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内閣府ひきこもり調査のいい加減~7人のひきこもりを70万人と報道するメディア

「ひきこもり70万人!」
このニュースは新聞各紙をはじめ、
ニュースサイトでもトップで大々的に報じられた。

見出しだけ見た多くの国民はこう思っただろう。
「働きもせず親のすねかじっている奴がそんなにいるのか」
「オレたちはちゃんと働いているのに働けよ!」

しかしこの70万人という数字は、
実にいい加減な調査から導き出されていることを、
多くの国民は知らない。
ちゃんとニュースをよく読めばすぐにおかしいとわかるが、
ニュースの見出しだけに刹那的感情的に反応する人が、
いかに多いことか。

なぜこの調査はいい加減なのか。

●1:「ひきこもり」と回答したのはたった7人!
「内閣府が全国でひきこもりの実態を調査した」
というといかにも最もらしいが、
回答したのはたった3287人である。

そのうち「自室からほとんど出ない」と答えた人は0.12%=4人。
「家から出ない」と答えた人は0.09%=3人。
家から出ないのはたった7人だ。

たった7人ですよ。
それを一般化して、推計70万人いるとか言っている。
これが本当に「実態」調査なのか?
あまりにサンプル数が少なすぎはしないか。
国が税金かけてこんな少数の調査しかできないわけです。

ちなみに内閣府の調査では、この7人の「ひきこもり」に加えて、
「近所のコンビニなどには出かける」0.4%=13人と、
「自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」1.19%=39人を加え、
59人を「ひきこもり」と定義。

59人/3287人=1.79%だったから、
調査対象の15~39歳の人口は3880万人に1.79%と掛けて、
全国で69万4000人はいると推定している。

ただメディアはこぞって「推計70万人!」という数字だけを出す。
だから多くの人はこの調査で、
家を出ないひきこもりが7人しかいないという、
あまりにサンプル数が少ない調査であることは知らないまま、
「70万人もいるなんて!」と錯覚していくわけだ。

●2:「ひきこもり」の定義が多くの人が思っているものと違う。
サンプル数が少ないことよりもっと大きな問題がある。
「ひきこもり」の定義だ。
このニュースを見た多くの人は、
「ひきこもり=成人したいい年の大人が、
親のすねかじって働きもせずに優雅に暮らしている人」
と考えているのではないか。

しかしこの調査の定義は違う。
6カ月以上ほとんど家から出ず、
外出は近所のコンビニや趣味の用事の時だけ、
と回答した人を「ひきこもり」と定義している。

育児、家事、妊娠の人は、
さすがに「ひきこもり」には入れていないらしいが、
在宅勤務、デイトレーダー、病気の人、未成年の学生(調査対象は15歳から)
まで含まれている可能性がある。

内閣府が定義した「ひきこもり」と回答した59人の、
ひきこもりになったきっかけを見ると、

病気=14人
職場になじめなかった=14人
就職活動がうまくいかなかった=12人
不登校=7人
人間関係がうまくいかなかった=7人
大学になじめなかった=4人
受験に失敗した=1人

となっている。

59人のうち、
「受験に失敗した=1人」「大学になじめなかった=4人」「不登校=7人」
の12人は現在、学生である可能性が高い。
つまり多くの人が思う、
「社会人のくせして働かずして遊んでいる」=ひきこもりではなく、
学生が20%も含まれているのだ。

いじめで不登校になったり、
受験に失敗した浪人生まで「ひきこもり」に入れている。
これは多くの人がイメージする「ひきこもり」とは、
大きく異なるだろう。
それは「いじめ」とか「受験」とか別の問題だろう・・・。

さらに「就職活動がうまくいかなかった」が12人もいる。
これだけの回答では意味するところはわからないが、
本当は働きたいけど、就職先がなかった就職浪人生まで含まれいる可能性もある。
それは別に自分の意志で遊びたくて親のすねかじっている「ひきこもり」、
という一般イメージとは大きく異なる。

さらに病気が14人。
職場がいやになり、うつ病になって家を出なくなったのなら、
「ひきこもり」かもしれないが、
そうではない病気でやむを得ず、
働けなくなり、家から出れなくなった人も含まれている可能性もある。

一般イメージの「ひきこもり」としては、
職場になじめなかった=14人、人間関係がうまくいかなかった=7人の
21人がそうだろう。
この21人について「みんなツライのにがんばって働いてるんだから、
お前らもちゃんと働けよ!」というのならわかるが、
それは21人=推計で24万7900人となる。
「ひきこもりが70万人!」ではなく「ひきこもりが25万人!」
と報道されたらどうだろう?
25万人といわれたら70万人という報道より、
明らかにごく一部の限られた人というイメージになるのではないか。

ひきこもりの実態調査というわりに、
学生の不登校や浪人生まで含めて、
推計70万人というのは信憑性があるか。

本来なら調査対象は15~39歳ではなく、
18歳以上または22歳以上で、
現在学生の人はのぞくべきだろう。
でないと正確な人数がわからない。

・・・・・
こんないい加減な調査が、
大手新聞やらニュースサイトやらが、
内閣府の調査で簡単に記事が書け、
しかも「ひきこもり推計70万人!」という、
センセーショナルな見出しが出せるという理由だけで、
わっと蔓延してしまう日本社会。

しかもこの詳細な調査結果が、
なぜか内閣府のホームページにはまだアップされていない。
マスコミにだけ先行発表して、
調査がいい加減だから、国民にはすぐには公表しないということなのか。

「ひきこもり推計70万人!」というニュースを見て、
怒るべきは「ひきこもり」の人での前に、
こんないい加減な調査に税金を使っている官僚に対してと、
それを鵜呑みにして報道するメディアに対してだろう。

3287人から回答を得るために、
5000人を対象に調査員が訪問し、
調査票を届けて、再びたずねて回収するという、
面倒なことをやっている。
しかもこの調査が行われたのは2月下旬。
調査結果が公表されたのが5ヵ月後。
なんという遅さ・・・。

怒るべき対象がぜんぜん違う。
見出しだけ見て「ひきこもりの奴らはふざけんな!」
と思わせるのが、官僚とメディアの意図でしょう。
国民同士でけなし合わせて
自分たちはのうのうと暮らしてる。

国の調査だから本当に信頼できるとは考えない方がいい。

by kasakoblog | 2010-07-25 19:37 | マスコミ

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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