なくなれ国境。いかさまソフトバンク広告に見る日本の未来
2010年 08月 30日

なくなれ国境。
ソフトバンクのどでかい看板を見て驚いた。
「なくなれ国境」とはなんと力強いメッセージ。
ひょっとしてSIMロック解除を容認したのかと思ったら、
何のことはない、海外パケットし放題のことだった。
日本はあまりに「国境」が多過ぎる。
ここで言う国境とは、世界とはかけ離れた業界障壁や規制のこと。
だから日本は先行きの暗い経済見通ししかない。
携帯電話業界しかり金融業界しかり。
あらゆる業界ではびこる日本的規制。
こうした障壁=鎖国政策のために、
外国企業は日本に進出しにくい状況が続いている。
自国企業を守るためといえば最もらしいが、
外国企業が参入しにくいため、
市場原理が働かず、まるで業界談合経済化し、
業界側の論理でしかサービスが提供されず、
消費者は不利益を強いられる。
日本企業は日本独自ルールで守られているがゆえ、
世界市場に進出しても成功しない。
このような鎖国政策を行っていても、
日本の人口が今も右肩上がりで増えているなら、
それはそれでよかった。
世界を相手にしなくても、
日本だけで食っていけるのだから。
しかし人口は減って国内市場のパイは減り始めた。
日本企業が生き残るためには、
日本市場だけでなくアジアや世界市場に進出しなくてはならない。
しかし独自ルールでやってきたために、
世界にいっても通用しない。
こうして競争力のない日本はグローバル競争時代に不利になった。
消費者側からしてもそう。
ネットというボーダレスな技術が急速に普及した今、
今や日本で物を買わなくてもいいわけだ。
業界保護のためにサービスが偏向している日本企業より、
少し英語がわかれば規制がない海外企業から買った方がいい、
なんてことになりかねない。
「SIMロック」とは、携帯電話端末を、
ほかの事業者で使えないようにすること。
世界では「SIMロック」をかけていないのが趨勢だ。
つまり消費者は、通信会社と携帯電話端末会社を自由に選べる。
しかし日本は携帯電話会社を守るために、
「SIMロック」を行ってきた。
やっと解除する動きがはじまったが、
断固として反対したのはソフトバンクだ。
なぜソフトバンクが反対するのか。
簡単なことだ。
解除されたら、「iPhone」や「iPad」を、
ソフトバンクで契約せず、
ドコモやauのまま利用されてしまうからだ。
それを消費者の不利益になるなどと、
バカな言い訳をして断固として阻止しようとしている。
そんな会社が「なくなれ国境。」というのだから大笑いだ。
なくすのはあんたらの国境=SIMロックだろうに。
ソフトバンクが「iPhone」や「iPad」を独自に開発したならともかく、
アップル社という全然別の会社が作っている。
もしSIMロックが解除されれば、
ドコモユーザーやauユーザーも機種変更で、
「iPhone」を使えるわけだ。
消費者にとってこんな便利なことはない。
日本独自のSIMロックという規制のために、
消費者が不利益を被る事態が続いている。
しかしもはやボーダレスな時代になり、
無意味な国境はどんどん飛び越えられてしまう。
SIMロックがかかっていない海外版の「iPhone4」を、
NTTドコモのネットワークで使えるようにするmicroSIMカードが発表された。
日本だけで無意味な障壁があっても、
海外ではないのだから、
海外で購入して日本仕様にしてしまえばいい。
「iPhone」に限った話ではなく、
こうしたボーダレスな動きはどんどん加速するだろう。
結果、日本は損をする。
金融の世界でもそう。
例えば企業が上場する際、
日本の株式市場で上場するより、
シンガポールで上場すればいいという動きもある。
日本を本社にするよりシンガポールを本社にしちまえという動きもある。
日本独自のルールが多すぎると、
その分、負担が大きいわけで、
だったら日本じゃなくて、
シンガポールでいいんじゃないって話になる。
そういうことが実際に起きていて、
日本の空洞化を加速化している。
日本独自の規制もさることながら、
日本の教育システムの最大の欠陥ともいうべき、
しゃべれない英語を教えることも、
日本の成長を阻害している大きな要因となっている。
中高6年間も英語を勉強させられているのに、
英語をまともに話せる人はほとんどいない。
なんと無駄なことをしているのだろう。
英語が使えれば何も日本企業に就職しなくてもいい。
英語が使えれば、ネットでの情報源や買い物する先は格段に増える。
英語力のあるなしにより、
日本企業のグローバルでの競争力も格段に変わってくる。
ところが話せない英語を6年間も教えているばかりに、
英語でメールできないし、
英語で商談なんかできない。
そのために日本はこのグローバル時代に、
取り残された低成長国家になってしまった。
金融危機以降、バカなマスコミや経済界が、
政府に対して「成長戦略を示せ」と騒いでいるが、
真の成長戦略とは、
日本人が社会人になって英語を勉強しなおさなくても、
留学しなくとも、
義務教育だけでしっかり英会話ができるようになることだ。
それができるだけ、日本の長期的経済成長にどれだけ貢献することか。
こうして自ら国境を作り上げ、
世界から取り残されてしまった日本。
いい加減、鎖国政策をやめない限り、
日本はどんどんパッシング=素通りされるだろう。
日本の株価が上がらないのもこのせいで、
外国人投資家が魅力のない日本市場に投資せず、
アジア市場に資金を振り向け始めている。
外国人が投資しない限り、
日本の株価は上がらない。
国境をなくすことはリスクでもあるがチャンスでもある。
しかし鎖国時代の遺伝子が抜けないのか、
リスクばかりを強調する。
結果、チャンスを逃し、
どんどん国家として衰退していっている。
なくなれ国境。
それはまさに今の日本社会が活性化する第一歩の政策だ。
ところがこうしたキャッチフレーズが、
国境(SIMロック)をなくすことに反対している企業が、
まるで違う意味で使っている情けない現実。
このソフトバンクの広告1つ見ても、
日本がなぜダメかが象徴的に現れていると思う。
国境をなくさないのなら、
日本の人口を増やすしかない。
しかし人口が増えないのなら、
国境をなくさなければならない。
ボーダレスな時代に、
いつまで鎖国を続けるのか。