好きを仕事にする大人塾「かさこ塾」塾長・カメライター・セルフマガジン編集者かさこのブログ

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2002年 11月 01日

731部隊跡をたずねる

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<1>
大連・旅順・瀋陽・長春・ハルピン・青島と11日間の日程で、
取材のためにかなり精力的にあちこち見て回ったわけだが、
訪れた数ある場所の中でも最も印象に残ったのが、
ハルピン郊外にあった、日本の細菌・生物兵器開発部隊、
「731部隊」の建物跡であった。

ハルピンはロシアが建設した、非常にロシア的街で、
ロシア国境の町へも列車でわずか8時間の距離にある。
10月にもかかわらず、最高気温は4度。
年間平均気温がわずか3.5度という極北の地である。

こんなところにまで当時の日本が侵略し占領していた、
ということ自体がすでに驚きであるが、それだけでなく、
この地で日本が、大規模な細菌・生物兵器の開発、
および人体実験を行っていたというのであるから、すさまじい限りである。

もともと東京にあった細菌・生物兵器開発研究所を、
何かあった時に危険であること、実験するための人間が必要であるということで、
1936年、このハルピンに移された。

「人間を食らう魔窟」
地元の人からはそう呼ばれたという。
当時、地元の人々がこの731部隊に連れて行かれ、
おぞましい人体実験がされて、
少なくとも3000人は実験のために殺されたという。
日本の敗戦が濃厚となると、
証拠隠滅のために部隊は施設を爆破して、逃走したという。
そのせいで完全には残ってはいないものの、
わずかだが、当時の実験施設が残っているのである。

たとえば人間の「冷凍実験室」があり、
ただでさえこのくそ寒い場所で、
さらに急速に冷やすための扇風機のようなものを吹きつけて、
人間の冷凍実験なども行っていたらしい。
その他、ペスト菌・コレラ菌・チフス菌にはじまり、
さらには昨年アメリカでニュースになった「炭そ菌」まで培養し、開発していた。
しかもそれをここでの研究成果をもとに実際に中国各地で使用したという。

日本の横暴さ・おぞましさはもちろんのこと、
なぜ人間はそこまでおぞましいことをしなければならなかったのか、
僕は絶望的な気分に襲われた。
「人間は愚かである」ということをこれほど思い知らされる場所はない。

ペスト菌をばらまいてまで他国を征服して、一体どうしようというのか?
それほどまでに戦争や侵略が大事なことになってしまう
人間の愚かさとは一体何だろうか?
しかもそれを70年前の日本人がやったというのであるから、なおのこと考えてしまう。

<2>
そしてさらに驚くべきことだが、日本の敗戦が決まると、
この731部隊での研究資料を、アメリカに売った部隊長・石井四郎は、
軍事裁判を免除され、アメリカから保護を受け、生き延びたという。
またしても「アメリカ」である。
さらに1950年の朝鮮戦争では、
アメリカがこの731部隊の生物兵器を使ったというのである。
アメリカの手段を選ばぬ横暴さと、
それを歴史の表舞台から隠蔽する得意技は、 すでにこの頃から身についていたようだ。
実におぞましい限り。というか許されない罪だよこれは。

一体全体世界はどうなっているのか。
政治は人間の幸福のための手段であるはずが、
権力欲や支配欲や政争道具のために、無実の人々を無差別に殺し続けている。

たとえば北朝鮮の拉致問題を考える時、北朝鮮の核開発が無関係ではないように、
日本が第2次世界大戦中どんなことを朝鮮にしてきたかを知る必要があるし、
アメリカやソ連がどんなことをしてきたかを知った上ではじめて、
今、北朝鮮に対して何をすべきかがわかるのだと思う。

また、アルカイダ・ビンラディンの指示によるテロがどうのと騒ぐ前に、
「正義の戦争」を掲げ、世界の警察官ぶったアメリカが、
日本731部隊の生物兵器を朝鮮で使ったという事実や、
ベトナム戦争しかり、イラクの湾岸戦争での放射能汚染ミサイルの使用しかり、
ソ連との代理戦争のために、
莫大な資金を援助してテロ集団アルカイダおよびビンラディンを支援してきたことしかり、
フセインもビンラディンも殺せず(いや殺さず)、
誤爆によって無実の人々を殺し続けていていることしかり、
そういったことの結果として、世界貿易センタービルにいた何千人もの犠牲者を出し、
バリやフィリピンや世界各地で起こるテロのすべての原因となっているということを考えねばならない。
そうしたら単に「テロはいけない」だとか「フセインやビンラディンを殺せば済む」といった、
短絡的な考えはなくなるはずだ。

<3>
細菌・生物兵器開発施設跡を歩いているのが、ここで行われてきたことを考えると、
なんだか実に恐くなった。
ある種、放射能汚染をしたチェルノブイリ原発跡を歩いているのと
同じことではないかと思ったのである。
しかしこの施設跡の目の前には普通にアパートが建っていて暮らしている人々がいる。
「ここで住んでいて大丈夫なんでしょうかねえ?」
と中国人ガイドでさえ、そのアパートを見てつぶやいたぐらいだ。

僕が訪れた時、ここに60歳過ぎの日本人3、4人が来ていて、
こんなところにまで足を伸ばし、
歴史を探求しようとは実に素晴らしいことじゃないかと思ったものの、
施設跡の看板の前でみんなそろってにこっと笑って記念撮影をした時、
僕は同じ日本人として恥ずかしくなった。
日本人がここで何をやってきたかを考えれば、
スマイルして記念撮影する神経はどう考えても信じられない。
僕でさえ、3年前に中国のデパートで買った、中国人民服風上着をはおり、
少しでも日本人に見えないような工夫をしつつ、
ここに来て、じっとこの施設跡を凝視していたというのに・・・。

過去は過去だが、歴史は形を変え、品を変え、そして人を変え、繰り返す。

このハルピンの731部隊址に、
観光で自分の金払ってわざわざ来る人はなかなかいないだろうから、
修学旅行とかでくればいいんだよな。
何の目的もなく、シンガポールだのオーストラリアだのにいっている
バカチャン高校があるぐらいだから、
そんな意味のない修学旅行ではなくハルピンに行って、
あのおぞましい施設後を覗いたらみたらいいんだ。

多分、あの施設後を見れば、
たとえ普段の生活がどうしようもないヤマンバ女子高生だって、
いろんなこと考えると思いますよ。
それこそ大学入試のくだらん暗記試験やるぐらいなら、
ハルピンに行かせてレポート書かせるのが試験とかにしたらいいんだよ。

ハルピンは新潟と友好都市だとかで、
ハルピン市内の公園に「友好の証」として無駄に金かけて日本庭園とか造ってるんですよ。
きっとそこには、もうそれこそ死語になった「鈴木宗男」みたいな政治家がしきり、
丸紅や三井物産など、外国での事業を不正な行為で食いものにしようという、
薄汚い日本企業がからんでいて、
そういう税金を自分の懐に収める仕組みとして「友好都市」なんていうのを利用して、
無駄なはこもん作ってるんだろうけど、
そんな金あるなら、歴史の勉強のために互いの高校生を互いの国に招待してやって、
ことに日本人にはこの731部隊址に連れていってやればいいわけですよ。
それが本当の意味での「友好都市」っていうんじゃないだろうか。

<4>
歴史を学ぶことによって、単に「過去の反省」をしろなんてくだらんことを言ってるんじゃない。
歴史を知ることで、今の時代が透けてみえるようになる。
今の暗雲立ち込める国際情勢を考えるためには
絶対に歴史・過去の出来事の清算が必要になる。
僕の今の時代認識としては、あの昨年のテロを契機に、
テロと恐慌とそして自然大災害という3本柱の超暗黒時代が始まったばかりだと捉えている。
アメリカが戦争をやめればテロは半減すると書いたが、
そんな矢先に、今度はロシア・モスクワで、
劇場にいる800人を人質に取るという大事件が発生した。
またしてもその原因は、これまでアメリカとやりあってきた「大国」の強圧的仕業であった。

チェチェン紛争について詳しくは知らないが、構図としては独立した地域を、
大国の論理でロシアが戦争して封じ込めようとした反発行為として、
大国とは違って戦争では勝ち目のない人たちが、
唯一自分たちの主張を広く世界にアピールすることができる、
テロに訴えたということと思う。
考えてみれば、アフガニスタンの問題にしても、
もとはソ連が侵攻し、それを阻止しようとしたアメリカが、
自分たちの部隊を出すのは嫌だし、またその口実もないので、
テロ集団アルカイダに莫大な資金援助をさせて、ソ連に対抗させたという、
結局は、アメリカとロシアという2大軍事大国の勝手な思惑のせいで、
世界がはちゃめちゃにされているという、言ってみればただそれだけだ。

731部隊址を訪れ、この悲哀に満ちた場所が放つ瘴気に触れたことによって、
実にいろいろなことを考えさせられた。


by kasakoblog | 2002-11-01 00:47 | 旅行記