2010年 08月 18日
卵を1つのカゴに盛るな?!
投資は勝つ(儲ける)ためにするんじゃない。
負けないためにするんだ。

資産運用を勧める金融機関やFP(ファイナンシャルプランナー)、
投資を勧める教科書的な本では、
投資は儲け目的ではなく「負けない」投資を勧めます。

多くの人はここで欺瞞を見破ります。
えっ、勝つ(儲ける)ためにやるのが投資でしょ?と。

そう思う人は投資がギャンブルだとわかっている人です。
ここで気づく人は何の問題もありません。
ギャンブルと割り切って投資をすればいいし、
ギャンブルだからイヤだと思えば投資しなければいい。
ちゃんと判断ができる人です。

しかし金融知識がなく、わりと保守的でまじめで、
遠い将来のことを真剣に考えてしまうような人は、
この「負けない投資」という論理矛盾に気づかず、
投資はギャンブルじゃないんだと思い込んで、
ギャンブル=投資に大事なお金を、
たくさん注ぎ込んでしまいがちです。

では投資(ギャンブル)を勧めて、
胴元(金融機関)だけが儲かる、
「負けない投資法」とは一体何でしょうか?
それはズバリ「国際分散投資」のことです。

将来不安、年金不安を煽られた人たちに、
まずこのような話をします。

「卵を1つのカゴに盛るな」

これは国際分散ギャンブルを始めさせるための、
金科玉条のたとえ話です。

みなさんの大事な卵(お金)を1つのかごだけに乗せていたら、
そのかごを落としてしまったら、財産はなくなってしまう。
だから大事な財産はいろんなカゴにわけて、分散しなさい。
そうすれば仮に1つのカゴが落ちてしまっても、
他の財産は守られるのです。

なるほど、と思いますよね。
じゃあそこで何をするか。
みなさんのお金をいろんな種類の金融商品に分散しましょう、
というわけです。

たとえば資産が100万円あったら、
普通預金にすべてを預けてしまうのではなく、
日本の株式・債券に投資したり、
中国の株式・債券に投資したり、
米国の株式・債券に投資したり、
ブラジルの株式・債券に投資したりしましょうというものです。

日本がもし不景気で大変な時でも、
中国やブラジルが好景気なら、
日本の不景気分を補ってくれるという論理です。

財産を分散しておけば、
どれかが損をしてもどれかがトクをする。
日本株で10万円損しても中国株で10万円トクすれば、
トータルプラスマイナス0で「負けない投資」ができるというわけです。

もし100万円をすべて日本株に突っ込むと、
50万円儲かることもあれば50万円損をしてしまうこともある。
こういうのは投機ですよ。ギャンブルですよ。
だから分散して賢く正しい投資をしましょうと勧めます。

しかしここで大きな疑問がわきます。
投資はみな元本が保証されておらず、
しかも価格が変動するリスク商品です。
「絶対に負けない投資」をするなら、
元本割れのリスク商品に手を出さずに、
預金にしておけばいいのではないかと。

その通りです。
日本株に投資して10万円損した時に、
中国株が10万円儲けてくれればプラマイゼロ。
プラマイゼロなら預金でいいじゃないか。

日本株も中国株もともに元本保証がない価格変動商品です。
プラマイゼロになるなんて、そううまくいくはずはありません。
日本株が10万円損し、挙句の果てに中国株も10万円損すれば、
20万円の損。
分散したところでぜんぜん負けない投資になっていないのです。
それどころか資産を減らしてしまうことにもなりかねません。

ならばはじめから預金すればいい。
空前の低金利ではあっても、
20万円の預金が1年後に10万円になったりは絶対にしません。
利息がまったくつかなくても20万円です。
本当に「負けない投資」をしたいなら、
元本保証の預金だけしておけばいいんです。

ではなぜこんなバカな国際分散投資を勧めるのか。
実は金融危機前までは、
ある程度、この理論は正しかったからです。

日本がダメな時は海外が補ってくれる。
先進国がダメな時は新興国が補ってくれる。
株がダメな時は債券が補ってくれる。
金融危機前までは確かにこのような、
分散効果が働いていた時期はあったのです。

しかし世界は変わりました。
ここ数年、何度「世界同時株安」という言葉を聞いたでしょうか?
いまや世界各国の株式のほとんどが、
同方向に動くようになってしまったのです。

米国株が下がると日本株が下がり、
中国株もインド株もブラジル株もドイツ株もロシア株も下がる。
国際分散投資をしても、
下がる時はみんな下がるので大損してしまう。
「1つのカゴに卵を盛るな」はもはや通用しない世界になっているのです。
というか投資の世界全体が1つのカゴになってしまったのです。
今後も世界の株式は分散効果の期待は薄く、同方向に動くでしょう。

株式がダメなら債券がある。
しかし、みなさんご存知のように、
2010年5月にギリシャ・ショックに端を発した、
欧州ソブリン(債券)危機が勃発しました。
ギリシャの国債がデフォルト(支払不能)になるかもしれない。
ギリシャだけでなくスペインやイタリアなども危ないんじゃないか。
いや日本の国債だって危ないんじゃないか・・・。
そう。株がダメなら債券がいいとは、
もはや言えなくなってしまったのです。

いや、ギリシャショックなんかが起きなくても、
債券を持っていても株式の損を補うことができなかった。
なぜなら円高になってしまったからです。

日本株式と海外債券を持っていれば、
高いが損を埋めあってくれる存在と考えられていました。
しかし最近は日本株安と同時に円高も起きます。
円高になると株安が起きるといってもいいでしょう。

円高になると海外債券の価値は減ります。
つまりどんなに海外債券がよくても、
円高になってしまうと、
その分、20%、30%も損してしまうのです。

こうして多くの人が、
卵を多くのカゴに分散したのに、
すべての卵がやられてしまったのです。

しかし商魂たくましい金融機関は、
こんなことではへこたれません。
「いやいや、あなたの分散はまだまだ不十分なのです。
株式と債券だけではダメです。
金(ゴールド)や原油、食糧などのコモディティ(商品)に投資したり、
不動産に投資したりすべきです」

こうして株式と債券以外に、
新手の金融商品が組成されます。
はじめは「これを買えば、株と債券がダメでも、補ってくれるかも!」
とみんなが期待して新手の商品に群がるため、
価格は高騰し、見事に値上がりします。

しかしこれらの商品はみんな金融危機で暴落しました。
今、値上りしている金(ゴールド)すら、
金融危機時には暴落したのです。
有事の金なんてウソです。
金はもちろん、値上りしていた原油もコモディティも不動産も、
みな株安と同じく価格が値下がりしてしまいました。

今、にわかに金(ゴールド)は高騰していますが、
いつ暴落するかはわかりません。

このように金融機関が勧める「国際分散投資」にのせられて、
大事な預金を取り崩し、さまざまな商品に分散投資したのに、
すべてが値下がりしてしまうという悲劇を味わった人は、
実は日本人には数多くいます。

騙された!といっても時すでに遅し。
騙される方が悪いのです。
儲けようという心が悪いのです。
自分だけは資産を守れるなんて抜け駆けしようと思うのが悪いのです。
投資はギャンブルじゃないと思うのがダメなのです。
負けない投資なんていう甘言を信じてしまうあなたがバカなのです。
金融機関の言うことをすべて真に受けるあなたが悪いのです。

ただ一言、金融機関の弁明のために言っておきましょう。
金融機関はみなさんを騙すつもりではなかったのです。
金融機関自身も「国際分散投資は有効だ」と思い込んでいたのです。

逆に言うと金融機関すら、金融のプロですら、
金融危機により、あらゆる商品の分散効果がない、
ということが予想できなかったのです。
そのため金融機関をはじめ、
機関投資家すら、個人投資家と同じように、
投資でやられてしまい、大損して困っています。

ただ金融機関は商品を売れば手数料が入ってきます。
みなさんが投資で大損しようが大儲けしようが関係ない。
商品を売れば必ず手数料で儲けられるのです。
これぞまさに「負けない投資」。
負けない投資をするなら、胴元になるしか方法はありません。

国際分散投資をすると自分が賢くなったような錯覚に陥ります。
経済や金融に詳しくなったような気がします。
しかしそれは錯覚です。

競馬をはじめて競馬界に詳しくなったのと同じ。
何も偉くもないし賢くもない。
ただマネーゲームのルールに詳しくなっただけ。
それで勝てばいいのですが、
ルールに詳しくなったのに負けてしまうなんて、
まるでバカみたいですよね。
そんなバカみたいな話が実際に起きたわけですが。

金融危機によってこれまで信じられてきた、
国際分散投資はまったくの無意味になってしまいました。

もし負けない投資をしたいのなら、
預金しなさい。
もし儲ける投資をしたいのなら、
割安な機会に割安な銘柄を集中投資し、
短期で売り抜ける「投機」をしなさい。
そうでない限り、金融危機後の市場では、
絶対に投資では勝てません。

よ~く覚えておきましょう。


by kasakoblog | 2010-08-18 22:31 | 金融・経済・投資


<< 花火のように      抱きしめたい >>