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技術に溺れて物語がない時代

12月に発売された人気ゲーム、
「ファイナルファンタジー(FF)」の最新作が酷評されている。
私はドラクエ派なのでFFは一切やっていないが、
ドラクエ最新作もひどかったが、
どうもドラクエ最新作の比ではないぐらいひどかったらしい。

レビューを見ると、
「音楽・映像は素晴らしいが、
ストーリーが稚拙で、ゲームとしての楽しさが一切ない」
といった意見がずらりと並ぶ。
「ゲームじゃなくて映像作品だ」
と酷評する意見も多かった。

ゲームに限った話でなく、この20年ぐらい、
デジタル環境が大きく変わった。
技術の発展は目覚しく、
一昔前ではできなかったことが、
パソコンやデジタル機器で簡単にできるようになった。
大容量、高画質、高音質、高速処理など、
20年前には到底できなかったことが、
簡単にできるようになった。

そのせいだろうか、技術に溺れる商品が増えているように思う。
最先端の技術をこれでもかというぐらい使い、
超高機能を売り文句にする。

ところができあがったものは、
消費者のニーズとかけ離れたものになってしまう。
まるで先端技術の押し売りで、
消費者が求めている使いやすさやおもしろさが、
完全に抜け落ちている・・・。
そうなれば消費者は商品の主人ではなく奴隷になってしまう。
商品を使いこなすのではなく、商品に使われるのだ。
だから苦行のような「やらされている感」を感じてしまう。

ゲームでもホームページでも家電製品でも携帯電話でも、
車でもどんな商品でもそうだけど、
はじめに技術ありき、ではなく、
はじめにニーズありき、で商品開発が行われるべきはず。

「こんなことができたら便利なのにな」
「こんなことができたらおもしろいのにな」
という消費者側のニーズを実現するために、技術を使う。

今はそれがないがしろになっている。
というか新しい技術を新製品に使いたくって仕方がない、
役割を細分化された自己満足的クリエーターが増えたからかもしれない。
どんなに高画質で高音質であっても、
ゲームなんだからゲームとしてのおもしろさがなければ、
つまらないわけだけど、
きっと作る側がおもしろさではなく、
ゲームを作る技術の高さをどう入れ込むかに終始した結果ではないか。

デジタル技術が進歩しても、
多くの一般ユーザーはまだそれについていけず、
むしろシンプルなものを求めていることも多い。
ユーザーが使いやすいよう、
新しい技術をあえて使わず、
古い技術で製品を作ることだって、
考えなくてはいけない。

ゲーム、映画、音楽、雑誌、テレビ、俳優など、
上っ面のきれいさだけはあるけど、
そこに物語を感じられるものが少ない。
ろくに“物語”を考えなくても、
技術を使えば簡単にできてしまうからなのか、
手段であるはずの技術を使うことが目的化しているからなのか。
はたまた時代を取り巻く環境が、
人々から物語る力を失わせてしまったのか。
深みのあるものより浅いものを好む傾向があるからなのか。

デジタルがダメで、アナログがいいとか、
そういうつもりはまったくない。
今ある技術や機器は活用すべきだけど、
何かを実現するためにそれを活用するのであって、
活用すること自体が目的ではない。

表現したい、伝えたい核となるものがない。
ユーザーが何を求められているか考えない。
それでデジタル技術でかっこいいもの作りました!
と高い値段で商品を売りつけられても、
だから何?という話になってしまう。

どんなに技術が優れていても、
物語性のないものに魅力は感じにくいし、
感情移入しにくい。

たとえば音楽。
ミスチルにファンが多いのは、
ミスチルの音楽に“物語”があるからだろう。
桜井さんよりうまいボーカルはいっぱいいるだろうし、
ギターやベースでミスチルよりうまい人もいっぱいいるだろう。
でもリスナーは別に技術の良し悪しだけで、
音楽を選んでいるわけではない。

どんなに歌やギターがうまくても、
そこに何らかの“物語”がないと、
「うまいですね」で終わってしまう。

最新技術を振り回す前に、
物語をもっと練り込んでほしい。
そこに時間をかけてほしい。
別に物語を複雑にするとか登場人物を多くするとか、
そういうことではなく、
物語の幹となる部分をしっかり固め、
その上で枝葉をつけていってほしい。
幹がないのに素晴らしい枝葉だけ集めて、
どうだ!と自慢されてもいい木はできないだろう。

物語さえしっかりしていれば、
多少、技術がへぼくたって、そんなに気にならない。
物語なき時代だからこそ、
物語に力のある商品・作品が求められているのではないだろうか。

by kasakoblog | 2010-01-11 01:11 | 一般

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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