
5月に発売した歓楽街写真集の撮影のため、
これまで全国各地の歓楽街や風俗街に行ったのだが、
気になったのが、地方の風俗街が、
廃れているのではないかということ。
昔と比較したわけではないので、
正確なことはわからないが、
地方都市で撮影のために風俗街を探しても、
いかがわしい店が集中した地域が見当たらないのだ。
地方都市の風俗街が廃れているのは、ネットのせいではないか――。
そう思ったのは、風俗街をネットで調べていた時のことだ。
店舗型風俗がなくなり、派遣型風俗ばかりが検索にヒットする。
ネットとケータイがなかった時代、
風俗店の主流は、風俗街を形成する風俗店であったかと思う。
しかし風俗に限らず、どんな商売でもそうだが、
店舗というのは、いろんな意味でリスクもあり、コストもかかる。
立地によって売上が大きく変わってしまう。
店舗維持費がかかる。
客がわざわざ店に出向かなくてはならない。
そこで最近増えているのが、店舗型風俗ではなく派遣型風俗。
客がわざわざ店に行かなくても、
ネットで検索し、「ネット風俗店」に電話をかけ、
ホテルなどに女性を連れてきてもらう。
風俗店を経営する側としても、
客が入りやすそうな、
賃料の高い立地の良い場所である必要はなく、
どこかマンションの1室に店があれば済み、
ことに及ぶのは店ではないから、
店舗スペースの広さもいらず、
ネットや雑誌などで集客して電話をかけてきた客に、
女性を手配するだけで済む。
いわゆるデリバリーヘルスが増えている。
客にとっても店舗にとってもメリットがある、
風俗店の“ネット化”により、
店舗型風俗がどんどんなくなり、
風俗街が廃れているのではないかと。
街からいかがわしい風俗街がなくなることは、
一見いいことのように見えるが、
実態はいかがわしいことがネット化により、
リアル社会から見えなくなっただけだ。
でも実はそちらの方が「不健全」なのではないか。
いかがわしい風俗店に入るのはある程度の勇気がいるだろうが(敷居が高い)、
ネット化になれば、電話で簡単に頼めることから、
風俗への敷居が低くなってしまう。
買う男性も売る女性も“後ろめたさ”が薄れるのではないか。
風俗サービスが行われる場所が店舗なら、
客が犯罪行為に及ぶことはないだろうが、
デリバリーになり完全密室になることで、
薬物、暴力、本番などの“犯罪化”が進むのではないか。
またリアル店舗があれば、社会や警察など、
様々な目にさらされているとの意識が店にはあるから、
ムチャなことはできないと思うが、
ネット化で一般に店が見えずらくなれば、
働く女性や男性客などに対して、
ムチャな行為を強いることが増えるのではないか。
私は、風俗店を全廃すべきなんて、
アホな理想論は持ち合わせてはおらず、
むしろ性犯罪防止などのためにも、
風俗店は存在していた方がいいと思う。
これは極論だが国営の風俗店があったって、
いいんじゃないかとすら思っているぐらい。
ただ時代の流れで、
銀行やスーパーやサラ金や株式投資がネット化するように、
風俗店もネット化しているわけだけど、
いかがわしい店が社会から“見えなくなる”というのは、
むしろ犯罪行為が見えにくくなる危険性も内包しているように思う。
お金を借りるサラ金とよく似ている。
恥ずかしい思いをして店舗に赴き、
恐いおっさんからお金を借りるからこそ、
借金は最小限にしようと思い、
借金はちゃんと返そうと思うわけです。
しかしお金を借りるのが無人化したりネット化したらどうなるか?
安易に借金することが増え、
返済意識も薄れ、金遣いも改まらないのではないか。
風俗店もそれと同じだと思う。
人間は聖人君主じゃない。
汚らわしい欲望にまみれた存在だ。
だからこそ街にいかがわしい風俗街のような存在が、
社会から“見える”ことにより、“在る”ことにより、
必要悪としての最小限の役割を担える。
しかしそれがネット化で社会から見えなくなったら、
欲望に際限がなくなってしまうのではないか。
私はわりとなんでもかんでも、
ネット化社会推進論者だけど、
サラ金とかギャンブルとか風俗とか、
必要悪的存在にネット化は好ましくないと思う。
もはや規制することは難しいのかもしれないが・・・。
写真家としてもいかがわしい風俗街のような被写体が、
廃れゆくことに、一抹の寂しさを思ってしまう。
悪いこと、いかがわしいことの“見える化”が、
必要なんじゃないか。
そんな思いからも、
もしかしたら数年後にはなくなっているかもしれない、
風俗街・歓楽街を写真に撮っておきたいと、写真集を出しました。
ぜひよかったら大型店舗で写真集をのぞいてみてください。
(検索機で著者名「かさこ」で検索するのが、
一番見つけやすいかと思います)

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