営業術を売るダメ営業マンの話
2010年 04月 13日
まったくダメだったら、どう思うだろうか?
今日はそんな実話を1つ。
「かさこさんの活動に興味がある人がいる」
私がとても信頼している人から、
そんな人がいるとのことで紹介を受けた。
その人とmixiでメールをやりとりし、会うことになった。
私はmixiやホームページを通じて、
そのような形で数多くの人と会い、いい出会いをしている。
私に興味を持ってくれた人がいて、
私の話が何かその人に役に立つのであれば、
私にとってもすごくうれしい。
先週も一人、そんな方とお会いし、
とても有意義な時間を過ごした。
だから私は今回もそんなつもりで出かけていった。
ところが今回出会った彼は、
私の活動になんかこれっぽっちも興味がなく、
40万円する営業プログラムを、
私に売りつけたいだけだった。
私は何かを売りつけられる話だとは思ってもみなかったので、
はじめの数分、私がライターやカメラマンとして仕事をしていることや、
写真集を出版したりしていることなどを話しているのだが、
どうも話が合わないなと思った。
とても私の話に興味があるように思えないのだ。
そもそも興味があるからお会いしたいというのに、
mixiのプロフィールすら読んでいる感じがない。
「えっ、カメライターで本も出しているんですか?」
って言われて、そんなことも知らないで、
私の何に興味を持ったのか不思議でならなかった。
しかし話していくうちに話の筋が見えてきた。
フルコミッション(完全歩合)で売っている、
営業プログラムを売るために、
私が信頼している人をいわば“騙して”、
私にアプローチしてきたようなのだ。
・・営業マン失格1・・
営業に行く相手のことを最低限調べるのは常識
物を売りたいから会いたいとアプローチしているのだから、
ホームページなどをさらっとチェックして、
どんな相手なのか事前に把握しておくべき。
・・・・
「出版社に営業とかに行くんですね?
営業が成功するかどうかって、
営業の話し方をマスターしているかどうかとかが重要なんです。
はじめに何を話すか、心理学的な裏づけとかもありまして、
私は今、そのプログラムを売っているんです・・・」
なんだ、そういう話なら、
私の活動に興味があるなんてウソを言わず、
営業プログラムを売りたいから会いたいと言ってくれれば、
私は買うつもりはないけど、
取材者としてなら喜んで話を聞くと言ったのに。
後で彼の営業術を聞いたところ、
個人に営業プログラムを売るために他業種交流会などに出て、
「あなたにすごい興味があるので、ぜひまたお会いしたい」
とその場ではビジネスの話は一切せず、
アポをとって営業プログラムを売っているようだ。
・・営業マン失格2・・
違う目的で会いたいと近づき、
後から物を売る話をした場合、
8~9割の人はその営業マンを信用しないし、
絶対にこの人からは物を買わない。
ビジネスをしたいのならはじめに言うべき。
こういう営業の基本中の基本もせずに、
売る商材が売れる営業術プログラムなのだからどうしようもない。
アポをとるためにウソをつけば、
信頼をなくすという基本的なことすらわかっていない。
・・・・
彼が私に会う真の目的がわかったので、
私もそれならそれで話をするスタンスを変えなくてはと思った。
私の活動を話すのではなく、
彼がなぜこんな仕事を選んでしまったのか、
それを取材しようというスタンスに切り替えた。
ところが私が彼に質問するすき間がまったくない。
とにかく彼は営業プログラムのことをしゃべりまくっている。
まったく興味がない人を目の前にしてだ。
私は職業柄、話を聞くのには慣れているし、
話をするより話を聞くのが大好きだが、
ここまで目の前の人の反応を無視し、
一方的に話す人は珍しかった。
そもそも営業マンの理想は、
客に9しゃべらせて、営業マンは1しゃべる状態だ。
彼のように初対面でいきなり、
興味もない人に商材のことをえんえん話されたら、
たいがいの人がイヤになってしまう。
・・営業マン失格3・・
営業マンが自分がいっぱい話すのではなく、
客にいかにしゃべらせるかが重要。
初対面で一方的にしゃべりまくられたら、
「何か売り込まれる」と警戒心をいただかせるだけ。
そもそも人の話を聞かない人とビジネスなんかできない。
・・・・
彼のセールストークが一通り終わった段階で、
彼はかわいそうだと思ったので、
私にしては珍しく、親切に、
彼の営業トークではダメだという話をした。
「営業マンが9しゃべって客が1しかしゃべらないなんてあり得ない」
彼にそう話をすると、
どうも彼はわざとうしたらしいのだ。
「いつもなら客にニーズを認知させるために、客の話を聞くんです。
でも、かさこさんがカメラマンって聞いて、
どうも営業プログラムのニーズには合わなさそうだなと思い、
これ以上、話を聞いてもニーズ認知は難しいと判断し、
ならば、こちらから話すべきことは話そうと思ったんです」
そっか。彼もわかっていたんだ。
私にニーズがないことを。
っていうか、mixiのプロフィール見れば、
私がカメラマンだってことわかるのに。
そこでまた私にしては珍しく、
彼のことを思い、こうアドバイスした。
「ニーズがないとわかったらすぱっと切らなきゃダメ。
ニーズがない人にえんえんセールストークしたら、
かえって悪印象で終わってしまうよ」
「いやでもかさこさんに興味がなくてもいいんです。
かさこさんに僕のビジネスのことをわかってもらえれば、
ニーズのある人を紹介してくれると思って」
そっか。紹介戦略のために話をしていたのか。
しかしそれは逆効果であることを彼に諭した。
「ニーズがないとわかった私に、えんえんと話をするような人だったら、
絶対に私は人を紹介しない。
今回、私を紹介してくれた人を見習った方がいい。
この人は私にニーズがないと思ったら、すぐビジネスの話をやめ、
お互いに興味がある雑談話に切り替えた。
そういう人の方が私は信用できるし、
だから私にはニーズはないけど、ニーズがありそうな友人をこの人には紹介した。
ニーズがない人に話をするのはそもそも時間の無駄だし」
・・営業マン失格4・・
ニーズがない客にセールストークを続けても、
互いに時間の無駄。
・・・・
私が面と向かっておせっかいにも、
このようなアドバイスをするのは極めて珍しい。
いつもだったらこんな話はしない。
ただ彼にはアドバイスしてあげた方がいいと思えた。
というのも彼がこの営業プログラムにはまったのは、
完全歩合で稼げる高報酬のためではなく、
彼自身が前職でコミュニケーションがうまくとれず、
ダメダメ営業マンだった時に、
このプログラムをやって自信をつけて救われ、
営業ができるようになったからだというからだ。
彼のセールストークは上っ面のテクニック的営業話術が見え見えで、
ほとんど聞き飛ばしていたんだけど、
唯一、彼の話をおもしろいと思え、
彼の表情もテクニックではなく心から話している様子が見て取れたのが、
彼の過去の体験を話していた時だった。
彼は以前、ネットワークビジネスをしていた。
ネットワークビジネスをすれば儲かる。
年収2000万円も実現できる。
しかし彼は迷いながらやっていた。
紹介する知人や友人には「マルチ商法じゃないか」と非難され、
次々と友達をなくしていった。
「なんでだろう?」と思いながら、
がんばればがんばるほど空回りしてしまう。
彼はなぜマルチでうまくいかないのかを悟った。
「自分が自信を持ってすすめていないものを、
売れるわけがないと思ったんです」
そこで彼はいろいろ紆余曲折するうちに、
この営業プログラムに出会い、
「物を売るには人の役に立ち、
自分が自信を持ってすすめられるものでなくてはならない」と気づき、
彼自身がユーザーでもありおすすめできる、
この営業プログラムを売る仕事に転職したのだった。
だから私は彼はかわいそうだと思い、余計なおせっかいをした。
「今の売り方はマルチをやっていた時と、
同じ過ちを繰り返していると思うよ。
ニーズのある人に売ればいいじゃないか。
ニーズのない人に無理やり売る必要なんかない」
彼はわざわざ指摘してくれてありがとうと言った。
少しは聞く耳を持っているようで、救いがあった。
でも多分、私が言っていることに、
納得している風ではなかった。
でもそれは仕方がないこと。
いつ気づくか。
一生気づかないかもしれないし、
2~3年後に気づくかもしれない。
私は彼にきっぱりこう言った。
「君のセールスの仕方は技術論ばかりで魂がない」
はじめは自分のことを言われているとは気づかないようだった。
しばらくして「ひょっとして私のことを言っているのですか?」と気づいた。
確かに営業をうまく行うには、
ある程度の話術やマナー、切り替えし術、意識、
タイミングなどの技術論も必要だ。
しかし、彼が過去に失敗し学んだように、
自分の魂が込められないもの、
自分が好きでないものは売れないんです。
自分がこの営業プログラムを気に入っているから、
それを多くの人に広めたい。
その部分を強調した方がいい。
それ以外の営業トークは、私にはまったく心に響かなかったと。
・・営業マン失格5・・
自分が気に入ってもいないものを、
単に金のためだけで売り続けることはできない。
自分がその商材にほれ込まなければ真の営業マンにはなれない。
・・・・
私は出版社に文章や写真という作品を営業するわけだけど、
自分が好きな文章や写真でない限り、
魂を込めてセールストークなんかできないし、
出版社に企画が通るかどうかは、
礼儀作法だの営業トーク術なんかまったく関係なく、
つたない説明だろうが、多少、服装が乱れていようが、
熱意を持って話をしている人には耳を傾けるもの。
彼は技術論に溺れてしまい、
肝心の自分が好きだという魂を忘れてしまったのだ。
彼にははっきり上記に書いたようなことを、
面と向かって言ったので、
ここでもこうして日記を書くことにした。
彼がこの日記を読んでくれて、
勘違い営業マンから一皮向けて立派なビジネスマンになってくれれば、
とそのような思いで厳しく書いた。
ただ残念なこと。
多分、彼はこの日記を読まないだろう。
私の活動に興味があるといいつつ、
mixiのプロフィールすらまったく読んでいなかった。
彼は営業は礼儀が大事だといいつつ、
私が話をしている最中、ケータイ電話をチェックした。
営業は礼儀が大事だと言って説く営業マンがである。
そして私が彼にさんざんアドバイスをしている際、
私にはまったく売れる見込みがないとわかったのか、
もう一度、ケータイに電話がかかってくると、
平然と電話に出て、話をし始めた。
そんな君が営業術の営業ができるわけがない。
営業マンうんぬんではなく、人として失格だ。
恥を知れ、恥を。
会った後も今日はお会いしてありがとうのメールもない。
ビジネスにならないからこいつはどうでもいい。
そういう人の付き合い方をしているようでは、
絶対にいい営業マンにはなれない。
人と人とはどこでつながっているかわからない。
仕事になるとかならないとかで、
態度を変えているようでは絶対に大物にはなれない。
もし彼から、今日はお時間いただき、
ありがとうございましたというメールがあったら、
私はこの日記を書かなかったかもしれない。
私は彼の営業プログラムをすすめる日記を書いたかもしれない。
ユーザーにならなくても、
話した相手に最低限の礼をつくすのが、
ビジネスマンとしてのマナーの一つだ。
それもできない営業マンが、
できる営業マンになるプログラムを40万円で売るというのだから、
正直、失笑ものだ。
彼がこの日記を読み、
自分のあまりの営業術のダメさ加減、
社会人のマナーすら身についていない、
自分のいたらなさに気づかない限り、
今、仮にそこそこの営業成績を上げられたとしても、
この先、彼が営業マンとして、
ビジネスマンとして伸びることはないだろう。
厳しいことを書いたが、
ほんの少しギアを入れるべき場所が違っているだけ。
パワーもあるしバイタリティもある。
この日記を読み、なにくそと思いつつも、
学ぶべき点は学んで自分のセールストークを修正すれば、
きっといい営業マンになれると思う。
がんばれ!営業マン。
失敗から学べることは多い。
聞く耳を持てるかどうかが、
成長できるかどうかの別れ道だ。