産業空洞化は円高より賃金格差と派遣禁止

円高になると日本の工場が海外にどんどん移転し、
日本の雇用が失われ、産業が空洞化する!
だから今すぐ為替介入を行うべきだ!!!

こういうバカな主張がもっともらしく世間を流布している。
ほんとバカだなと思う。
何でもかんでも円高のせいにするのは、
思考停止、責任放棄、世界を見る目がない証拠だ。

円高はもちろん海外工場移転を促進させる、
一要因となることは間違いない。
しかしそれは長期的に円高になればの話だ。

当たり前の話だけど、
今日の円相場で1ドル=80円になったから、
すぐに国内の工場を海外に移せるか、
といったら移せるわけがない。
工場を移転するには、そう決断してから、
半年、1年ぐらい先の話になる。

じゃあ半年先、1年先に円安になってたら、
どうするんですか?って話。
円高だから移転したのに、
タイムラグによって円安になったら、
今度はあわてて国内に工場を移すのか。
移せるわけがない。

つまり一時的な急激な円高が起きると、
すぐに国内の工場が閉鎖されて、
海外に移転するかというような報道は、
まるっきりのデタラメなわけだけど、
そう信じきってしまっている人があまりに多い。
少し考えればわかる話だ。

無論、この円高を契機に、
経営者がこの先、4~5年は、
ずっと円高が続くだろうと判断したら、
海外移転するだろうけど、
長期的に円高が続くと予想し、
今すぐ移転を決断できる経営者は、
日本には皆無に等しいのではないか。

にもかかわらず工場の海外移転と、
日本国内の産業の空洞化が進むのは、
円高なんかよりもっと重大な要因がある。
1点目は内外賃金格差。
2点目は製造業の派遣禁止。
3点目は円安バブルの反動。
4点目は国内の需要減。
である。

●1:内外賃金格差
日本人の労働者を雇ったら、
人件費は1ヶ月20~30万円かかってしまう。
しかし中国人を使えば日本人の1/10~1/20の、
1~3万円ぐらいで済む。
中国人だけでなくタイ人でもいいしベトナム人でもいい。
海外に比べて日本人の人件費が高すぎるから、
人件費が安い海外に工場を移転する動きが止まらないのは当然。
はっきりいって円高などあまり関係ない。

日本人と中国人の人件費が10~20倍も違う。
経営者にしてみれば、安い人件費の方がいいに決まってる。
そりゃ海外移転、産業の空洞化はしますよ、当然。

例えばどうしても日本人でないとできない、
特殊技能の高度な作業なら、海外移転は起きないだろう。
しかし製造業の単純肉体労働の多くは、
別に日本人だろうが外国人だろうが、
誰がやろうが関係ないわけだ。

無論、多少の差はあるかもしれない。
しかし賃金を20倍も払うほど、違いがあるのか?
ない。
だから安い外国人を使って海外で生産してしまえ、
とこうなるのは当然だ。

「円高のせいで海外移転が加速するじゃないか!
政府は無策だ!」と騒いでいる輩は、
自分の技能をよく考えてみるべきだ。
その技能は自分でないとできないのか。
外国人ではできないのか。
中国人より20倍も賃金をもらう価値があるほどの、
特殊な高付加価値技能なのか。
自分しかできない特殊技能を持っていれば、
円高にだろうが、海外移転せず、
あなたのところに仕事が来るはずだ。

円高か円安かということより、
月給2万円で働く中国人と、
月給20万円で働く日本人と、
どちらを雇うといいのかということで、
海外移転するかしないかが決定付けられていることを、
肝に銘じるべきだ。

そして政府の無策や大企業の非情さを呪う前に、
自分の技能に価値があるのか、考えるべきだろう。

ただ、国内賃金格差による海外移転の流れは、
10年先には止まると思う。
なぜなら中国人の給料は年々上がるからだ。

かつて日本が高度成長期に、
どんどん給料が上がったように、
今の中国も同じで、経済成長とともに、
中国人の給料も上昇していく。
今は10~20倍の差があったとしても、
10年後にその差がなくなっていたら、
「同じ給料なら日本人の方がいいよね」
という話になる可能性は高い。

●2:製造業の派遣禁止
国内の空洞化、工場の海外移転を促進しているのは、
製造業の派遣禁止だ。

ほんとマスコミに煽られる日本の国民ってバカだと思う。
金融危機後、不景気になり、派遣切りが行われたことから、
派遣禁止の大合唱が置き、
派遣禁止を訴える民主や社民の連立政権ができた。
製造業派遣を解禁した小泉政権が、
弱者切り捨ての元凶のようにバッシングされた。

もし製造業派遣禁止になれば、
円高なんかより企業に工場海外移転を決断させる、
決定的要因となるだろう。

企業にとって派遣社員は便利だ。
好景気の時に期間限定で雇い、
不景気になったら切れる。
しかし派遣が禁止されたら、
景気の波に対応できなくなる。

したらどうなるか。
人件費の高い日本人労働者を正社員として雇うリスクを考えたら、
人件費の安い海外に工場作った方がよっぽどいい。
海外なら仮に大人数雇ったとしても、
日本人より人件費がかからないのだから。

マスコミや国民ってほんと一貫性がない。
円高になれば海外移転が促進するからと政府を批判し、
派遣労働は使い捨てだからと政府を批判する。
国内雇用を守りたいなら、派遣禁止なんて絶対にやってはいけない。
そんなことするから海外移転が促進されるという影響に目を向けず、
マスコミのムードだけで、
「派遣労働は非情だ」と企業や政府を批判する。
つまり派遣を禁止せよという世論が、
円高なんかより海外移転を促進させているのだ。

●3:円安バブルの反動
そもそもバブル崩壊後の円高時に、
産業の空洞化や海外工場移転は急速に進んだ。
ところが、2002年から2008年まで、
日本の大失策ともいっていい超低金利のせいで、
日本円を世界中にバラマキ、超円安バブルが発生した。
そのために、一度、海外移転した企業が、
どんどん国内に戻ってきた。
さらにそれを後押ししたのが、
製造業派遣の解禁。

派遣も許されるのなら、多少人件費が高くても、
不景気になったら切ればいいんだから、
じゃあ国内に工場作った方がいいかと考えた企業が、
国内回帰したのである。
その恩恵により、雇用された労働者も多いだろう。

しかしそれはバブルだった。
日本円が超低金利で借りれるため、
世界中が日本円を借りて、別のものに投資する、
円キャリートレードが起きたために、
円安バブルが現出した。

ところがその投資資金が、
サブプライムローンなどでこげつきだすと、
一斉にマネーの逆流が起きた。
さらに諸外国はどんどん金利を下げたために、
日本との金利差がなくなり、
円を借りる必要はなくなった。

だから金融危機後、一斉に円がすべての通貨に対して、
円高になったのだ。

異常な円安バブルのおかげで、
一時的に国内に工場が戻ってきただけで、
しかもその時に製造業派遣が容認されたからこそ、
国内に雇用が生まれたのであって、
異常な円安バブルが終わり、
派遣が禁止されれば、
再び国内の空洞化が進むのは当然だ。

異常なバブル期を基準に、
円高だの国内が空洞化するなどと騒いでいる方がおかしい。
そういう輩に後押しされて政策を行うから、
バブルが起き、またその反動で大きなクラッシュが起き、
経済がメタメタになったという歴史を学んでいないのだ。

e0171573_18554050.jpg

※実質実行レートで見ると今は異常な円高などではない

異常な円安バブルは金融危機で終わった。
異常な時と比べて、
円高だの景気が悪いだの雇用が減っただの、
海外に移転しまうなどと騒ぐのがおかしい。
まず比較する基準を、
円安バブルの異常時にするのをやめなくてはならない。

●4:国内需要減
最後が国内に需要がないから、
国内に工場を作る必要がないというもっともな理由。
日本の人口は減っているわけだから、
これまでより物をいっぱい作る必要はない。
だから日本に工場の数が減るのは当然のことだ。

いやでも輸出があるじゃないかというかもしれないが、
輸出なら現地生産した方がはるかに効率的だ。
どうせ売るのは中国やアメリカならば、
中国やアメリカに工場作って、
そこで売った方がいいと考えるのは当然の論理。

日本で物を作って、
中国やアメリカに輸送していたら、
輸送費もかかるし、時間もかかり、
コストが余計にかかった分、
値段にはねかえってくるから高い値段設定になってしまう。
だからいくらメイドインジャパンで性能がいいといったって、
高い製品を買うのは限られた人になってしまう。

どうせ中国に輸出するなら、
中国で工場作って、そこで売れば、
輸送費も時間も圧縮できる。

昔とは違って企業のグローバルな活動がしやすくなっている今、
人口が減っている日本に工場を持って作るより、
需要のある中国やアメリカで現地生産すればいいというのは、
当然の流れだ。
一時的な円高だから海外移転するのではなく、
先行きを展望すれば、
日本の市場は縮小し、海外の市場は拡大するのだから、
拡大する市場のそばに工場を移転するのは当然。


以上、4つの点から見て、
海外に工場が移転するのは当然なのだ。
一時的な円高のせいなんかではない。
必然の流れなのだ。

だから多少、円安になったところで、
この流れを食い止めることはできない。


だからこそ今必要なのは、
日本国内で衰退する産業を、
税金ばらまいて助けることではなく、
今後も需要が見込める産業にシフトしていくよう、
投資や政策を行っていくことだ。

国内で販売が減少している自動車に、
エコカー減税なんかやったところで、
一時的な効果しかないことは目に見えている。
ならばその金で、例えば自動車製造にかかわる労働者が、
この先、職がなくなっても食っていけるよう、
中国語を学ばせるとか英語を教えるとか、
ITスキルを身につけさせるとか、
そういう技能を持たせて、
衰退産業から成長産業に転職させることに、
金を使うべきなのだ。
これこそが経済対策であり成長戦略だ。

ところが国民やマスコミに長期的ビジョンがなく、
目先で困ったら金をくれと政府を批判するから、
政府はならば将来増税するから、
その金で先にばらまいてやろうと、
しょうもない一時的なバラマキ政策ばかりする結果となる。

いい加減、この愚かな繰り返しをやめない限り、
借金は増え、税金も増え、
でも社会保障はよくならず、経済も成長しないという、
本当に破綻の道を歩むことになる。

円高悪だと思い込んでいる人が、
あまりにも多い事実を見てもそうだが、
いい加減、これまでのやり方を踏襲していたのでは、
日本は立ち行かなくなることは明白だ。

根本的にやり方を変えなければならない。
それこそが短期的には痛みを伴うけれど、
長期的に見て「あの時、大手術して、
衰退部分は切り捨ててよかったね」という、
“痛みを伴う改革”という意味だ。

ところがみんな痛みを伴わず改革しろと叫んでいる。
だから改革できず、
麻薬(景気対策)を売って、
一時的に気持ちよくなるけど、
半年、1年もすると麻薬の効果が切れてしまうから、
「政府よ、早く麻薬(景気対策)をくれ!」と叫ぶ。

こうして麻薬を買うために、
借金は増え、増税され、
体はどんどん麻薬漬けされ、
悪化するという事態を招いている。

by kasakoblog | 2010-09-08 18:50 | 金融・経済・投資

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


by kasakoblog