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下克上は許さない日本社会~潮目が変わった2006年

時代が大きく変わろうとしている今、
最も必要なことは新陳代謝だ。
時代にそぐわなくなった過去の遺物は退場し、
新しいものが古いものに取って代わることが、
社会活性化の大命題であるはず。

ところが日本社会は、
新参者が古参者を追い落とすことを許さず、
ただひたすら古参者の既得権益を守るために、
新参者をぶっ潰すために政策が行われてきた。

新陳代謝を促す手法にM&A(企業の合併・買収)がある。
M&Aとはいわば戦国大名が、
どんどん配下を増やし、勢力を拡大していくこと。
空前のM&Aブームとなった2005年は、
日本は活気にあふれ、
若者は日本社会に明るい未来を見出していた。

しかしM&Aを使うことで、
新参者が古参者を食う事態が起こった。
ライブドアのラジオ・テレビ局買収懸念であり、
サラ金大手アイフルの銀行買収懸念である。

ライブドアは2006年の強制調査でぶっ潰されたことは、
みなさんよくご存知だが、
実はそれとまったく似たような存在が、
実はサラ金大手のアイフルだった。

アイフルは次々とM&Aを繰り返し、
単なるサラ金会社から総合金融グループへと変貌しようとしていた。
そして2005年、アイフルは東日本銀行の筆頭株主になったのだ。

今や事業再生ADRを申請し、
社員を半減する大リストラを行うまで追い詰められたアイフルだが、
2005年は意気揚々としていた。
その様子は2005年1月に掲載された、
読売新聞のアイフル社長インタビューが物語っている。

ここでアイフル社長は、
言ってはならない一言を発してしまった。

今後の成長戦略は総合金融化にあり、そのためには、
「既存の銀行を買収してもいい。
銀行は社会的な信頼度が高く、傘下に収めれば、
アイフルのブランドイメージも向上する」
と発言したのだ。

みなさんもご存知のように、
ライブドアがラジオやテレビを買収しようとした際、
かなりの大騒ぎになった。
新興IT企業が歴史あるラジオやテレビを買収するとは何事かと。

それとまったく同じ反発が、
アイフルにも降りかかった。
「サラ金が銀行を買収するとは何事だ!」

銀行・政治家・役人は、
銀行を買収しかねない破竹の勢いでM&Aを行うアイフルを、
何が何でもぶっ潰さなければならないと考えた。

2006年にライブドアが狙い撃ちされたように、
同じく2006年は次々とサラ金アイフルをぶっ潰す、
不自然な出来事がいくつも起こった。

2006年1月。最高裁判決でサラ金に、
グレーゾーン金利は事実上無効であり、
かつそれは過去に遡って返すべきだという、
法律を無視した空前のいかさま判決が下された。

「いやだってグレーなんでしょ?」というかもしれないが、
出資法という法律上は合法なのだ。
しかも今もなお出資法上の上限金利は29.2%であり、
グレーゾーン金利が法律上違法になるのは、
今年6月に予定されている法律改正が行われればの話だ。

合法なのに違法となんくせつけ、
過去のサラ金の利益を吐き出させた、
史上最低のいかさま判決で、
サラ金の財務内容は一挙に悪化した。

しかしこんなことでは手は緩めない。
2006年4月、アイフルに全店営業停止処分を下した。
百罰一戒と役所が言っているように、
処分するのはどこでもよかったのだが、
銀行を買収しようとしているアイフルは、
絶好の見せしめターゲットだった。

このタイミングに乗じて、2003年に録音された、
アイフル社員のはずだという脅迫取り立てテープが、
テレビでえんえん流された。
これは裁判で明らかになったように、
アイフル社員とは無関係だったにもかかわらず、
マスコミはアイフル社員だといって流したのである。

そして極めつけは2006年12月の改正貸金業法の成立だ。
今までやってきたサラ金のビジネスモデルを完全に破壊する、
厳しい内容の法案だ。
ちなみにこの改正貸金業法の対象となるのは、
サラ金などのノンバンクであり、
銀行のローンは対象にならない。
銀行が今、サラ金ビジネスに乗り出し、
広告攻勢に打って出ているのはこのためだ。

こうして2006年に、
下克上をしようとしたアイフルの息の根をとめる施策が、
次々と行われた結果、
2005年に銀行を買収しようなんて言っていたアイフルが、
たった4年で倒産寸前の企業にまで追い込まれたのである。

ここでライブドアとアイフルの例を挙げたが、
多分、日本にはこんな例がいっぱいあるんじゃないか。
下克上は断じて許さない。
それが国民のためならまだしも、
単に時代にそぐわなくなった既存企業保護、
例えば不良債権の山を築き上げた銀行を助けるために、
銀行にサラ金ビジネスをやらせようとか、
そういう不自然な業界保護のために行われていることが、
あまりに日本は多い。

例えば今、世界の仕組みを180度変えようとしている、
グーグルやアマゾンみたいな企業というのは、
絶対に日本では出てこれない。
日本企業でグーグルやアマゾンみたいなことやったら大変だ。
なんくせつけて社長を逮捕し、
企業生命を奪うのが日本の常套手段だ。

本当は今、日本は新陳代謝を進めなくてはいけない。
古い常識をぶっ壊す破壊的企業が出てくるぐらいじゃないと、
日本社会の閉塞感はぬぐえない。

ある意味では政権交代というのは、
わずかではあるがささやかな新陳代謝ではあったが、
思ったほど過去の常識をぶっ壊すところまで、
正直いききれていないような気がする。

新陳代謝を許さないから若者に希望が持てない。
だから日本全体がどんよりとした暗い気持ちに覆われている。

別に私は経済成長する必要はまったくないと思うけど、
新陳代謝を許さない今の社会の枠組みでは、
いつか日本は窒息死してしまう。

社会が活性化できるよう、
未来に明るい希望は持てるよう、
新しいものが古いものに取って代れる社会環境が、
必要だと思う。

私もささやかながら、
新陳代謝が行われるような社会になるよう、
文筆活動をしていきたいと思っている。

・アイフル元社員の激白~なぜアイフルが狙われたのか

by kasakoblog | 2010-03-22 22:01 | 政治

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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