3億円の悲劇
2001年 05月 28日
というのも彼には3億円当たる自信があったからなのだ。
「もし当たってしまったら、俺の人生は悪い方向にいってしまうのではないか?」
しかし彼は自分が当たる確率など冷静に考えたら全くないのだからと思わず10枚買ってしまった。
そして彼の予感は的中した。
なんと彼は見事に3億円を的中させてしまったのである。
彼は3億当たってもマイホームだけ買ってあとは貯金し、現在の生活を続けようと思った。
風呂なしアパートから引っ越し、都心の新築マンション1億円を購入した。
しかし彼にはまだ2億円が残っていた。
彼はフリーライターめざして、日夜安月給で編集プロダクションに勤めていた。
しかし彼は宝くじが当選してからというもの、仕事に集中できなくなった。
それはそうだ。徹夜や休日出勤したところで20万の給料しかもらえないのに、
彼にはマンションも持っていれば2億円の貯金もあるのだ。
働く気概が抜け腑抜けになり、ついに会社を退職することにした。
しかし彼には唯一金を使う手段があった。「旅」である。
会社を辞めたので時間はあるし、宝くじの当選金はたっぷりある。
そこで彼は再び長旅に出たのであった。
しかしそこに以前のような旅の楽しさを味わうことはできなかった。
いくら使ってもいくらぼったくられても湯水のように金があるから、ばんばん金にまかせて旅をした。
ドミトリーなぞ泊まらず高級外資ホテルに泊まり歩き、高級レストランでいいものをたらふく食べる。
そんなことをしても以前のような旅の楽しさを味わうことができず、
貧乏時代を思い出して安宿に泊まってみたりもしたが、ちょっとしたことが気になって、
すぐに快適な高級ホテルに移ってしまう。
金があるので何も我慢する必要がなかったのである。
彼はその旅行記を書いたが、以前のような異国の生々しさがそこにはなかった。
日本に帰ってくると金があるからしょうもない旅行記を自費出版しまくったが、
そんなものは売れるはずがない。
帰ってきたもののまだまだ金はあるので、働くこともせず毎日毎日ただなんとなく時を過ごしていた。
・・・やっぱり僕は今、宝くじを買うべきじゃないな。
もし3億円当たってしまったら、きっとこんな人生になってしまうだろう。
当選してしまったことで不幸になりそうだ。当たったら困るから今回買うのはやめておこう。
そんなことまで考えて、かさこ氏は今回の3億円宝くじ購入を見送った。
考え過ぎか?