罪と罰(6)
2001年 01月 21日
一人は僕がばあさんを階段から突き落としたと訴え、一人は僕が財布を盗んだと言っている。
そして最後の一人が口を開いた。
「こいつだ!うちの店からカツサンドと牛乳盗んだのは。万引きだぞ。万引きは立派な犯罪なんだからな。
今更、代金払ったって承知しないからな。うちの店で万引きして許されると思うなよ!」
おいおい今度は万引きの罪かい。
「いい加減にしてくれ。俺は万引きなんかしてない。第一、カツサンドと牛乳だけ盗む奴なんているのか?
万引きする勇気があったらもっと高価なもの狙うよ」
僕の言葉にカッときたのか、男はやっきになって反論した。
「カツサンドは高価なものじゃないのか?カツサンドをバカにする奴は絶対に許さないぞ。
誤れば代金払えば許してやったものの、カツサンドをバカにしたからただじゃおかないぞ」
おいおい、このバカどうにかしてくれ。何をカツサンドごときでむきになってるんだ?
「盗んだっていうけど、あんたの店ってどこなんだい?俺は全く知らないよ」
「とぼけやがって。あんたが新幹線から降りてきて、うちの店からカツサンドと牛乳を盗んだのをこの目で見たんだ」
「新幹線?あんたの店は新幹線のホーム内にあるのか?」
「まだとぼける気か?」
やった。これで僕の無罪が証明される。
「俺は新幹線には乗っていないぞ!これで俺の無罪が確定したな」
「うそだ!そんなのうそだ!」
とキヨスクのおやじは顔を真っ赤にしていった。
ちょうどその時、ばあさんを突き落としたと証言する男が戻ってきた。
「ひょっとして、ばあさんが階段から突き落とされたのも新幹線のホームか?」と男に聞くと、
「そうだ」と帰ってきた男は言った。
「ひょっとして、財布を盗まれたあんた、新幹線に乗っていたのか?」ともう一人の男に聞くと、
「そうだ」と財布を盗んだと訴えた男は言った。
「ということはだな。この3つの犯罪はすべて新幹線のホームで起きたわけだ。
ならば俺は人違いだ。俺は新幹線の乗っていない!」
やった。これで僕は無実になれる。