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ビデオ流出が許されてはいけない理由

尖閣ビデオ流出について、
「よくやった!」「罪に問うべきではない」
「守秘義務違反ではない」「国民が知る権利」
といった国民・マスコミが多数を占める、
あまりにも気色悪い、恐ろしい社会になっている。

もし公務員が個人の判断で、
「国民のため」と称して、
このような流出が許されるのなら、
下記のようなこともすべて「無罪」になる。

<例>
・「ビデオ流出の犯人を名乗る男の素性を知りたい!
これは国民的大関心事だから公開すべきだ」
と使命感に燃えた市役所職員が、
男の住所、名前、家族、親、兄弟の名前、
資産などをネット上に公開した。

・日本政府は対中国防衛に備えるため、
アメリカ政府から新たな兵器の購入を、
中国や北朝鮮、ロシアなどに気づかれないよう、
極秘裏に交渉していた。

しかし交渉に関わっていたある役人が、
「1000億円もの税金を払って、
兵器を購入しようとしている事実を、
国民が知らないのはおかしい!
公開すべきだ」として、
交渉途中でネット上に公開した。
このため中国や北朝鮮などに気づかれることとなった。

・日本は尖閣諸島を守るため、
巡視船を増強して派遣する予定でいた。
ある海保職員が、
「我々が国を守るために日々努力している苦労を、
国民のためにも知ってもらいたい!」と思い、
巡視船の船数、航路、船員の個人情報などを、
ネット上に公開した。

・耳かき店員が殺害された事件で、
身勝手に2人を殺した犯罪者が、
死刑ではなく無期懲役になった。

「あんな凶悪犯罪者が、
死刑にならないのはおかしい!
国民の多くは死刑を求めている!
事件の残虐性を国民に後悔すべきだ」
と憤りを感じた捜査関係者が、
被害者が殺害された死体写真を、
ネットに公開した。

・・・・
さて上記のケースは許されるのだろうか?
上記のケースは正しいといえるのだろうか?
よくぞやったといえるのだろうか?

正解はない。
なぜなら公開によって、
メリットもデメリットも生じるからだ。
立場によって全然違う受け止め方になるだろう。

今回のビデオ流出が許されるのなら、
上記のようなことをやっても、
無条件にすべて許されることになる。

ケースバイケースで公開することが、
いいことなのか悪いことなのかがわからないのを、
一公僕が勝手に判断して公開することが許されるのか?
そんなことしたら「国民のため」と称して、
何でも公開されてしまう。

「いや、今回のビデオがみんなが見たがっていたから」とか、
「今回のビデオは公開した方が国益になる」とか、
言う人がいるかもしれないが、
情報流出というのは、
ケースバイケースでこれはダメ、
これはいいとは事前に判断できない。

つまり公開していいか悪いかの判断は、
別に国民の総意でも何でもなく、
勝手な個人の判断になる。
これは恐ろしいことだ。

例えば今回のようなケースで、
国民ネット投票をして、
公開すべきが過半数を超えたら、
政府が反対しようが公開する、
といったルールがあれば、情報の統制はできる。

しかしそういったルールなく、
今回の流出を許してしまえば、
公務員が勝手に情報をばらまくことができる。

今回のビデオ流出を正当化・英雄視するため、
マスコミは企業の内部告発に例えてこの件を説明する。
しかし内部告発と情報流出はまったく意味が違う。

ある企業が残業代を払わなかったり、
社員に暴力をふるっていたり、
客に詐欺商品を売っているなど、
不法行為が行われている場合、
社員に企業内の情報を話してはいけないという、
決まりがあったとしても、
それは内部告発として許される行為だ。
なぜなら組織が不法行為をしていたのだから。

しかし新商品発売リリースを1ヵ月後にしようと、
いろいろ考えて経営陣が判断したが、
ある1人の社員が、
「新商品は国民の関心も高く、
同業他社に負けないため、
一刻も早く公開すべきだ」として、
勝手にネットに新商品の概要を公開したらどうだろう?

それによって、新商品の売上が上がるかもしれないし、
逆に発表してしまったせいで、
同業他社に情報を知られて、
同商品を先に出されて売上減になるかもしれない。

つまり新商品を勝手に事前に発表することが、
いいことなのか悪いことなのかはわからない。
そういうどっちに転ぶかわからないことを、
経営陣の指示に反して、勝手に流出させることは、
組織の統制として許されることではない。
これが許されたら組織として機能できなくなってしまう。

今回の尖閣ビデオ流出は、
前者ではなく後者の例だ。

別に政府はビデオを公開しないのは、
政府自身が不法行為を行っているのを隠そうとしているわけではなく、
まだ公開しない方が日中関係にはよいだろうという、
正しいかはわからないがそう判断したわけだ。

公開するのがいいのか悪いのかは、
人によって判断は違い、
何が結果的に正しかったのかは誰にもわからない。

それを組織のトップの判断に従わず、
勝手に職員が流出してしまうのは、
国民がみんな知りたいからとかの問題ではなく、
国家機能としての危機的問題であり、
だから許されてはならないのだ。

今回ビデオが流出したせいで、
仮に日中関係が悪化し、
中国が尖閣諸島を軍事制圧し、
さらには沖縄にまで攻め入ったとすれば、
結果として公開は正しくなかったことになる。

もちろん公開することで、
国際世論が日本に味方し、
中国の膨張を抑える抑止力になるかもしれない。

どちらが正しいかは、
誰にもわからないし、
結果がどうなるかはわからない。
それを一海保職員が勝手に判断して、
流出させてしまっていいのかどうか。

情報が対日本国内向けのものならともかく、
外交という非常にナーバスなものの場合、
情報を公開するのかしないのか、
どのタイミングでどう使うのかは、
高度に政治的な判断が必要になる。

今回の民主党の公開しないという判断が、
よくなかったと思う人がなんとなくいっぱいいるから、
何の責任も権限もない個人が公開していいのか。
公開した個人は選挙で選ばれたわけでもなく、
直接、日中関係の外交に関わる、
外務省の職員でもない。

その勝手な流出の恐ろしさという事態に、
無邪気にビデオが見たいから、
「見せてくれてよくやった!」と騒ぐ国民は、
はっきりいってバカだ。

しかし国民がバカだから、
バカな職員がいて、バカな政治家がいて、
バカな方向に国家が傾いていく。
それはもう仕方がないことだ。

1931年、政府の統制を振り切り、
軍部が暴走して満州事変が起きたが、
国民とマスコミは熱狂した。
結果、大勢の国民が死ぬ15年戦争へと突入した。

今回のビデオ流出は下手をしたら、
新たな戦争のきっかけになりかねない。
そういう可能性まで考えて、
それでも「公開した方がいい」というなら話は別だが、
「公開しろ」とのんきに言っている国民は、
じゃあ尖閣諸島に出兵されて中国人と戦う覚悟はあるのか。

ビデオ流出犯人を英雄視する、
国民とマスコミほど恐ろしいものはないと私は思う。

ビデオがきっかけで戦争になり日本消滅?!
http://kasakoblog.exblog.jp/13596536/

流出ビデオ犯人の検察のシナリオ
http://kasakoblog.exblog.jp/13591257/

by kasakoblog | 2010-11-11 20:16 | 政治

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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