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テレビの「やらせ」から取材方法を考える

このディレクターはくずだ!
というのは簡単だが、
実際にはかようなことはテレビの世界では、
日常茶飯事に行われている。

NHK「マンガノゲンバ」という番組で、漫画家の本心とは違い、
ディレクターが作ったストーリーに無理にあてはめようと、
誘導尋問が多いことに不快に思った漫画家が、
取材を途中で打ち切り、放送中止を要請したという。

この漫画家さんも事前にきちんと意図を説明してくれれば、
多少なりともディレクターの意に沿ってもいいと、
思ったかもしれないのに、
そういう事前打ち合わせなく、
無理やりやらせに持っていこうとするやり方に、
腹を立てたのだろう。

タレントなどではなく“素人”を取材して番組を作る場合、
当たり前だけど普通に受け答えしたものだけを放送しても、
大概はつまらないものになる。

そこで番組をおもしろくするために、
主に2つの手法が使われる。

1つは事前にディレクターが完璧な台本(ストーリー)を作り、
素人出演者はその台本に沿って役回りを演じる身となる。

もう1つは、編集しまくって、
いいところをつなぎあわせたり、
劇的な効果音をつけたりして、
いかにもおもしろく見せる。

台本ありきの収録にせよ、
編集しまくりの番組作りにせよ、
これを“やらせ”というかは、
程度の問題もあり、内容の改編具合にもよるだろう。

しかしこんなことはテレビでしょっちゅう行われている。
たとえば政治家の一部失言だけを取り上げて批判するやり方などは、
編集しまくりによって、
下手をすると発言の意図とは180度違う風に、
聞こえさせることも簡単だ。

結局、テレビ=動画なんて、
極論すれば“やらせ”=フィクションだと思った方がいい。
動画をおもしろくするためには、
台本や編集によって、
事実に多少なりとも味つけしなくてはいけない。
その味つけがどこまで許されるか。
その程度ややり方が問題なんだと思う。

そのような意味で、今回のディレクターのやり方というのは、
素材(漫画家)が嫌がる味つけを、
無理やり強行しようとしたことから起こったものだろう。
事前にディレクターが伝えれば、
素材(漫画家)も意図を理解し、
多少嫌な味つけ(編集)でも我慢できたかもしれない。

やり方がまずかっただけで、
やっていること(台本ありきの誘導尋問)が、
今のテレビ業界の現状と照らし合わせて、
特にひどいかというとそうでもないだろう。
まあきっと相当傲慢な態度をとったとか、
取材者としてのマナー的な問題が、
大きな問題に発展してしまった原因かもしれないが。

私は普段、紙媒体での取材・執筆をしているが、
テレビほどひどくないにせよ、
似たようなことはある。

こちら側は何らかの意図をもとに、取材対象者を選び、
この取材対象者だったらこんなこと言ってくれるんじゃないか、
と期待して取材を依頼する。

期待通りの答えを得るためには、
1:取材対象者の人選が正しかったか
2:事前に取材対象者にこちらの意図が伝わっているか
3:取材時に期待通りの答えを聞き出せたか
4:編集・執筆時点でこちら側の意図を汲んだコメントを加筆できるか
の4点、ポイントがある。

タレントや著名人の場合、
取材依頼時点で1、2が伝わっていて、取材OKが出れば、
だいたいぶれることはない。

ただ“素人”を取材する場合には、
取材慣れしていない分、
取材時に期待通りのコメントがなくても、
こちらがある程度のシナリオを考え、
事実をねじまげない範囲程度で、
編集・執筆時点でこちらの意図を織り込むこともある。

ただしそうした場合は、
公に公表される前に取材対象者に原稿を確認してもらい、
これでいいかどうかを見てもらう。
そうすれば互いの食い違いトラブルを、
未然に防ぎやすくなる。

しかしテレビなどでは、
ほとんどこうした事前チェックがない。
収録だけされて、あとはどう編集され、
どう放送されるかはわからない場合が多い。

ただこの辺が難しいところで、
じゃあ取材対象者にすべて事前チェックさせたら、
下手をすると取材対象者の広告になってしまう可能性がある。
取材対象者が自分の都合の悪い部分は削除依頼をし、
自分のいいところばかりを強調されたら、
提灯記事のできあがりである。

こうしたことにならないよう、
私が通常書いている原稿記事では、
取材対象者のコメントと、
自分が書きたいコメントは、
読者が見てわかるよう峻別できるようにする。

そうすれば、取材対象者と発言部分は、
たとえ“つまらない”発言であってもそのまま載せ、
それについて異論があれば、そこに書き手の思いを文章で書けば、
取材対象者の認識と取材者側の意図が両論並存することができるし、
読者も取材対象者も誤解なく“事実”がわかるようになる。

まあこうしたことは文章だからできることであって、
テレビみたいな動画というコンテンツでは、
そんなまどろっこしいことをしたら、
映像のおもしろみに欠けるから、
できないのかもしれないが。

ただ1つ言えるのは、
取材する側は素材(取材対象者)を、
最大限に活かすようにし、
取材対象者に敬意を払うことが大事ということ。

今回のディレクターのように、
素材(漫画家)を勝手に切り刻み、
素材の良さが跡形もなく消えてなくなってしまうような、
そういう調理(編集)の仕方をするのは、
調理人(ディレクター)の横暴といっていい。
だったらその素材を使わなければいいじゃないか、
という話になりかねない。

取材する側は素材がなければ何もできない、
いわば他人のふんどしで相撲をとっている人種。
にもかかわらず、自分がまるで神様のように、
この世にある素材を好きなように調理できるという驕りを持つと、
いつしかジャーナリズムの原点を忘れ、
おもしろければそれでいい“やらせ”行為が、
エスカレートすることになるんだと思う。

メディアは取材対象と読者をつなぐ媒体に過ぎないのに、
媒体が神様のようにふるまい、
取材対象者を切り刻み、
読者に特定の考えを植えつけようとするのは、
肥大化したテレビメディアの驕りの何者でもない。

メディアに中立はあり得ないとは思うけど、
媒体制作者が偉そうな口を聞くようになったら、
そのメディアは終わりだと私は思う。

「載せてあげるんだから」
「テレビで紹介してあげるんだから」
という驕りが、こうした傲慢を生むのだと思う。

by kasakoblog | 2009-09-14 21:40 | マスコミ

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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