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素晴らしかった映画「告白」

ヨーロッパ行きの機内で映画「告白」見ましたが、
最近、見た映画の中では素晴らしくよかった!
こういう映画らしい映画をみたい。
金ばかりかけてドンパチやって、
中身のない映画が多い中、
味わい深い、趣深い、考えさせられる、
しかもそれが映像だと最適だと思ったのがこの「告白」。

書籍「告白」が2009年本屋大賞を受賞し、
話題になっているとのことで見たが、
映画を見る限り、
このすごさを書籍で表現するのは無理ではないか。
書籍で表現するとものすごくわざとらしい感じになるのではないか。
こういう作品こそ書籍ではなく映像だよなとも思いました。

何が良かったかって、
人間の感情をリアルにありありと描いていること。
「こんな素晴らしい人間なんてどこにもいねえよ!」
「こんな素晴らしいストーリーなんてありえねえよ!」
と突っ込みを入れたくなるような、
あまりに浮世離れした非現実的な、
リアリティのない作品が多い中、
こういう作品こそ“ホンモノ”だなと思える。

だから逆に救いはないです。

・・・・ここからネタバレ注意・・・・

「事故死とされた娘は、
このクラスの生徒に殺された」
として女中学教師の話で始まる。

女教師は警察に訴えるつもりはなく、
自らの方法でわが子を失った復讐を生徒に行っていく。

いや、ほんと、素晴らしい。
先生とか学校が聖人君主であるべきだという、
あまりにもバカバカしいスタート地点が、
すべての教育の間違いにつながっていると思う。
この映画のように、
わが子を殺された先生は憎しみから、
生徒に陰湿な復讐すらする。
私はそれが普通だと思うし、
それがよっぽども“正常な神経”だと思う。
だからこのキレイごとなき、
リアリティにあふれた映画を素晴らしいと絶賛している。
R15指定(15歳以下試聴禁止)にされているが、
中学生、高校生にこそ見せるべき作品ではないか。

この映画を見て真っ先に思い出したのは、
中学生が妊娠している女教師を流産させるため、
「流産させる会」を結成し、
給食にミョウバンやチョークの粉を混ぜたり、
いすのボルトを緩めて転倒を企てたという。
(2009年愛知で起きた事件)

私はこのニュースを聞いた時、
この会に加わった生徒を厳しく罰するべきではないかと思った。
単に学校側が保護者や生徒に注意したで済まされる問題ではない。
しかし実際には、この映画「告白」でも言っているように、
未成年の生徒は法律によって守られ、
例え殺人を犯したとしても裁かれることはない。

だからこそ軽い気持ちで「流産させる会」などという、
恐ろしいことを軽々しくやってしまうのだ。
それは大人だからではなく子供だからできる残酷さゆえ。
分別のない子供の残酷さに、
「やってはいけません」程度の正論的注意では、
効果はないのではないかと私は思う。

そうした子供の無知ゆえの残酷さによる、
罪を抑止する手段になり得るのがこの映画ではないか。
ぜひこの映画を「流産させる会」を結成した、
生徒たちに見せたらどうか。
彼らは自分たちの過ちや恐ろしさ、
大人の恐ろしさを知り、
二度とこのような犯罪を犯さなくなるのではないか。

この映画で実に爽快なのは、
教師の復讐劇の見事さだ。
復讐するために教師は決して法は犯さない。
精神的に生徒を追いつめ、錯乱させる仕込を次々と行っていく。

なかでも娘の殺人に加わったママ大好きの生徒に対し、
生徒が自ら作った爆弾で、
学校に仕掛けたと思わせて、
ママを殺されるというのは実によくできている。
復讐の仕方があまりにも精緻に計算され、
不謹慎ながらもバカ生徒に対して、
「よくやった!」と賞賛したくなる。

罪と罰という概念がバランスを崩した時、
人は罪に走るのだと思う。
たいした罰がなければ、人は犯罪行為に走る。
しかしもし犯罪を犯してもたいした罰がなければ、
軽い気持ちで犯罪を犯してしまうだろう。
その典型がここに描かれている子供の犯罪ではないか。

子供に大人並みの罰を与えなくても、
この映画を見せるだけでも十分、
犯罪抑止力になり得ると思う。

そういう工夫が「流産させる会」などという、
悪意はないけど結果は最悪を招きかねない、
子供の軽はずみな残酷さにストップをかけるのではないか。

実にいい映画。
映像で見るとそのすさまじさが伝わってくる。
ありもしない理想論を振りかざすより、
冷徹な現実を見極めたこのような作品こそが、
本当は現実の問題を解決する“救い”になるのではないか。

by kasakoblog | 2010-10-09 01:37 | 書評・映画評

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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