけではなく、むしろ生徒が悪いのに、
言いがかりともいえるモンスターペアレントが、
「マスコミに訴える!」「体罰だ!」と騒ぎたて、
余計に教師がろくな指導もできず、
学校の荒廃が進んでいる実態もある。

そんな状況がよく描かれているのが、
この「高校事件ファイル」和田慎市著だ。

まあすさまじい事件の数々。
大人顔負けの犯罪のオンパレードだ。
この筆者=先生が書いている話のほとんどが教育困難校ゆえ、
一般の高校もこうだとはもちろん言えないにしても、
生徒や親の横暴さはすさまじいものがある。

学校で事件が起きれば、
いや学校外でも生徒が事件を起こせば、
その生徒指導のすべての責任を教師に押しつける雰囲気がある。
生徒が悪い、親が悪い、注意しない地域が悪い、
なんてことよりもまず何より、
教師が悪いということになる。
こうすることで四方八方が丸く収まるからだろう。
「教師は聖職だ!」なんていって叩きやすい存在だからだ。

ところがこの本でも書かれているように、
いざ教師が事件の捜査や指導をしようとすると困難を伴う。
教師バッシングの風潮から、教師の権威も権限もまるでない。
ましてや犯罪行為を行う生徒やその親が、
まともに話を聞くわけがない。

さらにこの本で紹介されている事例にいくつかあるように、
被害の訴え自体が狂言の可能性もあり、
それが本当に起きたことなのか、
加害生徒、被害生徒、周辺生徒への聞き込みの困難さが伺える。

ただ当たり前の話だが教師は犯罪捜査のプロ=警察ではない。
だからできることにも限界がある。
少しでも厳しい指導をしようものなら、
体罰だと訴えられる可能性もあり、
だからといって手加減すれば、
生徒や親は教師をなめきり、犯罪行為を認めない。

この本にも随所に見受けられるように、
犯罪行為がはっきりしたとしても、厳しい指導をすれば、
加害生徒や親が騒ぎ、マスコミが教師バッシングをおもしろがり、
事実関係はともなく、大きな問題として取り上げられる恐怖感は、
教師には相当根強いようだ。

するとどうなるか。
教師は被害生徒をなだめすかし、大ごとにさせないようにする。
加害生徒に厳しい教育的指導はしない。
というかできれば事件には突っ込みたくない。
うやむやにする。
こうしてますます犯罪生徒やモンスターペアレントが勢いをまし、
学校の荒廃が進んでいくのだろう。

この著者はこうした問題を真正面に受け止め、
なんとか解決しようと、奮闘している様子が本書から読み取れるが、
こうした「熱血指導」が報われず、
むしろ生徒や親から訴えられる恐れを感じ、
苦悩している様子がよくわかる。
実際に訴えられたこともあるようだ。

マスコミと世間が生み出す、
すべては教師のせいという風潮により、教師はますます萎縮する。
当たり前の話だ。
先生は聖人君子でも神様でもない。
学校に勤務して給料をもらい家族を養う、
「サラリーマン」に過ぎないのだから、
自分の首をかけてまで熱血指導や問題解決なんかしたくない。

凶悪犯罪を行う生徒たち。
それをすべて教師のせいにするのは無理がある。
著者が指摘しているように、
問題を起こす生徒の多くは、家庭環境があまりに悪すぎる。
親がまともな大人でない。
まともでない親から育った生徒を、
権威も権限もなく、厳しい指導をすれば体罰と訴えられ、
職を失いかねない教師が指導できるわけがない。
どうせ3年。いなくなるのを待つ方が懸命だ。

学校で起きる問題をすべて教師の力量不足のせいにするのはおかしい。
著者が書いているように、
大人の拝金主義、過度な個人主義、規範意識の低下、
学校はもちろん、家庭や地域社会の教育力の低下といった、
社会環境の変化が、子供の規範意識の低下につながり、
凶悪な犯罪や陰湿ないじめにつながっている。
そしてそれをすべて学校・教師のせいにしようとするから、
余計に学校は隠蔽しようとする悪循環になっているのではないか。

「テレビドラマのようにワルがすぐに心を入れ替えて更生するケースは、
残念ながら実際の現場ではさほど多くはない」(本書より)

私たちは自分たちの教育責任は放棄し、
自分たちの規範意識のない行動は棚にあげ、
熱血教師ドラマのイメージにとらわれているのか、
教師を万能な指導者と勘違いし、
それができないと問題が起きたことは、
すべて教師に押しつけるという態度に偏りすぎていないか。

無論、今、問題になっているような、
非行生徒の指導でもなく、
自分の地位や学校の地位を維持するために、
悪いことをしたわけでもない生徒に、
暴力ふるって勝利至上主義を強要するような、
体罰教師や体罰容認学校は問題外だとしても、
でも結局はそういうのを容認している親も多く、
教師だけバッシングしても、学校の悲劇はなくならない。

子供社会は大人社会の鏡。
大人社会が歪んでいる。大人が親が歪んでいる。
だから子供が歪む。
それを指導しないのは教師や学校だけのせいではない。
大人社会全体の問題だと思う。

教師バッシングという責任逃れを盾に、
思考停止に陥ってしまえば、
いじめ、体罰、非行、少年犯罪などはなくならない。

教師が悪いという前に、
教師側から見た学校現場がどうなっているのか、
本書を読んでみるといいと思う。

・「実録高校生事件ファイル」和田慎市著

・現役教師の嘆き~体罰と増加する生徒の校内暴力
http://kasakoblog.exblog.jp/19501286

※ちなみにこの本を出している出版社は、たまたま奇遇にも、
私が出した「検証・新ボランティア元年―被災地のリアルとボランティアの功罪」と一緒の出版社。

この出版社は実体験に基づく社会問題の内容の、
企画・持ち込みについて歓迎してくれる傾向にあり、
過去に著書がなくても、内容がよければ出版してくれる可能性の高い良識ある出版社です。
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by kasakoblog | 2013-02-24 23:45 | 書評・映画評


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