1年間の政治家体験
2010年 01月 31日
1年間の“政治家”体験を終えました。
政治家というとかなり大げさですが、マンションの理事です。
うちのマンションは輪番制で順に理事が回ってきて、
1年間、私も理事を担当しました。
といっても6人のうちの1人で、
理事長ではないので、たいした仕事はしてないです。
まったく無関心だったマンションの理事会。
いやいやながら回ってきてしまったので、
やらざるを得なかったものの、とてもいい経験ができた。
まさにマンションの理事会って政治だなと思った。
マンションっていわば1つの小さな国家のようなもの。
マンション住民(国民)から管理費という名の税金をとり、
その税金の使い道を決めるのが理事会の仕事。
たとえば最近物騒な世の中だから、
管理費(税金)使って防犯カメラを設置しようとか、
住民同士の交流を図るために、
クリスマス会をしましょうだとか、
近隣住民からゴミだしについて苦情が来ているから、
それの対応をしようとか(いわば外交)、
管理費を滞納している住民がいるから、どうしようかとか。
政治とは他人から徴収した金の使い道を決めること。
そのような意味でマンション理事会も1つの政治なんだなと。
私の代の理事会はどちらかというと“小さな政府”志向だった。
できるだけ無駄なものには使わず、
どうしても必要な修理や工事にのみお金を使う。
だからそんなにお金の動きも活発ではなかったし、
議案も少なくスムーズだった。
実は前の代の理事会が“大きな政府”志向だった。
マンションを良くするために、
あれもしよう、これもしようと、
いろんな改革案を考え実行する。
改革を実行するには当然金がかかるものもあり、
支出も多かった。
どちらがいいかは非常に難しい。
小さな政府すぎると「何もやってないじゃないか」という話になる。
大きな政府すぎると「そんなことに金かける必要ない」という話になる。
限られた大事な資金を、いかに住民の共通の利益のために使うか。
それが大事だ。
たとえば防犯カメラの設置なら、
金がかかっても多くの住民の利益になるから賛成が多い。
しかし住民の交流を図るためのクリスマス会となると、
「そんなの特定の住民が楽しむものじゃないか」
「子どもがいる家庭だけで楽しむものじゃないか」
と批判の意見も増える。
私自身は国家でもマンションでも、
小さな政府であるべきと考えている。
余計なことをすれば金がかかるし、
すべての住民の利益にならなくなる。
金が無限にあればいろいろやればいいわけだけど、
限られたお金をいろいろ使っちゃったら、
本来使うべき修繕費用などが足りなくなり、
増税=管理費アップといったことにつながりかねない。
ただいろいろやっている大きな政府の方が、
ちゃんと仕事をしているように見える。
その辺を国民=住民がどう見極めるかが難しい。
金を預かり使い道を決めるということは、
特定の理事が自分の利益のために、
不正を行う余地だってある。
たとえば防犯カメラを設置する際、
自分の親戚の会社に頼み、
請求金額を多めにしてキックバックさせるとか、
複数業者がいた場合、
どこの業者にするか決める際、
接待や裏金をくれたところを選ぶとか。
まさに現実政治の世界である。
そういう不正や癒着ができないよう、
理事会だけ勝手に決められないことにはなっている。
国の政治でも同じこと。
不正や癒着ができないようなシステムを作らない限り、
政治家や政党を変えても、
不正や癒着はなくならない。
発覚した時にはあら大変。
無駄遣いしてしまった後で、税金=管理費が足りず、
本来やるべき修繕費に使えないから、増税しましょうとか。
まさに今の自民党が言っていることそのままだ。
(いらん公共工事で税金を使い果たし、
今になって社会保障が足らないから、
消費税増税しましょうという論拠)
そして今日、1年間の理事をしめくくる総会があった。
いわば政府=理事会が提案したことについて、
国民=住民の賛否をとる国会のようなものだ。
小さな政府志向だったので、
ほとんどもめる問題もなく、
スムーズに提案事項が可決されていったが、
1つだけ、もめにもめた問題があった。
顧問契約の更新についてだ。
理事会のサポート役として顧問を置いている。
もちろん顧問料を支払っている。
小さな政府志向だった理事会は、
この顧問料は無駄ではないかと考え、
更新しない提案をした。
しかしほとんどの住民からは反対意見。
顧問料を払ってでもサポート役は必要だ、
という意見が多数のため、
政府=理事会提案は否決された。
ただ否決されたんだけどよかったなと思った。
顧問の必要性が議論されたからだ。
もし顧問見直しの議題を取り上げなければ、
住民は何の疑問も持たず、議論もなく、
顧問は自動更新されていただろう。
しかし「いらないのでは?」という議題をあげることで、
「本当にいらないのか?」「顧問料は妥当なのか」
ということを住民があらためて考え、
その結果、「お金を払ってでも必要だよね」
という話になった。
政治の世界というのは、慣例が多く、
「昔からやっているから」という理由だけで、
メスが入れられないものが非常に多い。
そのためそれが時代錯誤になり、
たいした効果もあげず、お荷物になり、
財政を圧迫するような事態を招いても、
議論されることもなく温存されることになる。
いわば今回は一度「事業仕分け」の俎上にのせ、
その上で慣例をもう一度考え直すことになった。
そのような意味で否決されても意味があったなと。
政治の世界に限らず、
会社でも家庭でも個人でもそう。
お金が無限にあるわけではないので、
限られたお金をどのような優先順位で、
どのぐらい配分して使うべきかを考えなくてはならない。
しかし優先順位と配分の仕方は、
人それぞれまったく価値観が違う。
だからこそ私は国家や自治体は、
余計なことはせず必要最低限のことだけに限るべきだと思っている。
その分、お金が余れば税金は安くなるわけで、
税金が減った分のお金をどう使うかは、
個人の価値観に基づき、人それぞれでいい。
私は小さな政府を目指したい。
ただ残念ながら自民も公明も民主も共産も、
すべて大きな政府だ。
小さな政府志向が1つもない。
発展途上の時代なら、
国民の利害は一致しやすかったが、
今は価値観が多様化している時代。
政治はできるだけ余計なことをせず、
それによって税金が安くなれば、
個人が自分の好きなものに消費できるようになり、
景気対策にもなるのではないかと私は思っている。
1年間、マンションの理事はとてもいい経験だった。
※政治家を選ぶ方法として、
マンション理事会のように輪番制=抽選制、
というのもよいのかもしれない。
デメリットは多いけど、メリットとしては、
・多選できないから権力の集中や腐敗が起こりにくい
・やりたい人がやるわけじゃないから、
政治に下心を持っていない人が集まりやすい
・他人任せだった住民が理事になることで、
理事会=政治に関心を持つようになる
・報酬はなくボランティア
など。
裁判員も抽選で決まる時代。
政治家も抽選というのもあながち、
悪くはないのかもしれない。
またマンション理事会といえども、
月1回の会合以外は、ほとんどの連絡はメール。
メールが頻繁にやりとりされ、
それがいわば議論にもなっている。
同じマンションにいるのに、
メールで連絡っておかしいかもしれないけど、
みな仕事があったりするので、
会って話し合ったり回覧板まわしているより、
メールの方が圧倒的に早い。
こうなると何も理事=政治家だけが、
メールのやりとり=議論をするのではなく、
マンション住民全員のメーリングリストで、
そのやりとりをシェアすれば、
いわば直接民主制も可能になる。