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ちょっといい話

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店のドアは昼間はいつでも開けてるから

6/18で閉店になった神楽坂の食堂えびす亭。
閉店時に食堂を営む老夫婦の記念写真を撮影した。
同僚が写真をプリントアウトし、
額に入れて持参するとのことで、
再び店に行ってきた。

店は営業時の雰囲気を残したまま開いていた。
「こんにちは~~」
と大きな声で呼びかけると奥からお母さんが出てきた。

「あら、また。暑い中、来ていただいて。
どうぞお上がりになって」

店から厨房を通って、中の部屋に通してもらう。

部屋に入って驚いたのは、
コック服姿で座っていたお父さんの姿。
閉店してもう1週間が過ぎても、
長年、着続けてきたコック服を脱ぐことなく、
テレビを見ていた。

聞けばお父さんは84歳。お母さんは83歳。
神田の洋食屋でコックとして定年まで勤め上げ、
それから神楽坂の自宅で食堂を営むようになった。
60歳に自分の店を持った“遅い”独立とはいえ、
24年間、食堂を二人三脚で営んできた。

足が悪くなったことなどもあり、
ドクターストップがかかって、
やむなく閉店することになったという。
しかし両方とも80歳を超えているとは思えないほどの元気さだ。

「流産とかして結局、子どもはできなかったから、
これまでもこれからもずっと2人。
今後は年金暮らしでのんびりやりますよ」
といいながら、食堂を閉店してしまったことは、
ちょっぴりどこかで淋しそう。

「閉店してから急に腰が痛くなっちゃって」
とお母さんが言うように、
知らず知らずのうちに無理をしていたことも事実。
閉店するにはいいタイミングだったのかもしれない。

閉店時に撮影した2人の写真を見て、
「いい記念になります」といって、
お父さんもお母さんも喜んでくれた。

「営業しているもっと前にも、
撮ってもらえばよかったな」
という点だけは唯一の心残り。

でも「写真は一生ものですからねえ~。
ありがとうございます。本当に」と、
何度も何度も感謝の言葉を言ってくれたのが、
何よりうれしかった。

60歳なら「人生あがり」と考えそうだけど、
そこからまた新たな人生を歩み、
24年の歴史をつくり、
お客さんに多くの思い出を残した食堂。

そんな素敵な生き方をしてきた老夫婦の姿は、
写真とともに私のなかにも1つの思い出をつくってくれた。

「100歳まで生きて、また新たな人生と思い出を!」

年齢は関係ない。
今をどう前向きに楽しく生きるかがすべて。

そんなことを老夫婦から教えられたような気がする。

by kasakoblog | 2010-06-24 21:48

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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