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納税・兵役の義務がない「自由」の村~板門店レポート3

「ここに住んでいる人たちの年収は1000万円。
税金も納めなくていいし、兵役の義務もないんですよ。
すごく豊かな暮らしをしているんです」

韓国と北朝鮮の国境からそれぞれ2kmの非武装中立地帯(DMZ)。
両国がにらみ合うこの緩衝地帯に、
韓国側には「自由の村」と呼ばれる小さな村がある。
緊張状態の国境沿いにあり、
かつ、あちこちに地雷で埋まったこの危険地帯ゆえ、
政府が無税、兵役を免除し、
ここでとれた農作物を高く買い取っていることから、
ここに住む人は一般の数倍もの年収を手に入れているという。
国境を接した場所にこんな「特区」が存在するなんて、
思いもせずに驚いた。

しかしこの「自由」の村はぜんぜん自由じゃない。
非武装中立地帯は厳重な検問がある、鉄条網で囲まれた場所で、
許可した人間以外は入れない。
この村人たちは自由に村の外に出ることはできず、
門限もあり、消灯時間も決められている。
かつ毎日、村人の人数が合っているか、点呼もあるほどだ。

こうした普段の不自由だけでなく、
軍事緊張状態の最前線にあるわけだから、
何か有事があれば真っ先に戦争被害にあう、
とんでもないリスクと隣り合わせに生きている。

さらには地雷だらけの場所ゆえ、被害にあう村人も多いという。
ここに埋められた地雷の中にはわずか数百グラムの、
非常に軽い地雷があるゆえ、
地雷危険区域から雨が降った時などに、
地雷が流れてしまい、
本来安全なはずの場所にも地雷が流れてくるというのだ。

こんな不自由だけど、税金免除・兵役免除ならいいかも、
と思う人がいるかもしれないが、残念ながらここに住む彼らは、
ここに好き好んで住んでいるわけではないようだ。
もともと「板門店」なんて名もなき小さな農村に過ぎなかったこの場所が、
たまたま国境にされ、かつここで両国の休戦協定が行われたことから、
こんな場所にされてしまったのだ。
先祖代々の土地を見捨てるわけにもいかず、
否応なくここに住んでいる人が多い。

一般の年収数倍と無税、兵役免除という「特典」と、
彼らが背負っているリスクと不自由が見合っているのか。
世界遺産に指定されてもおかしくはない貴重な自然環境の中、
彼らは「自由の村」という名称をつけられながら、日々生きている。

by kasakoblog | 2007-07-31 12:57 | 旅行記

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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