罪と罰(7)
2001年 01月 30日
僕は新幹線に乗っていないから無実を主張できる。
しかし3人の男たちはよってたかって「おまえが犯人だ!」とあいも変わらず騒いでいる。
「俺は新幹線に乗っていない!」
「いやおまえが犯人だ!」
と水掛け論を繰り返していた。
そこへ警官が議論に割って入っていった。
「あんたは新幹線には乗っていないという。しかしこれだけの目撃者たちがあんたがやったと言っている。
どう考えてもおまえさんの不利な状況には変わらない。新幹線に乗っていないという証拠でもあるのかい?」
「証拠?!」
新幹線に乗っていないという証拠などあるわけないじゃないか。
ん?待てよ・・・・・そうだ!切符があるじゃないか!
沼津で最低運賃の切符がまだポケットの中にあるじゃないか。
これを見せれば、僕は新幹線に乗っていないことが証明されるのではないか。
「ふん、おまえら、いい加減なこと抜かしやがって。
俺が新幹線に乗っていないという明白な証拠を見せてやる!」
と僕は息巻いた後、重大な問題に気づいた。
やばい。切符を見せたら無罪であることは証明できるが、キセルをしたことがバレてしまうではないか。
「おい、早く証拠とやらを見せてくれよ!」
3人の男たちと警官は僕ににじりよってきた。
う~ん、どうしよう。
ここで切符を出して無罪の代わりにキセルの罪を背負うか、それとも切符を出さずして、やっていないと言い張るか。
僕はポケットに入ったキセルした切符を強く握り締め、出すべきか否かを迷っていた。
(完)