村上春樹5年ぶりの書き下ろし新作「1Q84」読みました!
一言で感想言うなら、
おもしろいけど、文庫で十分。
です。
村上春樹的世界観が好きな人は買えば、
存分に楽しめるでしょう。
しかし、単に流行っているから、
大ベストセラーになっているから、
周囲についていくために読んでおかねば、
みたいな理由で読んだ人の多くは、
期待はずれと感じるのではないか。
総ページ1055ページ。
上下巻あわせて3780円。
金額も高いし、読むにも時間がかかる。
それほどの価値があるかといえば、
多くの人にとっては、ない。
100万部売れるほど万人受けする作品では決してない。
私は借りて読んだ。
読んだ後、そこそこおもしろかったなという余韻は残った。
だけど、自分で3780円出して買う本かといったら、
間違いなくノーだろう。
文庫が出たら買って再読してもいいかなとは思うけど。
私はハルキストでもないし、
すべての村上春樹作品を読んでいるわけではないので、
正確なことはわからないけど、
結局、5年ぶりの新作だって、
過去の作品のなんだか繰り返しを読まされているような、
そんな気がしてしまう。
私の個人的好みだが、
「海辺のカフカ」や「アフターダーク」より、
はるかにおもしろい素晴らしい作品ではある。
ただ私が大好きで、ぜひみなさんにも読んでほしいと思う、
「国境の南、太陽の西」「神の子どもたちはみな踊る」「ノルウェイの森」
に比べたら、あまりおもしろいとはいえない。
村上春樹っていい意味でも悪い意味でも特徴があるから、
批判しようと思えばいくらでも批判できるし、
絶賛しようと思えばいくらでも絶賛できる。
そこで絶賛評と批判評を書いてみよう。
<下記、ネタバレしないように注意し、
ほとんど作品の内容には触れないようには書いていますが、
厳密なネタバレが嫌な方はご注意ください>
・絶賛評
現代社会に生きる彷徨える人たち、
とくにちょっとした心の病や、
何かしらのコンプレックスを持った人や、
消極的で行動に移せない人たちにとって、
行動しよう!運命に向かい合って生きていこう!
自分の運命から逃げてはいけない!
みたいな、前向きなメッセージを、
巧妙で不可思議な物語世界を用いて教えてくれる、
現代人が今、最も必要とされる書。
・批判評
結局言いたいことは、
自分の運命から逃げず、前を向いて歩いていけ、
ということだけ。
たったそれだけのことを言うために、
1055ページも使い、3780円もかけて、
音楽や文学のうんちくを聞かされ、
クールな現代人の生活スタイル話を延々読まされ、
人を煙に巻くような、
暗喩だかなんだか知らないけど、
わかったようでちっともわからない、
不思議な世界を延々語られ、
結局は今の世の中でありもしない、
純愛のために生きると、
遠回りしても自分自身に素直になれば、
最終的には結ばれるみたいな、
「そんなこと言わなくてもわかるよ!」
みたいな1点を聞かされるだけの、
ディレッタンティズム的うんちく物語。
※ディレッタンティズム:芸術や学問を趣味や道楽として愛好すること。
絶賛評も批判評もどちらにでも書ける本。
これすなわち村上春樹的物語だから。
<こんな人は読まない方がいいです>
・物語のストーリー重視
→村上春樹に明快なストーリーを期待してはならない。
・テンポ重視派
→上巻はとにかくちんたらしてます。
テンポが早いのが好きな人には、
苛立ちだけでなく怒りすら覚えるかもしれません。
・キャラ重視派
→村上春樹作品に出てくる登場人物は、
全部村上春樹自身です。
はっきりいってどれもキャラは一緒。
クールでかっこつけで、真面目で不器用。
さまざまなユニークなキャラは出てきません。
<こんな人は読むとおもしろいかも>
・脱線気味でも言葉遊びを楽しめる人
ふんだんに遊びの要素が入った、
実に巧みな文章は物語として楽しむというより、
文章自体を楽しみたい人にはよいでしょう。
・物語の結末をはっきりつけてほしくない人
著者がストーリーを完全に描ききってしまうのではなく、
ぼんやりとした世界観だけが描かれ、
なんとなく結論めいたような一歩手前まできて、
あとはどうなったかよくはわからないけど、
その物語の余韻だけが残って、
あとは読者が想像できる楽しみを残している作品ではあります。
そういうのが好きな人は最適!
・ファッションとして読む
村上春樹を読むこと自体が、
ある種のファッションと捉えることもできる。
おもしろい、つまらない関係なく、
村上春樹が何を書いているか、
その知識を得るためだけに読むという読み方も、
この作家の場合にはありなような気がします。
長々と書きましたが、
一言でいうなら、おもしろいけど文庫で十分な本です。
決して100万人から絶賛される本ではない。
書評を見ても、結構、意見がわかれていて、
高い評価にも低い評価にもそれぞれうなづける、
そんなわりと両極端な内容ではあります。
どうしても今、読みたい。
こんな人は読むとおもしろいかも、
にあてはまる人だけ読むとよいかと思います。
かさこアマゾンレビュー(現在レビュアーランキング288位)