「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」のネタバレを含みますので、
お気をつけください。
昨日、感動の映画を見た。
そう、クレヨンしんちゃん映画「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」だ。
クレヨンしんちゃん映画の中でも、
大人が見ても感動して泣ける作品には、
「オトナ帝国の逆襲」と「戦国大合戦」が二大巨頭だ。
それ以外のクレしん映画はすべて見ていたけれど、
久々にまた見直しているところ。
そこで見たのが「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」なのだが、
二大巨頭作品に負けない、素晴らしい感動シーンがあった!
もうなんとも涙と笑いと感動がつまった、
最高のシーンだったので、
ぜひみなさんも映画を見て欲しいのだが、
そうはいってもクレしん映画を実際に借りる人は、
きっと少ないと思うので、
そのシーンを紹介したい。
クレヨンしんちゃんが考案した「ぶりぶりざえもん」は、
かわいくて生意気な豚人間。
その豚人間・ぶりぶりざえもんが、
世界中のコンピュータを犯すウイルスとして登場するのだが、
そこでクレヨンしんちゃんが待ったをかける。
「ぶりぶりざえもんは救いのヒーローだぞ!」と。
悪の支配者になろうとしていたぶりぶりざえもんは、
その声に耳を傾け、救いのヒーローの話を、
しんちゃんから聞かされる。
・・・・
ぶりぶりざえもんは渋谷のセンター街で、
女子高生のパンツをのぞこうと地面をはっていた。
そこで女子高生同士が話していた、
「お宝いっぱいの山」があることに知り、
ぶりぶりざえもんは山に出かける。
山の途中で泣いているレースクイーンに出会う。
しかし先を急いでいるぶりぶりざえもんは無視するが、
レースクイーンに無理やり呼び止められたので、
「どうしたの?」と聞くと、
靴が壊れてしまったという。
そこで手先が器用なぶりぶりざえもんは、
いやいや靴を直してあげた。
するとレースクイーンからお礼にF1チケットをもらう。
再び山を登っていくと、今度は泣いているOLに出会う。
面倒なのでぶりぶりざえもんはOLに気づかないよう、
道を変えて進むもOLにつかまってしまう。
「どうしたの?」と聞くと、
部長に頼まれたコピーができないという。
コピー機に詳しいぶりぶりざえもんは、
「紙ずまりだな」と気づき直してあげると、
OLからお礼に居酒屋ドリンク無料券をもらう。
F1チケットや居酒屋ドリンク無料券をもらい、
るんるん気分のぶりぶりざえもん。
山を歩いていくと、今度は泣いている小さな女の子に出会う。
ぶりぶりざえもんは今度はまったく逃げようとせず、
真っ先に女の子のもとにかけつけ、
「どうしたの?」と聞く。
「おなかがいたい」という女の子に対して、
「助けてあげたら何くれる?」とぶりぶりざえもんは問い詰めるが、
小さな女の子は「お礼にあげるものはない」というと、
ぶりぶりざえもんは怒り心頭「じゃあダメ!」といって、
女の子を無視して立ち去ってしまう。
しばらく山を登っていくと薬局があり、
ぶりぶりざえもんはF1チケットと居酒屋ドリンク無料券で、
おなかの薬に換えてもらい、女の子を助ける。
こうしてぶりぶりざえもんはお宝の山を登りきったものの、
頂上には何のお宝もなく、
F1チケットと居酒屋ドリンク無料券もなく、
何のために山に登ってきたのだと後悔する。
しかしぶりぶりざえもんはふと気づく。
レースクイーンやOLや小さな女の子を助けたことで、
「ありがとう」とお礼を言われたことを。
こうしてぶりぶりざえもんの心の中には、
かけがえのない宝物でいっぱいになり、
「ぶりぶりざえもんは救いのヒーローとなり、
世のため人のために働きましたとさ。
でめたしでめたし」としんちゃんが締めくくる。
・・・・
いや~なんかじーんときてしまって、
このシーンを何度も見返してしまった。
なんかこう人間のすべてが凝縮しているような、
見事なシーンだと思って。
しかもそれを、ぶりぶりざえもんやクレヨンしんちゃんという、
笑いのキャラクターで描いているところがもうほんと素敵すきるのだ。
人間、いいことをするってなかなか難しい。
道徳の本みたいに、「こんなやつどこにもいねえよ!」みたいな、
100%の善人が登場し、
何の私利私欲も持たずに人助けする話って、
なんかリアリティも説得力もない。
しかしこのぶりぶりざえもんの物語には、
人間の本性がいっぱいつまっている。
仕方がなく助ける。
いやいや助ける。
でもそこに思わぬお礼がついてくると、
それに味をしめ、お礼目的に人助けがしたくなる。
でもお礼がないと知ると、
じゃあ助けるか!という気持ちもなんかすごいよくわかるけど、
でも結局、見捨てるほど冷徹にはなりきれず、
すべてのものを失ってまで結果助けてしまい、
自分のお人よしにあきれてしまう。
でも、何も物が得られなくても、
人からありがとうって言われたのを思い出すだけで、
にやけてしまうほどうれしい気持ちが、
きっとまた人の助けをしたいという思いにかわる。
そう。欲望を持った凡人でも、
「救いのヒーロー」になれるのだ、
ということをクレしん映画は見事に描き出している。
私は昔、非常に功利的(効果や利益を求める発想)主義なところがあった。
何かするのであれば、何かお返しにしてくれなきゃ、イヤだみたいな。
でも最近は「大人」になったせいなのか、
功利が一番ではなくなっていて、
お礼がもらえるとかそういうの関係なしに、
自分が誰かの役に立ればうれしいって想いの方が、
すごく強くなっている。
今でもよくぜんぜん知らない人から、
「トラベルライターになるにはどうしたらいいか」とか、
「マスコミ業界に転職したいのだが」とか、
「カメラをうまく撮るにはどうしたらいい」とか、
メールがくることが結構ある。
それに対してほぼすぐにクイックレスポンスすると、
すごくみんな喜んでくれるのと同時に、
「忙しいのになんでこんなすぐに、
丁寧に返信してくれるのですか?」という、
不思議な思いをされることもある。
でもそれはきっとぶりぶりざえもんが、
頂上に登った時の気持ちと同じ。
誰かに助けを求められ、自分がそれに答えて、
役に立ったと思われることがうれしい。
それだけのことなんです。
自分にできることならできる限りのことはしたいという。
そういうのって、はじめのぶりぶりざえもんがそうだったように、
若い頃の私がそうだったように、
はじめはできないわけです。
なんか自分が損しちゃうとか、
見返りを計算しちゃうとか。
でもそんなのぜんぜん関係なくなるんです。
役に立つことができれば。
いやだからといって私もぶりぶりざえもんですから、
道徳に出てくる善人みたいに、
自分のすべてを犠牲にして、
なんでも他人に尽くすってわけにはいかないし、
そりゃお礼をいただければ、
断ることなく遠慮なく頂戴します(苦笑)。
でも別にそれが目的じゃないし、
ありがとうっていってくれれば、
ほんとそれだけでいいっていう気持ちの方が、
だんだん大きくなってくるんです。
誰もが一歩踏み出せば、
よこしまな欲望は持っていても、
救いのヒーローになれるぶりぶりざえもんの物語。
そんなリアリティのある物語に、
私はきっと深い感動と笑いと涙を感じたのだと思う。
そんなわけで、
クレヨンしんちゃん映画「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」、
ぜひおすすめですので見てみてください~。
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