風邪の思い出
2001年 03月 09日
一人暮らしで風邪をひいて高熱が出ると、かなり辛い。何か食べるにも自分で外に出て買いにいかなければならない。
風邪をひいてしんどい時に、いつも思い出す光景がある。
それは僕が中学生の頃の話。
確か2月ぐらいで、雪がちらつくほどの寒さが続いていた。
世間では風邪がはやっていて、「家に帰ったらまず手洗いうがいしろよ」と、父が口すっぱく言っていたにもかかわらず、
まず風邪をどこかから持ってきたのは小学生の弟だった。
「うつすなよ、おまえ」と父が弟に言う間もなく、まずその風邪は母にうつった。
同じ職場や同じ家、同じクラスなど、一度誰かが風邪をひいたらもうおしまいである。
特にその時の風邪の流行はすごく、まず弟から母にうつり、そして僕にもうつった。
「風邪なんて気合いで治る。精神力がないから風邪をひくんだ」と言っていた父にさえ、風邪がうつった。
見事に家族4人全員が風邪でダウンし、みんな家で寝込んでいるという異例の事態が発生した。
こうなると家族で住んでいても、一人暮らしで風邪をひいているのと同じ状況が現出した。
誰も動けないし、誰も人の看病などできないのである。
しかしこのままみんなが寝込んでいるだけではどうしようもない。
そんな時、一番あとにうつって、一番体調が悪いはずの父が行動に出たのであった。
突如として布団から起きあがり、ガウンやらセーターやらコートやらを何重にも着込み、
風邪を治すために栄養をと、食料の買い出しに行ってきたのだ。
それだけでもフラフラなはずなのに、さらに台所に立ち、家族全員の夕食を作った。
このおかげで家族の体調が回復しはじめた。
誰もが寝込んでいてどうしようもない状況の中で、一番ひどいはずの父がとった突然の行動。
それは僕にとって今でも印象的な、とても衝撃的な光景だった。
火事場のくそ力とでも言うのだろうか。
追い込まれた時に発揮する力は、強靭な精神力と意志から生まれるのだろうな。
