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メディアはいらない?~自分の書き手としての役割

ネットの登場で情報入手法が劇的に変わった。
直接、一次情報を入手することが容易になったのだ。
こうなるとメディアはいらないんじゃないか、
という議論が巻き起こってくる。

情報には2つある。
1つは直接体験した一次情報。
もう1つは誰かから聞いた二次情報。

ネットが登場する以前、
私たちの主たる情報ソースは、
新聞、雑誌、テレビなどの、
メディアによる二次情報に依存していた。

二次情報ゆえ、途中で編集・加工されているし、
ひどい場合には一次情報とは間逆の意味合いに、
歪められていることも多い。

失言と称して、一部の発言のみを抜き出し、
発言者の意図とはまったく異なる意味合いを、
視聴者に植えつけることが未だに平然と行われている。
メディアによる二次情報伝達手段の弊害といえるだろう。

しかしたとえば政治家のホームページで、
ノーカット、編集なしで、
会見の一部始終を見ることができれば、
視聴者はメディアによる意図的な情報操作を排し、
全発言からその真意を読み取ることができるわけだ。

今まで情報伝達手段のキャパシティが限られていたため、
メディアの切り取り情報に依存しなくてはならなかったが、
ネットという“無制限”な容量と、
かつ低コストで情報発信ができるという、
革命的な情報伝達手段の登場で、
一次情報の入手が簡単になりつつあるのだ。

「だったらもうメディアなんかいらないんじゃないか」
という意見もあるが、私はそうはならないと思う。
私たちの時間が無制限であれば、
どんな情報もノーカット、編集なしのもので見れば、
いいんだろうけど、そんなことは時間的に不可能だ。

政治家の会見であれば、重要な点を絞って、
短くまとめたメディアの二次情報はやはり便利ではある。

ネット時代に情報の伝達を媒介するメディアが必要なのか。
そんな疑問を思ったのは、
先日、メリディアンローグという、
アーティストのインタビューを行ったのがきっかけだった。

新曲発売に伴うメンバー3人のインタビュー。
そこで私はふと思った。
私という書き手=メディアはいるのだろうか?
ひょっとして、いらないんじゃないかと。

アーティストが新曲に込めた想いを伝えたいのであれば、
今の時代なら、アーティスト自らが、
自分たちで撮影して動画をアップすることは容易だ。

ファンにとっては、直接アーティストの言葉を聞けるわけで、
わざわざメディアという媒介を通す必要はない。

動画だと見にくいというのであれば、
アーティストがブログなりで、
自分で新曲についての想いを書くこともできる。
プロのライターが書けば“上手い”文章になるかもしれないが、
ファンが求めているのは文章の巧拙ではなく、
アーティストの生の声だとするなら、
やはりメディアはいらないわけだ。

そう考えた時、私がバンドのメンバーにインタビューして、
それを文章にすることに意味があるのか。
ひょっとしたら私の役割はいらないんじゃないか、
とも思ったのだ。

アーティストが直接発する一次情報ではなく、
私というフィルターを通した記事=二次情報が、
必要とされるとするなら、
それはどんな記事だろうかと考えた。

それは情報の受け手=ファンと、
情報の発信者=アーティストの想いをつなげる、
架け橋になるような記事ではないかと思った。

私というメディアは、情報の受け手と発信者の中間に位置し、
しかもどちら側にもつくことができる。
アーティストと直接いろんな話をすることができ、
ライブの舞台裏から傍らにいることもでき、
所属する事務所の方とも話をすることができる、
いわばアーティスト側の立場にも身を置きつつ、
一ファンとして、他のファンと同じように、
ライブを楽しみ、CDを聴き、
ファンとも情報交換できる立場にも身を置ける。

情報の受け手と発信者の両方に身を置ける、
私のような立場だからこそ、
その両者の“溝”をつなぐ役割ができるのではないか。
それがメディアの役割ではないかと。

情報の発信者が話したいことすべてが、
必ずしも情報の受け手の聞きたいことではないし、
情報の受け手が知りたいと思っていることを、
情報の発信者が話してくれるとは限らない。

二者には“溝”があり、
その二者の想いを知ることができるのが、
取材者であり、メディアである。
だからアーティストの一方的な情報発信ではなく、
私というフィルター=メディアが間にわざわざ入って、
記事を書く意味があるんじゃないかと。

情報の発信者と情報の受け手、
その両者の架け橋になる。

それが私の“仕事”ではないか。
そんなことをあらためて思ったインタビューだった。

こうしたインタビューに限らず、
両者の架け橋となるような、
情報発信を続けていきたいなと思っている。

※ちなみに大変ありがたいことに、
メリディアンローグの新曲CDジャケットの、
クレジット欄のSpecial thanksのなかに、
「かさこ」の名前を入れていただきました。

私は仕事としてではなく、
好きでメリディアンローグというバンドの写真を撮り、
記事を書かせてもらっている立場でありながら、
このように名前を入れてくれるというのは、
とてもうれしく思います。

もとをたどれば、メリログとの出会いはmixiがきっかけ。
ネットってすごいなとあらためて思ったけど、
もはや「ネットがすごい」というのは当たり前になりつつあり、
ネットでいい出会いをしていけたらなと思っています。

・メリディアンローグインタビュー記事全文
http://kasakoblog.exblog.jp/11026196/

by kasakoblog | 2009-09-02 00:15 | マスコミ

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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