みんなに「いい顔」すると失敗するのはなぜか
2009年 08月 26日
だから誰からも見向きもされなくなる。
企業の商品開発でも新サービスでも、
音楽でも書籍でもそうだけど、
売上アップのために、より多くの人に買ってもらおうと、
万人受けの商品開発をすると、たいがい失敗する。
みんなに受ければ、売上があがり、お金が儲かる。
しかしその「みんな」って果たして何なのだろうか?
「みんな」「大衆」「国民」「消費者」「読者」「リスナー」「一般向け」・・・。
さまざまな言葉があり、
大勢をひとくくりにする便利な言葉だけど、
一人一人の趣味志向はまったく違うわけだ。
そのため物を効果的に売るためには、
ターゲットを絞る必要がある。
でもターゲットを絞った商品開発、作品づくりをすれば、
万人に受けるものとはいえなくなり、
どこかの層は切り捨てることになる。
でもそういう特定ターゲットに絞った尖ったものは、
日本的同質社会では嫌がられる傾向がある。
「若者には受けるが高齢者を切り捨てていいのか」
「女性は喜ぶかもしれないが、男性は不快に思うかもしれない」
「都市部の人は売れるが、地方には売れないかもしれない」
そういう万人受け狙いの意見がどこからか出てきて、
その意見を聞いて商品を変えてしまうと、
どのターゲットにも中途半端な、
どっちつかずのどうしようもないものができ、
結果、すべての世代からそっぽを向かれる、
なんてことになりかねない。
情報や物があふれている今、
万人受けという名のもとに、
すべてをソフトケイトした物づくりをすると、
没個性となり、市場の渦の中に埋もれる結果になってしまう。
少数でもいい。
間違いなくそれを欲しているターゲットに役立つ商品を提供する。
たとえ他の属性の人に文句を言われても。
そういう割り切りというのはなかなかできないものだ。
企業の商品開発だけでなく、
音楽、書籍といった分野もそう。
どうしても「万人受けするものにしよう」という、
思考が働いてしまう。
私は9年間、ネットで毎日日記を書き続けているわけだけど、
アクセス数が少なかったりすると、
「万人受けする内容を書いた方がいいのか」とか思ってしまい、
自分がたいして興味がない話題でも、
みんなが興味を持っているから受けるだろう、
なんて書いた日記はたいがい“失敗”する。
アクセス数が多かったとしても、
自分の書きたいものではないし、
自分の興味のあるものではないから、
内容が薄く、ありきたりの内容で、
かえって読者を失うことになりかねない。
そんな問題にぶち当たっていたのが、
昨年メジャーデビューした、メリディアンローグというアーティストだ。
メジャーデビューしたからには数字を残さなくてはならない。
万人受けする曲を作らなくてはならない。
そういう無言・有言のプレッシャーを感じていた。
そんななかで、彼らが選択したのは、
万人受けする曲づくりではなく、
少数でもいいから好きといってもらえる曲づくりだった。
それでできたのが本日発売のシングル「アンバランス/ライカ」だ。
「万人受けするような、口当たりのいいものは、
今の世の中あふれている。
これだけ物があふれているなかで、
主張なきものは淘汰されていくと思うんです。
“一般大衆向け”という名の、
実体のない仮想大衆に向けた、
マーケティング理論で作られた音楽は、
すぐに忘れられていってしまう。
今のメリログを強烈に感じてもらえる、
自己主張の強いものが今回の3曲です」
(ドラム海保さん)
メジャーデビューしたことで、
自分たちの音楽の独自性を失い、
万人受けを狙って“つまらない”“平凡な”スタイルとなり、
埋もれていくアーティストは数多い。
そういう罠に気づき、
メジャーデビュー2作目となる新曲を、
万人受けではなく自分たちのこだわりを貫いたのは、さすがだと思う。
メリディアンローグのメンバー3人に取材し、
そんな話を聞いた時、わが身に置き換えて考えた。
自分は万人受け狙いの文章を書いていないだろうか?
自分は万人受け狙いの写真を撮っていないだろうか?
と。
万人受けという罠にはまり、
自分が好きでもないものを書いたり、撮ったりはしないだろうか。
そんな活動じゃ、自分がいつかイヤになって続かないだろうし、
受け狙いの文章では、文章や写真で、
人に喜んでもらえることはできないんじゃないかと。
今、毎日の私の日記は、
自分が好きなものを書き、好きな写真を撮り、
アップしている。
だから内容には何らかの偏りがあるし、
それをつまらないと思う人もいるかもしれない。
でも気に入ってくれる人の数を
増やそうとばかり気にするあまり、
自分の主張なき、薄っぺらいものにはしたくないと思って、
日々、毎日更新している。
世の中にはいろんな趣味志向の人がいるわけで、
すべての人を満足させるものなんてまずないと思う。
そんな幻想の万人受けばかり狙っていると、
今のマスコミのように、
妙に視聴者に迎合していながら、
どこかピント外れのおかしなものになってしまう。
私が好きなものを書いたり撮っていく活動を続けた結果、
それを気に入ってくれる人が、
ひとりでも多くなれば大変うれしい。
音楽という違う世界ではあれど、
同じような想いで活動している、
メリディアンローグに話を聞いたことで、
自分自身の活動を見直す、
いいきっかけになったと思った。
というわけで、私もさらに活動を活発化させていきます!
9月、12月に写真集が出版予定。
9月発売写真集については、
もうまもなくお知らせできると思います。
私が書いたメリログインタビュー記事は、
メリログ公式サイトのブログで8日間連続でわけてアップされます。
http://meriblo.blog92.fc2.com/
・メリログ新曲「アンバランス/ライカ」