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20代の女の子が動物を解体し、新米猟師になった理由~畠山千春(ちはる)さんに会ってきた

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「うさぎはかわいい味がした。うさぎ狩りと解体してきたよ。」
というブログを2013年4月にアップし、大炎上した記事を覚えている人も多いのではないか。
ブログ記事を書いたのはちはるさん(現在29歳)。
今まで関東で普通に仕事をしていた、どこにでもいる普通の女の子だったが、
2013年に福岡の糸島に移住し、今はシェアハウスを運営しながら、
狩猟免許を取得し、新米猟師をしながら、動物の解体ワークショップをしたり、
ライターとして暮らしのあり方などについて情報発信や執筆活動を行っている。
なぜ彼女は解体をはじめて、その様子をブログでアップしているのか。
なぜ田舎に移住し、狩猟免許を取得したのか。
2015年2月11日に移住先の糸島のシェアハウスに行き、話を聞いてきた。

■1:ずっとソーシャル畑を歩む
ちはるさんはもともと環境問題に興味関心があったようだ。
大学は法政大学人間環境学部。
環境について興味があったからだ。

ただ環境問題を伝えることの難しさを感じた。
例えば「1日に何百人の子供がAという病気で亡くなっています」
(だから金くれ)といったような、
ネガティブな感情による関心のひきつけ方では限界があるのではないか。
また自分の生活を犠牲にして環境問題や社会活動に取り組むことにも、
学生時代の頃から違和感を覚えていたようだ。
なぜなら自分がつらいと活動が継続できなくなってしまうからだ。

環境問題をポジティブな気持ちで、
楽しく取り組む方法はないだろうかと思っていたところ、
出会ったのが、ウェブマガジン「greenz.jp」。
インターンして、環境問題を楽しくわかりやすく伝える方法を目の当たりにした。
また新しいライフスタイルをつくるべく、様々な活動をしている人や情報にも出会えた。
いつかこんな暮らしを自分もしてみたいと思える、
ロールモデルとなるような人がいっぱいいた。

大学卒業後は、NGO/NPOの支援や映画配給事業を行う会社に就職。
働きながら、いつか自分も自分で暮らしをつくる、
自給自足ができる生活をしたいと漠然と思っていたという。

転機が訪れたのは2011年3月11日の東日本大震災。
その時は会社のあった横浜にいた。
度重なる余震の恐怖もさることながら、
今まで何不自由のなかった生活が一変し、
スーパーやコンビニでは物が買い占められ、
お金よりも食料や水や物があることの方が重要であることに気づかされた。
いかに今まで自分の暮らしを無責任に他人まかせにしていたのかと痛切に感じた。

震災が起きた直後は、会社の仕事で被災地支援を行うNGO/NPO支援の活動を行っていた。
そのためひっきりなしに東北での生々しい情報が入ってくる。
被災地のことを知れば知るほど、今の暮らしに危機感を覚えた。

食べ物にしろエネルギーにしろ、生きるために必要な重要なことは、
全部、お金を払って他人にお願いしている。
でもそれがどのような過程を経て、自分の口に入ったり、
自分が使っているのかをほとんど知らなかった。

ここままの暮らしではまずい。

震災後、父親は家族にこんな話をしたという。
「家族を守りたいなら、まず自分自身が生き抜くこと」
そうだ。自分の暮らしは自分でつくろう。
どんなことが起きても生き抜ける自分になろう。
前々からいつかしたいと思っていた自給自足的な暮らしに切り替えよう。
そう、決意した。

■2:うさぎ解体記事の炎上でわかった命が見えない人たち
震災直後、会社が横浜から千葉のいすみ市に引っ越すことになった。
今までの都会生活から田舎暮らしに変わり、
田舎暮らしの良さやコミュニティの大切さを肌で感じた。

こうした中、自分で自分の暮らしをつくるため、
様々なことにチャレンジするようになった。
その1つが解体だ。

自給自足生活をするには食べ物が何より必要。
でも今まで何気なく食べている食べ物が、
どのような過程を経て自分の口に入っているかがわからない。

野菜やお米は畑や田んぼを見れば想像がつく。
でも肉はそうではない。

そこでちはるさんは自分で暮らしをつくる手始めとして、
特に今の生活では見えにくくなっている肉ができる過程=解体を、
自分で体験してみようと考えた。

生まれて初めて鶏を絞めたのは2011年10月のこと。
25歳まで鶏をだっこしたことすらない現代っ子が、
自分のこの手で鶏を絞めて、解体し、その肉を食べるまで挑戦した。
その時の体験についてはちはるさんの著書「わたし、解体はじめました」を、
読んでいただければと思うのだが、
命を奪ったことへの恐怖もあり、
絞めてから肉を食べるまでの作業の大変さを知り、
肉を食べることは命を食べるということに気づき、
だからこそ感謝しなければならないという強く感じた。

多くの人はスーパーで肉を買ってきて調理して食べる時も、外食で肉を食べる時も、
生きたものを殺して命をいただいていると感覚を持っていないのではないか。
なぜか。
それは大量消費・大量生産の中、分業化・効率化が進み、
食べ物ができるまでの過程が見えなくなっているからだ。

こんな大切なことに今まで気づいていなかったのか。

生きることとは何か、食べることとは何か、
命の大切さ、食べることの尊さを知るためにも、
食べ物ができるまでの過程を多くの人に「見える化」することで、
食べ物に対する意識や暮らし方が変わるのではないか。
自分が変わったように。

そこでちはるさんはブログに解体の様子をアップするように。
動物を解体して肉を食べているという行為を、
より多くの人に身近に感じてもらえるよう、
どこにでもいる都会の若い女の子=自分を登場させて、ブログを書いた。

2011年10月に鶏の解体。
2011年12月に鹿の解体。
2012年1月にイノシシの解体。
2012年1月に鴨の解体。

その様子をブログにアップした。

そして2013年4月。
うさぎ狩りとうさぎを解体して食べる様子を、
「うさぎはかわいい味がした。うさぎ狩りと解体してきたよ。」
と題し、自分がうさぎを持った写真などをアップした。

しかしこの記事が大炎上となった。
「この子は狂ってる」「命を軽んじてる」
「殺すこと自体に快楽を感じる異常者」

私はこの記事がネット上で話題になった時に、
このような否定的な反応が多いことに実に驚いた。

一言で言うなら、
「おまえら、何、食ってんだよ!」と。

私がそんな風に思えたのは写真家で作家の藤原新也さんの影響が大きい。
藤原さんの著書「東京漂流」の中に「豚は夜運べ」という話があり、
生きることや死ぬこと、命が見えなくなっていること、
むしろ意図的に隠されていることに疑問を呈していて、
はっとさせられたことがあったからだ。

動物を殺して食べることが残酷なのか?
我々は動物を殺して食べることで生きている。
動物を食べないという人もいるけど、植物だって立派な生き物だ。
生き物を殺して生きている。
一体、自分を何様だと思っているのだ。
自分が何によって生かされているかがわかっていない。

先日、ミドリムシの培養・販売を行っている、
ユーグレナの社長がこんな話をしていたのが印象的だった。

なぜ動物は植物と違って動けるのか?
それは生き物を食べるためだ。
植物と違って光合成によって栄養を作れない。
だから栄養を補給するために動いて生き物をとって食べなければいけない。


まさにその通りだと思う。
臭いものにフタをして、自分が潔癖な人間様になったつもりでも所詮、人間は動物。
生き物を殺して食べなければ生きてはいけないのだ。

しかしきれいごとばかりが世に喧伝され、
動物としての残酷な行為が覆い隠されてしまった。
だからこそちはるさんは危機を感じ、
あえて自分を出し、一人称で解体体験レポートを書いた。

それについて「残酷」だの「命を軽んじている」などという批判がくること自体、
いかに今の人たちが、自分が食べている物がどのような過程でできているのか、
知らないという証ではないかと私は思う。

こうしたことを象徴するかのような「笑い話」がある。
つい先日、あるファーストフード店で、
ハンバーガーを食べていた女子高生たちが、ちはるさんの話をしていた。
「うさぎを狩って解体して食べるなんて残酷だよね」と。

たまたまそこに居合わせたのが、私の知人。
知人はちはるさんのことを知っていたので、
思わず、その女子高生グループに説教したという。

「あんたたちね、自分が今、何、食べてるのかわかってるの?
ハンバーガー食べてるんでしょ?
動物を殺した肉を食べてるんだよ。
つまりうさぎを殺して食べるとの一緒。
そんなこともわからないで、うさぎ狩りをした人を残酷だなんて、
批判するのはおかしい」

自分が口にしているものがどのようにしてできているのか、
わからなくなっている人がいかに多いかがわかるエピソードだと思う。
女子高生たちはその話にはっとし、批判していたことを反省したという。
つまり、知らないだけで、誰かが教えてくれれば気づくのだ。

ちなみにちはるさんは基本ベリタリアン的食生活中心で、
肉をしょっちゅう食べているわけではない。
特に解体や狩猟を自分でするようになってからは、
基本、自分で獲って解体したものしか食べないようにしているので、
今は肉を食べる機会は少ないという。
そういう考え方をするようになったのも、
解体や狩猟の大変さを知ったからだろう。

■3:肉だけでなく、野菜や米、電気をつくる
働いていた会社が横浜から千葉、千葉から福岡へと移転し、
福岡市内に住むことになった。

いつか自給自足的な生活をしたい。
自分で自分の暮らしをつくる生活をしたい。
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どこかこうしたことができる場所はないかと探していたところ、
福岡市内から車で約1時間の場所にある糸島の古民家を借りれることに。
糸島は、海も山もあり、畑も棚田もあり、水も湧き水、
星もきれいという理想的な場所だった。

ただここで1つ問題があった。
会社を辞めるかどうかだ。
福岡市内の会社まで通えないことはない。
でもせっかく田舎暮らしをするのに、
週に5日も都会に出る生活をするのは自分の理想的な暮らしとは言い難い。
しかし会社を辞めたら大きな収入源がなくなってしまう。

でも思う。
食べ物や電気など暮らしのあらゆる部分を他人まかせにしているから、
お金がかかり、その分、お金を稼がなくてはならない。
田舎で暮らし、自分たちの食べるものは畑や田んぼで作り、
肉を食べたい時には猟をすれば、食費をうんと抑えることができる。
電気も自分たちで発電すれば電気代も減らすことができる。
家賃は田舎に暮らせば安くなるし、
シェアハウスにしてみんなで住めばもっと安くなる。

会社を辞めたら生活ができないのではないかと不安に思う人も多いが、
収入を増やすことや維持することより、日々の固定費支出を減らせばいいのに。
そうしたことを実践しているのがちはるさんだ。
自分で食べるものは自分で作る。住居費を減らす。
支出が減れば、収入が減っても生活に支障はない。
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こうしてちはるさんは2013年に会社を辞めて糸島に移住し、シェアハウスをはじめた。
今はシェアハウス運営、畑や田んぼ、狩猟をしながら、
解体ワークショップをしたり、暮らしや食に関する執筆や講演をしたり、
糸島のコワーキングスペースのスタッフとして働くなど、
様々な収入源を持ちながら、自給自足的な生活を実現すべく暮らしている。

・・・・・
生きることとは食べること。
人間は食べ物でできている。
でも食べることが他人まかせになってしまい、
市場経済に組み込まれてしまったために、
大量生産・大量消費をするために、食の安全が揺らいでいる。
そのことに気づき、食べ物について真剣に考える人が増えてきている。

そのためには食べ物ができる過程を知らなければならない。
中でもその過程が隠されてきた動物の狩猟・解体に着目し、
ちはるさんがブログでアップしてきたことは、
今まで隠されてきただけに、批判的な反応も多いが、
誰かが伝えなければならない大切なことだと思う。

ただ本当は鶏を絞めて食べることぐらい、
義務教育でやるべきことなんだろうけど、そんなことがないために、
過程を見える化したことに対して、
残酷だなどというおかしな批判をする人もいるのだろう。

でも普通のどこにでもいる若い女の子がブログでアップしたことで、
きっと多くの人が食べることや今の暮らしについて、
考え直すきっかけになっているのではないか。
またちはるさんの解体ワークショップに参加した人は、
より深く、食べること、生きることを考えられるのではないか。

東日本大震災から4年が過ぎ、次第にその時の危機感が風化しつつあるものの、
大量生産・大量消費によってグローバル分業されている社会の脆さは、
いつまた露呈するかもわからない。

今の暮らしのあり方を見つめ直すきっかけを提供するちはるさんの活動は、
くだらない批判なんかに負けず、情報発信を続けていってほしいと思う。

・ちはるさんの著書「わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり─」

・ぜひ読んでほしい名作。藤原新也著「東京漂流」

・ちはるさんのブログ
http://chiharuh.jp/

糸島シェアハウス(現在住人募集中。イベントも随時開催)

・糸島コワーキングスペース「RIZE UP KEYA」
https://www.facebook.com/itoshimalifedesign

<今後のイベント予定>
・3/1、柳内啓司さんとのコラボイベント
正社員全滅時代を生き抜く!会社を辞めず、『2枚目の名刺』で
好きを仕事にするブログ術&セルフブランディング術
http://www.sanctuarybooks.jp/eventblog/index.php?e=934

・3/7 みそソムリエkeikoさんアドバイザーの代官山コメカフェで飲み会
+みそソムリエkeikoさんのセルフブランディング術についてかさこが聞く!
詳細
https://www.facebook.com/events/1415213675444168/

3/19、仙台で「好きを仕事にするブログ術&セルフブランディング術」講義開催!
http://kasakoblog.exblog.jp/22819336/

4/16に宇都宮で「好きを仕事にするブログ術&セルフブランディング術」講義開催決定!
http://kasakoblog.exblog.jp/22825084/

4/18、大阪で「好きを仕事にするブログ術&セルフブランディング術」講義開催!
http://kasakoblog.exblog.jp/22820592/

4/25、福岡で「好きを仕事にするブログ術&セルフブランディング術」講義開催!
http://kasakoblog.exblog.jp/22820596/

・4/1~かさこ塾6期生は満席となりました。現在はキャンセル待ちの状況です。
http://www.sanctuarybooks.jp/eventblog/index.php?e=739

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by kasakoblog | 2015-02-21 22:01 | 生き方

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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