ゴールデンウイーク・その3
2001年 05月 04日
あれは小学校3年生の頃だった。
夏休みになると必ず静岡のおばあちゃんの家にいくのが恒例となっていた。
両親は共に働いているので、夏休みは退屈してしまう。
それでおばあちゃん家に預けられる形で静岡に連れて行かれた。
静岡に帰れば一つ上のいとこがいたので、いとこと毎日遊んでいればよかったが、
いとこも学年が上がるにつれ、夏休みは自分の予定が入るようになり、
必ずしも僕と毎日遊んでくれるというわけにはいかなくなっていた。
毎年行っているので、おばあちゃん家の近所の子供とも友達になったが、彼らにも彼らの予定がある。
静岡に行って預けられたものの、やることがなく退屈になってしまった。
夏休み-これほど間延びした退屈な日々はない。
むしろ学校があってもいいのにとさえ、子供心に思った。
外はむあっとした暑さが立ちこめ、その暑さを倍加するがごとく、せみがみんみん鳴いている。
暑苦しくだるいだけの夏休みは生き地獄だった。
<2>脱出
もうひまでひまでどうしようもなくなって、僕はある計画を思いついた。
一人で東京に帰ろうと思ったのである。
もちろん今までに一人で新幹線に乗ったこともなければ切符の買い方もわからない。
でも電車は好きだったのでどうにかなるだろうと思った。
しかし問題はお金だった。
東京まで切符を買うお金がない。
しかし一人で帰りたいなどとおばあちゃんに言ったら止められるに決まっている。
さてどうするか。
そこで僕はこっそりおばあちゃんの財布から1万円札を抜き出し、そのまま駅に向かい新幹線に乗ったのだ。
財布からお金を盗み取ったことがばれるのが恐くて、
書き置きも何もせずに、そのまま東京に戻ってしまったので、静岡では大騒ぎ。
「たかちゃんがいなくなった」とあちこち探し回ったそうだ。
ちょうどその日は土曜日で両親は家にいた。
静岡にいるはずの息子が突然帰ってきたので、それはもうびっくりされた。
僕は怒られるのではないかとびくびくしていると、
父親は、「よく一人で帰ってこれたな。えらい、えらい」と誉めてくれたことが今でも印象に残っている。
あの時は退屈な静岡が嫌で嫌で仕方がなかった。
そんな僕が、ゴ-ルデンウイ-クに静岡に遊びにいこうとしている。
子供の頃、退屈でしかたがなかった静岡へ。
僕の唯一帰るべき故郷へ。
<3>SLに乗ろう

子供の頃に毎年行った静岡だが、意外と「観光」はしていないということに気づいた。
灯台下暗しとも言うべきか、おばあちゃんの家を拠点にすれば、
あちこち観光できることに気づき、今回のゴールデンウイークは静岡観光することにした。
一番のメインイベントは大井川鉄道のSLに乗ること。
鉄道好きの僕にとっては、動いているSLに乗ることだけでも旅行の目的になる。
ゴールデンウイークで混んでいるとは思ったが、SLの乗車券の予約を取ることができ、
楽しみにしていった。
SLに乗る事はもちろん、その周辺の観光もした。
大井川をどんどん上流へ上っていくと、美しい景勝地および温泉地に行ける。
2日間使って観光し、温泉に入って昼はそばを食べるという極楽旅行を楽しんだ。
「日本も捨てたもんじゃない」と海外旅行派の僕も感心した。
さてさて普段の生活のストレスを発散させるがごとく、カメラという鉄砲を乱射しまくった。
なんと2日間で11本約300枚。
こんなに短い期間でこれだけとりまくったのもはじめてだし、まして国内でこんなに写真を撮ったのもはじめて。
ありがたいことに30分仕上げで現像料は1本650円という破格のカメラ屋が高円寺にあって、
静岡から帰ってくると早速現像した。
おととい写したSLの写真が早くもこうしてホームページに載る。便利というかその分、大変というか。
久しぶりに旅行気分を満喫した静岡観光。
近場でこんなに楽しめるとは、今後は海外だけでなく国内にも力を入れようと思った、
トラベルライターかさこであった。