時折、このような質問を読者の方からメールをいただく。
でも自分では自然に行っていることなので、
なんとアドバイスしたらよいかわからない。
しかし最近になってこの回答の1つに思い至った。
藤原新也を読みなさい。
・・・
最近の日記、
「宮崎がかわいそうとか言っているキモチ悪い件」
や、フォトエッセイ「心の清涼剤」を書いた時、読者の方から、
「ミスチルっぽいですね!」という声があった。
なかにはミスチル「LOVEはじめました」という曲の歌詞、
「まずはおまえらが死刑になりゃいいんだ」
という部分に通じるものがあるとの指摘もあった。
この歌詞は、殺人現場でやじうまたちが群がり、
携帯片手にピースサインを送る姿に、
「犯人はともかく、まずはおまえらが死刑になりゃいいんだ」
というものだ。
「そういえばそうだよな」という、
社会への違和感をストレートに表した歌詞だ。
私はミスチルの曲や歌詞に大きく影響されている。
これまで何万回と曲を聴き、
カラオケではほとんどミスチルしか歌わず、
コンサートは1995年以降、すべてほぼ欠かさず参加している。
ゆえにミスチルに大きな影響を受けていることは間違いない。
しかし社会への深い洞察力を、
ミスチルだけで身に付くかというと疑問だ。
では何が私に社会への洞察力を、
身に付けるきっかけになったのだろうかと考えた時、
ミスチル以上に大きな影響を受けているのが、
作家・藤原新也の著作からだと気づいた。
ちなみに、ミスチルと藤原新也には接点がある。
ミスチル大ブレイク中の1996年に発売された、
「花 -Memento-Mori-」の「Memento-Mori」は、
藤原新也のフォトエッセイ「メメント・モリ」からつけられたものだ。
これについて、藤原新也とミスチル桜井さんは対談しているのだ。
(「沈思彷徨」に対談掲載されている)
というわけで「ニュースや社会への洞察力を身に付けるには?」
という問いに対して明確に答えられるのが、
「藤原新也」を読むことだ。
ぜひみなさんに藤原新也を読んで欲しいと思う。
そこで知らない人のために藤原新也を簡単に紹介したい。
藤原新也は写真もすごいし文章もすごい、
私にとっての憧れの“カメライター”である。
しかもインドやチベットを旅行している、
旅行作家としても憧れの存在だ。
藤原新也作品に出会ったのは20代の頃。
海外旅行好きの私はいろんな人の旅行記を読んでいた。
特に沢木幸太郎著「深夜特急」に感動して、
これがきっかけで会社を辞めて旅に出ることになるわけだけど、
沢木氏と並び証される旅行作家として、
藤原新也がいることを知り、
藤原新也の旅行記を読んでいくようになった。
ところがはじめはあまりに難しすぎて、
ちゃんと読めなかった。
いわゆる旅行記とはまったく異質で、
旅行記というより旅行をベースにした、
文明論、社会論ともいうべき内容だった。
その社会を捉える力に惹かれていき、
旅行記ではなく日本の社会批評本を読むに連れ、
藤原新也の社会洞察力の深さに、
影響されるようになり、
私の文章や考え方に今でも色濃く反映されているのだ。
ちなみに私が会社を辞めて、
長期旅行をしようと決断させてくれたのも、
藤原新也の本のおかげだった。
エッセイ集「藤原悪魔」という本の、
「エンパイヤステートビル八十六階の老女」の序文、
半年も旅をすればひょっとすると自分の人生すら変わるかもしれないわけだが、
このような人生にかかわる行事が、
ただバイトを探すのが難しいといった理由だけで、
キャンセルされるというのはさみしい。
という文章を読み、
私はその3日後に、会社を辞めて旅に出る計画を練り始めたのだ。
最近も藤原新也は精力的に本を出しているが、
最近はあたりはずれが多い。
過去の本もいろんな本があり、
はじめはかなりとっつきにくいので、
藤原新也を読んだことがない人は、
すごく読みやすくて、かつはっとされるエッセイが多い、
「藤原悪魔」から読むことをおすすめしたい。
「藤原悪魔」を読んで気に入ったら、
世間をあっと驚かせ、社会問題化にもなった、
「東京漂流」(1983年)を読むとよい。
写真好きならフォトエッセイ「メメント・モリ」を。
旅行好きなら藤原新也の処女作「印度放浪」や「印度動物記」、
「全東洋街道」を読むとよい。
藤原新也を読むと間違いなく社会への洞察力がつく。
そして私の文章や生き方や価値観や活動などが、
ミスチル以上に深く影響を受けていることもわかると思う。
藤原新也で強烈に印象に残っている話は、
「東京漂流」のはじめに出てくる「豚は夜運べ」。
牛が殺されてかわいそうだと騒がれているが、
普段は牛を殺して肉を食べているのに、
その時はかわいそうだとはひとかけらも思わず、
メディアに取り上げられた時だけ、
それにのせられてかわいそうだと思う、
現代人の思考回路は、
私が藤原新也の「豚は夜運べ」から影響を受け、
ベトナムに行った時に書いた「豚は夜運べ」を読むと、
しっくりくるのではないかと思う。
私が目指すべき一つの理想系は、
現代の藤原新也になること。
多くの人に気づきを与える、
文章を書き、写真を撮っていきたいと思う。
・おすすめ本
藤原悪魔
沈思彷徨(ミスチル桜井さんとの対談も掲載)
藤原新也の部屋
http://www.kasako.com/huziwaratop.html