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罪と罰(5)

なんだか知らないがまずいことになった。
全く知らないのにとんでもない人違いをされて、罪をきせられそうになっている。
ここに目撃者が来て「あなただわ。あなたに間違いないわ」などとほざかれたら、
俺が本当に知らなくても疑いをかけられてしまう。これは困ったことになった。
わけのわからん目撃者が来ないうちにここから脱出なくては・・・。

「それよりじじい、このケガどうしてくれるんだ!」と話を元に戻そうとすると、
今度はもう一人の中年男が口を開いた。

「こいつだ!俺の財布をすったのは。よくも寝ている隙に財布を盗んでくれたな。
言っておくがな、財布を返せば済むって問題じゃないぞ。
これは立派な窃盗罪なんだ。きっちり務所に入って反省してもらわんと、俺の気が済まない。
こそドロなんてした罪をすっかり償ってもらうからな」

「はあ?財布を盗んだ?おいおい辞めてくれよ。俺は何にも知らないぞ」
「とぼけたってそうはいかねえ。おまえが盗んだ事はわかってるんだ」
「全く何を根拠にそんなこと言ってるんだ。もし人違いだったらどうしてくれるんだ!」

「おいおい、君。まじめそうな顔して、ばあさん突き落とすは財布盗むは、随分働いてくれるじゃないの。
わしの所轄でこんなに暴れてくれるとは、これは放っておくわけにはいかんな」
警官は僕を完全に犯罪人だと決めつけているようだ。
これはますますまずいことになった。

中年の男は、さらに追い討ちをかけるように言った。
「俺は財布を盗まれたことに気づいて、走り去っていくこいつを追ってったんだ。
あわてて逃げていた時に、ばあさんにぶつかって突き落としたのに違いない」
「おまえ、俺を見たのか?推測で物を言うんじゃねえ」
と僕が騒いでみても、男の言葉を信じきっている警官には全く無意味だった。

なんだか知らないが、僕がばあさんを階段から突き落としたり、財布を盗んだことになっている。
一体どうしたものか。僕の無実を証明するものは何もないのか?

by kasakoblog | 2001-01-14 00:24

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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